AK (あえて結婚しない)女子・男子

その恋愛傾向が理由?「仕事が楽しい」だけではない、30代女性が“あえて結婚しないもう一つの”ワケ”

結婚観や人生観が変化したことによって、あえて結婚しない生活を選択するAK男子・AK女子と呼ばれる人たちが増えてきています。本連載では「結婚したくない」と考える男女の話を紹介しています。今回お話を伺った36歳の女性は、上京し苦労して得た今の仕事を中断したくないということのほかに、もうひとつAKの理由があると言います。それは彼女の恋愛傾向にありました。
「バイセクシャルで、アンチ結婚主義」同棲相手はいるけれど、20代女性が“あえて結婚しない”理由

●AK (あえて結婚しない)女子・男子 #09

世の中の当たり前が変わりつつある現代。キャリアもお金もあって、結婚しない人は「AK(あえて=A、結婚しない=K)」と呼ばれるようになった。 国勢調査をもとに計算された「生涯未婚率」は右肩上がりで推移し、2015年時点で男性が23.37%、女性が14.06%(国立社会保障・人口問題研究所調べ)。今の時代、結婚できないのではなく、あえて結婚せずに「AK」で生きることは当たり前になりつつあるのだ。

彼女たちがあえて結婚しない理由はさまざまだ。フリーランスのPRプランナーである七瀬エリさん(仮名・36歳)が結婚しない理由は、仕事が多忙であること以外にもうひとつあるという。詳しく話を聞いた。

結婚でキャリアを中断したくない

九州生まれの七瀬さんは高校卒業後、「とにかく田舎から出たい」一心で、名古屋市内の専門学校に進学。「30歳を超えてから結婚しなくても平気に思えるようになった」と語る。

「結婚しないのは、一昨年にフリーランスとして独立して仕事も楽しくなったのに、結婚や家庭を持って、キャリアを中断させたくないから。自力で稼げるようになって、趣味や美容などにかけられるお金も増えた。せっかく東京に住んでいるなら、いろいろなことを経験しないと損じゃないですか」

美容師になるため名古屋の専門学校に通っていた彼女。中退して上京し、東京でフリーランスのPRプランナーになった。

「専門学校で3年半かけても美容師の資格試験に通らなかったんです。ただ、学校が勉強をしながら働けるところで、おまけに寮生活で家賃もほぼかからなかった。3年半で貯金が70万円以上できたんです。それなら、東京ですぐに仕事が見つからなくても大丈夫だろうと。美容師になるのを諦めて、1人でスーツケースをひいて上京しました」

七瀬さん

そこからヘッドスパの技術をいかせるリラクゼーションサロン、マッサージ店、アパレルショップでの接客販売、営業職などさまざまな仕事に従事。さらに広報として人材派遣会社に転職する。これが彼女にとっての転機となる。

 「いままで営業や接客販売などを経験してきましたが、広報の仕事には他と違う強い何かを感じたんです。もともと人間が好きだし、人と人をつなぐことも好きだったので、いろんな職種、業界、経営者と働ける広報という仕事がすごく自分にあっていた。もっとこの仕事を極めたいと思いました」

しかし、コロナ禍が彼女を襲った――。勤務先は国内観光業を主な取引先としていたため、影響をもろに受け、その年の売上がなんと9割減になってしまったのだ。

 「社員数200人近くいたのが、あっという間に60人程度に。いざというときに自力で稼げないと怖いと思いましたね。もっと経験を積む必要を感じて、それで独立しました。コロナ禍のタイミングで最初は苦労も多かったですが、いまはフリーランスとして企業数社の広報に携わらせてもらってます。接客販売だったり、テレアポ営業だったり、転職でいろいろな経験を積んで培った経験や人脈をフル活用してます。やった分だけ自分への評価や報酬が返ってくるので、会社員時代には味わえなかった喜びですね、テレアポ営業はまだ少し緊張しますが(笑)」

複数人と同時に恋愛するポリアモリー

ポリアモリーのパートナー(当時。写真左)と、七瀬さん

「独立して、前職時代の営業経験が活きました」と笑う七瀬さん。仕事が今のモチベーションというが、もうひとつ「あえて結婚しない」理由がある。それは、複数人と恋愛関係を同時に築く、「複数愛」「ポリアモリー」とも呼ばれるライフスタイルを送っていることだ。

「中学生時代から好きな人が複数いて、ずっと1番を決められないんです。知人から『好きな人ができて、今の彼氏と別れようとしている』という話を聞いても、違和感がありました。どっちも好きでいいんじゃないか、どっちか選ばないとダメなのかって。ただ当時はポリアモリーという言葉も知らず、ネットで調べても『浮気性』としか出てこなかったので、誰にも相談できず悩んでいました」

一見すると似た意味にも捉えかねられない「ポリアモリー」と「浮気性」。だが、両者は明確に違うという。

「ポリアモリーは、関係者全員の合意のうえで、別のパートナーとお付き合いをしている。そこが浮気と違います。もちろん、パートナーに彼女や妻がいれば、その方にも私の存在を伝えてもらいます。もちろん、『やっぱり無理だった』ということで関係解消することも多いですが」

手前の真ん中が七瀬さん。左の男性がポリアモリーのパートナー(当時。ひとつ前の写真の男性との同時交際)

信じた男に80万円騙されたことも

当然、双方の合意があればポリアモリー同士の結婚も可能だ。七瀬さんも数年前まではその願望もあったそうだが、最近ではそれも薄れてきているという。

「仕事が充実してきたのもありますが、どうしても変な男に騙されることが多くて。ある男性には80万円貸していて、そのまま逃げられました。私以外に何人もの女性から同じ金額を借りていて、結婚詐欺師みたいな男でしたね。また、彼女は絶対いないという男性と同棲していたら、いきなり別の交際相手が合鍵を使って、乗り込んできたこともありました」

最大3人と同時にお付き合いしたこともあるという七瀬さんだが、ここ1年間は2人の彼氏がいて、それぞれと食事やデートを楽しんでいる。

「わりと好きだと思ったら積極的に動くタイプなんです。電車で気になった男の人がいたら、その人を追いかけてナンパしたり、飲み屋で隣りに座った男の人をいいなと思ったら私から声をかけたりします。デートは週末が多いですね。平日は仕事が忙しいのと、自分の時間がほしいときもあるので。誕生日などのお祝い事は、プレゼントはかぶってしまう恐れがあるので避け、なるべく食事を一緒に楽しむようにしています」

Sexをした日は必ず名前をメモ

真ん中が七瀬さん。右はポリアモリーのかつてのパートナー。「こうしてみると、やせ型で高身長の男性が多いですね」(七瀬さん)

ちなみにクリスマスはイブと当日で分けているが、1日しかない誕生日は、いつも過ごし方に悩むそうだ。それ以外にも複数人と関係を持つにあたって決めているルールがあるという。

「エッチをしたら、必ず日付と名前をメモしています。またお付き合いしている男性同士が揃うことはありません。1人の男性と会っている時はその方を100%愛するようにしています。なので、2人とお付き合いしていたら200%で、3人とだったら300%愛する気持ちでいます」

仕事とポリアモリー、この2つの理由で結婚しないという七瀬さん。しかし、「今後もずっとこういう恋愛を続けるかどうか、私にもわからないです」と語る。

「個人的にはポリアモリーは、LGBTなどのセクシャルマイノリティとは違うと思っていて、理想の相手が見つかったら突然、ポリアモリーではなくなるかもしれない。性自認や性的指向と違って、すごく曖昧な部分があるんです。最近では仕事関係や親しい人には、自分がポリアモリーであることを打ち明けています。正直、遊び人という目で見られることもありますが、徐々に正しい認識を伝えられたらと思っています」

多様な考え方やコミュニティが認められつつある日本で、彼女のような「ポリアモリー」なライフスタイルに憧れたり、その価値観を内在していたりする人は少なくないのではないかと思う。七瀬さんはその一人として、積極的な発信をすることで「存在を認めてもらえたい」と語る。

「バイセクシャルで、アンチ結婚主義」同棲相手はいるけれど、20代女性が“あえて結婚しない”理由
1990年群馬県生まれ。早稲田大学文化構想学部卒業後、扶桑社に入社。雑誌「週刊SPA!」の編集を経て「bizSPA!フレッシュ」編集長に。
AK (あえて結婚しない)女子・男子