松岡茉優×三浦春馬「おカネの切れ目が恋のはじまり」3話。慶太、玲子に稲妻キス。幸せになって!今夜最終回

松岡茉優と三浦春馬の共演で話題の「おカネの切れ目が恋のはじまり」。玲子(松岡茉優)と慶太(三浦春馬)、ふたりがそれぞれの恋愛を互いに応援しあういい関係を築き始めたのに、玲子の恋には暗雲が……。玲子は、そして二人はどうなっていくでしょうか。

「方丈記」が表す玲子の性格

前回、15年間片思いをし続けてきた早乙女健(三浦翔平)に食事に誘われた九鬼玲子(松岡茉優)。猿渡慶太(三浦春馬)は初デートに臨む玲子を応援する。一方、早乙女が結婚していることを知ってしまった板垣純(北村匠海)は慶太に相談するものの、二人ともその事実を玲子に伝えられないままデートの日がやってくる。

前半に描かれるのは、玲子の"清貧"ぶりだ。自分でデート用のワンピースを縫い、慶太に連れて行かれたイベントでお気に入りのイヤリングを見つけても、「アクセサリーは3つまでと決めているので」と悩む。イヤリングの作り手であるひかり(八木優希)の交換という提案によってようやく新しいイヤリングを”お迎え”できる。玲子にとって「中学生以来のお友達」となったひかりだが、腹違いの妹と信じている慶太にそうではないことを黙ってお小遣いをもらっている、という金銭感覚を玲子は受け入れられるだろうか。ちなみに、玲子のiPhoneは4か5、あるいはSE。とにかく型番の古いもので、ケースもつけていないのにきれいなのは、彼女の性格を表しているようだ。

このドラマでは毎回、冒頭に鴨長明「方丈記」が引用されている。
第1話では、誰もが知る「ゆく河の流れは絶えずしてしかももとの水にあらず」が草刈正雄の声で朗読され、玲子の部屋に飾られている「方丈記」が映るところからドラマがスタートした。母の営む民宿の離れの庵で暮らす玲子はまさに方丈記に書かれているような暮らしを体現している。
第2話で引用されたのは「かむなは小さき貝を好む これ事知れるによりてなり」。ヤドカリが小さい貝を好むのは自分の身の程を知っているからだ、という意味の一文。早乙女を見ているだけでいい、という玲子の気持ちを表現しているのだろう。
第3話は「いかにいはむや 常に歩き、常に働くは養性なるべし」。自分の身体を使い、人に頼らず、粗末な衣食住でも十分、というくだりだ。1時間半並んで130円のくるみクッキー1個を買う玲子。その時間を考えるとかなり損な気がするけれど、玲子がこの「自分の身体を使うことが養生になる」という考え方で生きている人なのだと思うと納得する。
けれどそんな玲子も、デートに際しては新しい服をつくり、アクセサリーを手に入れ、そして二人で高級フレンチのカンテサンス(ここだけ実在の店名なのは、一発で高級度を伝えるためだろうか?)の料理を楽しむ。

稲妻に打たれてはじまる二人の新たな関係

早乙女とのデート中、週刊誌の突撃によって彼が結婚して子供もいることを知る玲子。早乙女は高額のセミナーに若い女性を集めていたことを「独身詐欺」と呼ばれ、炎上してしまう。例年予約を開始しているセミナーの告知がないことから、秘書である牛島(大友花恋)が週刊誌に情報を売ったことを突き止める玲子。止める慶太を振り切って早乙女に寄り添うが、フラれてしまう。

牛島が早乙女を陥れた理由の「オレンジだったから」は、秘書でなくては気づけない視点という意味で納得感があった。スケジュールアプリの色分けが、自分との食事は仕事の青、玲子との食事はプライベートのオレンジだったというそれだけの理由で彼女は早乙女を売ったのだ。

結婚当初からその存在を隠され続けてきた早乙女の妻(村川絵梨)は、離婚を切り出す。金銭的な苦労はしていなかった彼女。けれども別れを決意し、さらに「慰謝料はいらない」と告げる。冒頭の「方丈記」引用、「いかゞ他の力をかるべき」……他人の力を借りず自分の身体を使って生きて行く、というのは玲子だけでなく、この妻のことも表していたのだろう。

今回、ずっと玲子を応援し続け、そして最後には「恋愛と結婚は違う」「結婚は運命に稲妻みたいに打たれてするもの」と語っていたその稲妻をきっかけに玲子にキスをしてしまった慶太。残り一話、最終回で二人の恋はどう動くだろうか。

『カネ恋』を観るときは、なるべく余計なことを考えず、ドラマの中だけを観るようにしている。けれどもこの第3話、夏の日差しのなかで「玲子さんにはなーんか、幸せになってほしいんだよね」とやわらかい笑顔でつぶやく慶太の姿を見ていたら、春馬にも幸せになってほしかったよ、と思わずにはいられなかった。

(C)TBS

ライター。名古屋出身。演劇、お笑いなどを中心にインタビューやレビューを執筆。
イラスト、イラストレビュー、ときどき粘土をつくる人。京都府出身。
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