AK (あえて結婚しない)女子・男子

「結婚に焦った30代。婚約相手に裏切られ……」40代女性が“あえて結婚しない”ワケ

ひと昔前なら「結婚=幸せ」という価値観を持つ人も多くいました。ところが昨今、女性の社会進出や恋愛観の多様化に伴い、あえて結婚しない「AK女子」も増えています。 2015年の国勢調査では、男女50歳時点の未婚率が女性14.9%、男性24.2%とどちらも上昇傾向にあります。キャリアもお金もあるのに、あえて結婚しない、その理由とは……?

●AK (あえて結婚しない)女子・男子 #08

都内で広告関係の仕事をしている石田冬子さん(仮名・40代)も、あえて結婚しないAK女子の一人。なぜ結婚しないという人生を選択するに至ったのでしょうか。その背景には過去の婚約破棄と、「一生働き続けたい」という思いがありました。そこで本人に詳しくお話を聞きました。

結婚直前に相手の浮気が発覚

石田さんには30代のときに、結婚直前の関係の恋人がいたと言います。

「30代前半って、女性にとっては一番結婚したい時期じゃないですか。当時2年間、付き合っていた男性(Aさん)がいました。お互いに結婚しようという話になって、お互いの両親とも挨拶をすませていたんです」

順調に愛を育んでいたはずの石田さんでしたが、思わぬところからほころびが生じます。共通の知り合いから「Aさんが会社の後輩と結婚することになり、おまけに子どももできたらしいよ」と聞かされたのです。

「その知り合いはAさんと同じ会社で働いていた人。私は、Aさんが職場で資格試験を受けることになり、『夏までは会えない』と聞かされていたんです。試験の邪魔をしないように、しばらく会わずにいたのですが、その期間中も、Aさんは結婚相手とデートしていました。私はカルティエの婚約指輪ももらっていたのに……」

元婚約者にもらったカルティエのリング。「これ以外のものはメルカリで売りました。売値は10万円いかないくらい」

浮気をした相手から欠点を指摘されて

知り合いからの連絡を受けて、石田さんはすぐAさんに電話をかけます。何も知らされていないAさんはいつも通りの対応でしたが、石田さんが浮気の証拠を突きつけます。

「最初は『何の話をしているの? 結婚するなんてありえない』ととぼけていましたが、共通の知人から聞いたことや彼の会社で話題になっていることを問いただすと、後輩と結婚することを認めました。今まで別れ話もしていなかったので、信じられない気持ちでいっぱいでした」

しかも本来なら浮気をしたのはAさんなのに、彼はここぞとばかりに石田さんの欠点を指摘してきたそうです。

「何だか私が悪い感じに言いくるめられてしまったんです。私も自分のせいでAさんに嫌われたと思ってしまい、もう誰と付き合ってもうまくいかないのではと不安になりました。時間が経ってもショックは消えず、むしろ大きくなっていきました。結局、Aさんは私と会うことに応じてくれず、それから一度も顔を合わせずじまいでした」

今となっては結婚しなくてよかったと実感

それから2年間、石田さんは恋愛に対して、前向きになれなかったと言います。しかし、そこから今まであえて結婚していないのは別の理由もあるそうです。

「それがあったから結婚が嫌になったわけではありません。当時は30代で、結婚するなら今かなと感じていました。Aさんは私の5歳上でしたが、すごく好きではなかった。一緒にいて居心地がいいくらいの理由だったので、もしかしたら焦っていたのかもしれません」

実は2年前に持病で緊急入院したという石田さん。しかし、そのとき真っ先に感じたのも「結婚していなくてよかった」ということだそうです。

「もし夫や子どもがいたら、その人たちに迷惑をかけてしまう。一人なら入院しても、洗濯物や食器洗いも私の分だけなので何もしなくていい。やたらと他人に気を遣ってしまう性格なので、一人きりがあっているのかもしれません」

「婚約破棄事件」の3年後、石田さんはある男性に再び好意を寄せることになります。

「地元の飲み会で知り合った同い年の男性でした。その人とは一緒にご飯に行ったり、旅行したりして、正式に付き合ったのは1年半ほどでした。ただ、そのあと彼が海外赴任に。今、仕事をやめて海外に行くのは正直厳しいなって。

もし結婚するとしても、10年後くらいにできればいいかな。そもそも結婚にいろいろなことを望まなくなりました。借金も少しくらいならあってもいいし、何なら多少の持病があっても大丈夫です(笑)」

趣味で一口馬主にハマる

「年を重ねると、コミュニティや人付き合いが増えてくるので、そこで知り合った男性と仲良くなることが多いですね。特に今、一番ハマっているのが、競馬のコミュニティ。もともとオグリキャップを見て、葦毛の馬がかわいいと思ったのがきっかけで、3~4年前からは友人の紹介で一口馬主をするようになりました。現在7頭の馬主です」

一口馬主とは1頭の競争馬に対して、数十から数百人が共同で出資して所有するシステム。年間の飼料代や維持費を負担する一方で、レースの賞金は口数に応じて所有者に分配されて、投資・運用としての魅力もあります。

「とはいえ、基本的には馬がかわいいというのが一番のモチベーション。抽選で馬に会いに厩舎へ行くこともできて、いつか自分が育てた馬が大井競馬場や中央競馬で活躍するのを楽しみにしています。一人暮らしなのと、仕事が不規則でペットを飼えないので、気持ち的にはその代りですね」

ちなみに2020年のジャパンカップを制し、GI9勝・獲得賞金歴代1位となった名馬アーモンドアイも一口馬主の対象でした。

「実は私が一口馬主に興味を持ち始めたとき、友人からアーモンドアイを紹介されました。当時は半年以上売れ残っている不人気馬で、私も出資は見送ったのですが、もし1口6万円の出資をしていたら190万円近いプラス。惜しいことしました(笑)」

2019年に北海道の厩舎にキタサンブラックやディープインパクトを見に行った

働くことは一生続けていきたい

石田さんには競馬・一口馬主以外にも所属しているコミュニティが複数あり、そのうちのひとつは「近所で飲み歩きする会」だとか。

「たまたま地元の飲み屋で知り合った人たちと不定期で集まって、飲むようになったんです。バーベキュー、ボーリングにも行ったりするのですが、たまにそこでカップルも成立します。実は私も近所で知り合った20代の男性と、ちょっと付き合ってみるかという流れになりました。フラッと遊びに行ける仲で、しばらく一緒に行動していたのですが、相手が引っ越して、自然消滅してしまいました」

石田さんには仕事だけでなく、女子会をしたり、一緒に旅行に行ったりする会社の同僚がいて、毎日が充実していると言います。

「今の仕事ではなくてもいいですが、何らかの形で一生働き続けていきたいです。仕事柄、仕事のことが常に頭のどこかにはあるのですが、広報やPRは興味もやりがいもあって、おもしろいです。年末ジャンボが当たるみたいなミラクルがあったら、今の仕事は辞めてしまうかもしれませんが、働くこと自体をやめるつもりはないですね」

同年代の40代男性との結婚は難しい!?

仕事にも、趣味にもアクティブな石田さん。一時期は両親から結婚についてあれこれ言われたそうですが、「最近は両親も、すぐには結婚するつもりないと察したようで諦めています」と語ります。

「40代の男性って、既婚者だったり、あるいはバツイチで子持ちだったりするんですよね。子どもが小さいと、お父さんが大事だから気が引けてしまう。そうなると結婚は難しい(笑)。一方で、40代未婚男性は、一見普通に見るけれど、女性と付き合ったことあるのかなという感じだったり、会話のキャッチボールができなかったり、何となく怖い気もします」

趣味に仕事に全力、さらに友人関係も充実している石田さん。それこそ彼女があえて今結婚しない理由なのかもしれません。

1990年群馬県生まれ。早稲田大学文化構想学部卒業後、扶桑社に入社。雑誌「週刊SPA!」の編集を経て「bizSPA!フレッシュ」編集長に。
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