AK (あえて結婚しない)女子・男子

「独立を理由に破局。今は結婚で人生を妥協したくない」30代元広告代理店マンが“あえて結婚しない”と決めた理由

結婚観や人生観が変化したことによって、あえて結婚しない生活を選択したAK男子・AK女子と呼ばれる人たちが増えてきています。本連載では「結婚したくない」と考える男女の話を紹介しています。今回お話をうかがったのは、安定した広告代理店を退職し、結婚よりも仕事を選んだ30代男性。女性不信になった理由、広告代理店マンの実情をうかがいました。

●AK (あえて結婚しない)女子・男子 #06

“あえて結婚しない(AK)”ハイスペックな独身男性「AK男子」。彼らの存在は、高橋一生、斎藤工、滝藤賢一らが出演した人気ドラマ「東京独身男子」で広く知られるようになりました。あなたの周りにもいるかもしれないAK男子。実際のAK男子はどのような生活を送っているのでしょうか。

彼らは、結婚できないのではなく、あえてしないだけ。独身のほうが、時間的にも、金銭的にも優雅な生活を送れるというものAK男子の特徴です。今回インタビューに応じてくれた、立島健二さん(仮名・39歳)もその一人。新卒で大手広告代理店に入社し、プランナーとして活躍したのち独立。現在はフリーのコンテンツプロデューサーとして働いています。

そんな彼があえて結婚をしていない理由。そして、華やかな代理店マン時代とフリーランスで恋愛事情はどう変わったのかについて聞きました。

インタビュー取材に応じてくれた立島健二さん(仮名)

インターンシップから広告代理店に内定

――まず、大手広告代理店に入社した動機を教えてください。

立島健二さん(以下、立島): 私は2000年代後半に入社しましたが、当時会社がインターンシップを始めていて、そこで内定をもらいました。映画事業にも力を入れていてヒット作がたくさんあり、インターンでも映画について担当者と話し合ったのを覚えています。といっても、私に何か秀でた部分があったわけではなく、結局、この会社が最初で唯一内定をくれた会社だったのです(笑)。

――広告代理店では10年ほど働いたそうですが、どんな仕事をしていたのですか。

立島: 営業が長かったですね。当時は「ハイブリッド型」の人材が求められていたこともあり、出版社からメーカー、ゲーム会社まで幅広く担当しました。ただ、肝心の映画事業が、入社時をピークに低迷して。このままだと映画の仕事には関われないと思い、独立することを決めました。

安定を捨て、独立。直後はドトールでヒマをつぶす毎日

――転職せず、安定した地位を捨てて独立したのはなぜでしょうか?

立島: 30歳の頃から次のキャリアを考えるようになり、独身で体力があるうちにチャレンジしないと、一生踏み出せないと思ったからです。自分の先輩や上司が深夜2~3時まで残業をしている姿を見て、これは体力的にも厳しいと思ったのもあります。もちろん、社内には尊敬できる先輩もいましたが、業界のスター社員や優秀な方はすぐに独立していきました。

――独立してから仕事は順調でしたか?

立島: いや、最初は全然仕事がなかったです。あまりにもヒマで、ドトールで1日コーヒーを飲んでいたり、思いつきでニューヨークに2週間滞在したりもしました。特に何をしたわけではないのですが、動かないといけないと焦っていたのでしょう(笑)。

今は自分のことを尊重してくれる人がいたら結婚を考えてもいいという

趣味は映画……年間200本見ることも

――結婚しないことで、周囲からの目が気になることはありませんでしたか。

立島: 30歳を過ぎてから親に「そろそろ結婚するように」と言われましたが、姉も結婚したし、今はもう何も言われなくなりました。プライベートで遊ぶのは一人が多いですし、来年40歳で周りにはバツイチも多く、逆に何も言われないですね。昔は寂しいと感じることもありましたが、いまはボクシングジムに通っていて、それが楽しいです。仕事でもあるのですが、映画はザッピングも含めると年間200本は見ています。

――将来の不安はありませんか。

立島: もちろん年を取ったときに、どうなるのかという不安はあります。自然と体が朝方になってきたし、昔みたいに遅くまで仕事はできません。道でおじいさんやおばあさんを見ると、よりリアルに年齢を感じます。ただ、老後の不安のために結婚するのもどうかなと思うので、まだ結婚は考えなくてもいいかな。

3年間交際した年上女性に独立直後フラれて女性不信に

――お付き合いをした人と結婚を考えたのはいつ頃ですか。

立島: 20代後半から3年間交際していた女性がいました。私より5歳年上で、婚約指輪に60万円のカルティエのリングを買いました(笑)。誕生日に「指元が寂しい」と言われたので購入しましたが、当時の年収が1000万円弱だったので大きな買い物でしたね。ただ会社を辞めた数カ月後に、フラれることに。それからは女性を妄信的に信じることができなくなってしまいました。

――それはショックですね。年収に関しては、独立後変化はありましたか?

立島: 年によって売上は変わりますが、会社員時代と比べて年収は下がりました。それこそ今はコロナの影響で、進んでいた案件がストップしてしまい大変です。ただ、映画の仕事以外に、YouTube関連の会社、LIVE配信なども手伝っていて、その売上で暮らしています。とはいえ、私はお金持ちになりたくて会社を辞めたわけではないし、「このくらい稼げたら大丈夫」というベンチマークがあるので、それを下回らなければかまわないと思っています。お金のことはみなさんに聞かれるのですが、好きなことができれば問題ないですね(笑)。

――なるほど。それは素晴らしいですね。とはいえ、独立をきっかけに彼女と別れてしまったんですね。

立島: 彼女は独立に反対だったらしく、いろいろと話し合ったり、独立ではなく転職をしようとも思いました。それでも独立するほうが自分に合っていると思い、彼女にもそう告げました。一度は納得してもらったのですが、フラれるタイミングで「頭には理解していたけど、やっぱりダメだった」と言われました。“野良犬”の私には興味なかったのでしょう。

広告代理店は10倍働いて1.5倍の給料をもらっているだけ

――そう言われるのはつらいですね。広告代理店勤務であればモテたのでは?

立島: 広告代理店というと高給取りで、モテるイメージがありますが、ほかの人の10倍働いて、1.5倍の給与をもらっているだけです(笑)。合コンなんかも、私から主催することはなく、取引先との半分接待で参加したぐらいです。参加したとしても、多忙で疲れてもいたので、早く家に帰って一人で寝たいとしか思いませんでしたね。その頃は、ピークのときは深夜3~4時まで働いて帰宅し、シャワーだけ浴びて、9時半に出社するという生活を続けていました。だんだん目の端に黄色い影が見えてきて「このままだと倒れるな」と思いながら仕事をしていました。

――独立して独立6年目。今の仕事は?

立島: 今はもともとやりたかった映画の仕事をメインでやっています。映画製作の現場には俳優さんはもちろん、監督、脚本家などさまざまな方々が携わっています。僕の場合はそこまで大きくない規模の映画のキャスティングを考えたり、お手伝いをしたりしています。

今は仕事優先。結婚で人生を妥協したくない。

ーーそこまで映画の仕事にこだわる理由と、こんな映画に携わりたいという目標はありますか?

立島: 今、自分が企画している映画作品が何本かあります。正直、今の若い人向けの映画は似たりよったりだし、劇場にお客さんが来るからという理由だけで成り立っているものが多い。僕自身、映画によって、民族差別や社会問題、LGBTなどいろいろな世界の存在を知ることができたので、社会性ある映画を作りたいんです。映画というのは、社会をうつす鏡だと思うので。

ーーこれから結婚する相手が現れることはあるのでしょうか?

立島: 好きなことを仕事にしているので、仮にそういう女性が現れても、仕事を優先させたいです。それこそ、安定した会社をやめて、仕事をやっているので、楽しいことしかやりたくないですね。これは偏った意見かもしれませんが、結婚すると、女性のために人生を妥協してしまいそうだなと。家庭を持ったり、子どもができたら、そちらを優先させないといけないですよね。それはそれで楽しい人生だと思いますが、僕は仕事を選んだのだから、中途半端にはしたくないと決めています。

1990年群馬県生まれ。早稲田大学文化構想学部卒業後、扶桑社に入社。雑誌「週刊SPA!」の編集を経て「bizSPA!フレッシュ」編集長に。
AK (あえて結婚しない)女子・男子