1人自宅で保健所の連絡待ち 胸部の圧迫感に「自分は本当に軽症なのか」 コロナ自宅療養体験談【後編】

新型コロナウイルスの感染が広がっている8月中旬、東京在住の編集者(32)に咳や倦怠感などの症状が出始めた。はじめは風邪だと思っていたが、食べ物の匂いが感じられなくなり、近くの医療機関を受診。唾液を採取するPCR検査を受けることになり――。

PCR検査の翌日、陽性が確定

「残念ながら陽性でした。これから保健所に報告しますので、あなたは保健所からの連絡を自宅で待ってください」
8月16日月曜日の午前10時過ぎ。PCR検査を受けたクリニックの医師からの電話で、コロナに感染していることを告げられた。症状が出た時点から考えると、発症6日目ということになる。
「ああ、やっぱり」という気持ちと同時に、都内在住の私は「ついに自分が罹る時がきた」とも思った。直近で会ったのは、友人1人だけ。体調が悪くなった段階で連絡はしていたが、陽性判定が出たことを改めて知らせた。友人は、この日になっても体調に問題はないということだった。
検査の結果は即、会社や編集部に連絡。会社からは休むことを指示された。仕事は同僚にお願いしたり、私が編集する必要がある原稿の掲載時期をずらしたりした。
この日も熱は36.4℃と低めだった。症状は全身のだるさ、空咳、頭痛、脚の痛み、嗅覚異常など。コロナ患者の中ではおそらく軽症なのだろう。
当時、連日4~5千人の感染者が出ていた都内では、医療供給体制が逼迫していた。30代前半で基礎疾患がない私は重症化リスクが低く、自宅療養になることはほぼ確実だ。一人暮らしのため、悪化しても気づいてくれる人がいないと考えると心細かったが、誰かに感染させるリスクがないのは気が楽だった。

保健所からの連絡を、ベッドに横たわりながら待った。しかし、陽性を告げられた日も、その翌日も連絡はない。

胸部に圧迫感、不安に襲われて

発症7日目の17日、陽性判定の翌日から、胸部に違和感が出始めた。大きく息を吸い込もうとすると圧迫感があり、肺が膨らみづらい感じがした。「息苦しい」とまではいかないが、これまで経験した風邪の症状とは明らかに違った。ただ、この症状が“重い”のか“軽い”のか、自分では分からない。

コロナの症状の重さを判断する一つの基準が血中酸素飽和度だ。正常値は96%以上で、93%以下だと酸素吸入が必要な中等症Ⅱに分類される。

血中酸素飽和度を測るパルスオキシメーターは、自宅療養の場合でも保健所が送ってくれると聞いていたが、そもそも連絡が来ない。自分は自宅療養で済むのか、それとも入院が必要なレベルなのか――。症状の重さを知りたくて、通販でパルスオキシメーターを購入しようとしたが、医療従事者のみ購入可能なもの以外は、発送まで2~3日かかるものばかり。そんなに待っていられない。症状が急変して重篤な状態になったとしても、一人暮らしのため誰も気づいてくれない。「これ以上息苦しくなったら、どうしたらいいんだろう」

テレビをつければ一人暮らしの自宅療養者が突然、重症化したり、亡くなったりするケースが報道されていた。無自覚のうちに低酸素状態になる「ハッピー・ハイポキシア」も話題になっており、「今の私は自分が思っているよりも危機的な状態なのではないか」と怖くなった。コロナに関する情報に触れると、より不安になるため、映画や高校野球の中継を見て気を紛らわせた。検査前からこまめに連絡を取り合っていた母にも「これ以上心配させたくない」と現状を言えず、「大丈夫だよ」とLINEを送信。不安な気持ちを誰かに話したかったが、為す術もないのに無駄に心配をかけたくないと考え、結局友人にも言えなかった。

翌朝も胸部の圧迫感は続いた。数日かかっても手に入れた方がいいと思い直し、パルスオキシメーターを通販で注文。昨年から在庫が薄くなっているため、メーカーなどが「健康な人は購入を控えて」と度々呼びかけていることは知っていたが、今の私は「健康な人」ではない。

検査2日後、保健所からのSMSに驚き

パルスオキシメーターを通販で注文した数時間後、保健所から連絡があった。陽性を告げられてから2日。スマホにSMSが届いたのだ。電話連絡ではないことに驚いた。報道の通り感染者が急増する中で、保健所が手いっぱいになっているようだった。
メッセージは「発症日から7日以降が経過した後、解熱剤の内服なく3日間発熱がなければ、待機期間は終了」という内容。つまり、発症日から最短10日間で自宅療養が終了するようだ。入院についての記載はなく、問答無用で自宅療養になった。
「症状が続いている場合は連絡するように」とも書かれていた。その場合は保健師が電話で体調を聞き取りながら、自宅療養終了のタイミングを見極めるそう。この時点で発症から8日経っていた私は、症状継続の連絡をしなければならなかった。
指定の番号に電話をかけると、「保健師から折り返します」。パルスオキシメーターは通販で注文していたが、手元に届くまでの時間を考え、送付を依頼。送ってもらえるとのことで、すぐに手に入らないのは不安だったが、見通しが立ったことに安心した。

濃厚接触者の調査や連絡は、なし

保健所からの連絡が検査結果の2日後だったことに加え、濃厚接触に関する調査がなかったことにも驚いた。保健師からの電話で「症状が出る前に誰かと会ったか」と聞かれ、2日前に友人と会ったことを告げた。すると「現在、濃厚接触者の調査や連絡はしていないので、お友達には2週間外出を控えてもらうよう伝えてもらえますか」と言われただけ。保健所から友人に連絡がいくものだと思っていたのに……。

翌日は激しい頭痛で早朝に目が覚めた。後頭部を殴られているような痛みで、カロナールを飲んでも一向に収まらない。熱も37.3℃と、いつもより高め。この日、保健所が送ってくれたパルスオキシメーターが届いた。測ると「SpO2値(酸素飽和度)」は97~98%の正常値。「測定値が95%より低値で、息苦しい等の症状が強くなったとき」は指定の番号に電話するよう、同封されていた書類に書いてある。胸部の違和感は相変わらずだが、とりあえず中等症や重症ではないようなのでホッとしてベッドで1日を過ごした。

症状が改善しても、咳や嗅覚異常は残って…

発症3日目あたりから、嗅覚はほぼ完全になくなっていた。何を食べても匂いが感じられず、しょっぱいことや甘いことしか分からない。作り置きしていたスパイスカレーは匂いが分からず、美味しくなかった。一方、「何か食べなくては」と通販で買ったレトルトのハヤシライスが、意外とよかった。風味も味付けも濃いため、自炊した物よりは食べ物らしい匂いがしたのだ。「サッパリした物なら食べられるかも」と思い、購入したみかんゼリーや野菜ジュースは、砂糖の味だけがした。

症状が軽くなり始めたのは発症11日目。倦怠感が徐々に改善され、頭痛も軽くなった。2日間連続して36℃台前半の平熱。2日に1回かかってくる保健所からの電話で、症状を伝えると「明日で健康観察を終了します」。発症14日目に、自宅療養期間が終わった。

自宅療養が終わった日は、どうしても外に出たかった。感染させる恐れはほぼなくなったものの、念のため夜に人気のない道を50分ほど散歩。久しぶりに吸う外の空気は美味しかったし、風も気持ちよかった。ただ、体力が落ちていたため、少し歩いただけでジットリと汗が出てすぐに疲れた。
咳やしんどさも、1週間くらいは残った。職場の上司と電話で話そうとすると、喉がチクチクして咳が抑えられなかったり、デスクに向かうと倦怠感が襲ってきたり。
嗅覚異常は今も続いている。自宅療養期間中よりは改善されてきたものの、以前の8割くらいしか匂いがわからなくなり、食欲も低下した。

◆自宅療養中に家にあってよかったものや、後遺症について、次回改めて振り返ります。

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1989年、東京生まれ。香川・滋賀で新聞記者、紙面編集者を経て、2020年3月からtelling,編集部。好きなものは花、猫、美容、散歩、ランニング、料理、銭湯。