喉の違和感に「風邪かな」 匂いがわからず確信に変わった コロナ自宅療養体験談【前編】

新型コロナウイルスが国内でも流行り始めて1年半余り。9月1日、国内で確認された感染者は累計で150万人を超えた。コロナの感染も「明日は我が身」になりつつある。8月中旬、感染した東京在住のtelling,の女性編集部員(32)も、2週間にわたり自宅療養となった。発症から自宅療養が終了するまでを振り返る。
1人自宅で保健所の連絡待ち 胸部の圧迫感に「自分は本当に軽症なのか」 コロナ自宅療養体験談【後編】

はじめは軽い咳だった

8月11日、在宅勤務中、都内の自宅でパソコンに向かって編集作業をしていた私は喉に違和感を覚えた。痰は出ないが、喉がイガイガして乾いた咳が出る。体温は36.2℃の平熱で、咳もかなり軽かった。前日にエアコンを付けっぱなしで薄着で寝てしまった。「夏風邪を引いたのかな」
一人暮らしで週に数回自炊している私は、念のため不織布マスクを二重につけ、この日もいつも通り近所のスーパーに行った。体調が悪くても食べられる、うどんや野菜、納豆など体にやさしい食材と、のど飴、経口補水液、ゼリーなど購入して帰宅した。

在宅勤務を徹底、外出は9割近く減

telling,編集部は、昨春の1回目の緊急事態宣言が出たときから在宅勤務を徹底してきた。最長で3カ月間、全く出社しなかったこともある。この夏も2回会社に行っただけ。単身者向けの1K8畳のマンションの1室に閉じこもり、人との接触は極力避けて暮らしてきた。誰とも会わず、会話しない日々が続き、精神的なバランスが崩れそうだったため、休日は近所を散歩したり、たまに友人と食事に行ったりすることもあった。それでも人混みを避け、ウレタンと不織布のマスクを重ねてつけて、手指消毒や手洗いを徹底。ワクチンは未接種だったが、在宅勤務などで外出は9割近く減らし、できる限りの感染対策をしてきたつもりだった。

在宅勤務のために整えた、自宅のデスク周り

そして翌日――。全身がだるくて起き上がることすら、しんどかった。午前中から昼にかけては在宅で仕事ができたものの、夕方以降はパソコンを置いているデスクに座っていられないくらい、だるくなった。咳は出るけど、熱は36.8℃。
「週末まで症状が続いたらPCR検査を受けようかな」
そう思い午前中、発熱相談センターに電話したが、ニュースで報じられている通り、なかなかつながらない。リダイヤルを押し続け36回目。やっとつながり、熱と症状を伝えると「こちらではコロナかどうか分からないので、近くの医療機関でPCR検査を受けてください」と言われ、いざというときに検査を受けられる近くの医療機関の連絡先を3カ所教えてもらった。
もし、風邪じゃなくてコロナだったら。最初に異変を感じた11日に発症していたとすると、その2日前に会った友人には迷惑をかけるのではないか。「濃厚接触者」の定義は今、何日前までに会った人なのだろう……。仕事で直近会った人はいないが、会社に報告して休まなければならない。そうすると同僚に負担をかけることにもなる。
考えれば考えるほど、風邪だと思いたかった。
食欲はあるものの料理する気が起きず、夕食はデリバリーで定食屋さんからハンバーグ弁当を注文。マンションのオートロックを解錠して、玄関前に置いてもらった。いつもは美味しく食べられていたのに、この日は匂いが感じられず、脂っこい食感だけがした。疑いが確信に変わった。

予約でいっぱいだった発熱外来

厚生労働省のサイトでは、濃厚接触者について「感染者から、ウイルスがうつる可能性がある期間(発症2日前から入院等をした日まで)に接触のあった方々について、関係性、接触の程度などについて、保健所が調査を行い、個別に判断する」としている。つまり、11日の咳が出始める2日前に会った友人は、濃厚接触者になる可能性が高かった。
連絡すると、「ちなみに今のところ私は、体調崩してないよ」とのこと。逆にかなり私のことを心配してくれて、「何か必要な物があったら買いに行くよ」とまで言ってくれて、ありがたかった。
13日は、慢性的にある肩や首の凝りが、いつも以上にだるく感じた。マッサージを受けたいくらい辛かったが、コロナの疑いがある中で外出はできない。加えて、太ももの裏やふくらはぎなどに、普段はないズキズキとした痛みを感じた。
金曜日は週末に向けてやらなければならない仕事がたくさんあるのだが、オンラインの編集会議になんとか出る以外のことは、ほとんどできなかった。その夕、ひどい頭痛に耐えきれず、家にあった痛み止めを服用し、少し収まった。

14日は土曜日だったので検査を受けようと、発熱相談センターで教えられた内科のクリニックに連絡。発熱外来は予約がいっぱいだと告げられ、「コロナ疑いの患者がそんなに多いのか」と驚いた。

PCR検査、必要な唾液が思うように出ず


PCR検査を受けられたのは日曜日。クリニックの10席ほどある待合室は、密を避けるためか3人しかいない。私のほかにいたのは、20代くらいの男性と30代くらいの女性。手指消毒と受付を済ませた後、ソーシャルディスタンスを保つために指定された席に座り、呼ばれるのを待つ。看護師の女性は全身白い防護服を着ていた。
10分ほど待って診察室に呼ばれた。いつからどのような症状が出ていたのかを医師に説明。その場で測った体温は36.0℃と低めだったが、「症状からは、風邪かコロナか分からない。唾液をとって検査をしましょう」と言われた。
PCR検査は、鼻の奥の分泌物か唾液を採取する方法があることは知っていたが、なんとなく「鼻から行うものだろう」と思っていた私。唾液で検査することを考えず、出かける直前に歯磨きをしてしまっていた。医師に聞くと「10~15分前くらいの歯磨きは検査に影響しないですよ」とのこと。

診察終了後から、検査する部屋に案内されるまで口の中に唾液をためておくよう指示された。検査する部屋では試験管のような形をしたプラスチック容器を渡され、底から1センチくらいに記された「5」の目盛りまで唾液を入れなければならなかった。十分な唾液が思うように出ず5分程度かかったが、私より前からいた男性は苦戦しているよう。看護師から「全然足りないですよ」と声をかけられていた。
「検査結果は明日電話で伝えます」と告げられ、処方された咳止めとカロナール(解熱鎮痛剤)を6日分もらい、帰宅。


「明日の仕事は休まなきゃいけないかな」。ぼんやりと、そう考えながら、ベッドで寝て過ごした。

後編へ続く

1人自宅で保健所の連絡待ち 胸部の圧迫感に「自分は本当に軽症なのか」 コロナ自宅療養体験談【後編】
1989年、東京生まれ。2013年に入社後、記者・紙面編集者・telling,編集部を経て2022年4月から看護学生。好きなものは花、猫、美容、散歩、ランニング、料理、銭湯。