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婚活で出会った「普通の人」じゃ満足できない文化系男子

婚活中、「普通の人」に出会ってもなかなか好きになれない――そんなこと、ありませんか?telling,で婚活について綴ってきた神山園子さんは、ある男性との出会いを通じて自身の好みについても振り返るきっかけになったのだそう。一体どんな人だったのでしょうか。

文化的な趣味を求めるのは女性が多い?

少し前、「普通の人でいいのに!」というマンガがSNSでバズっていました。主人公はお笑い芸人やバンド、そして個性的なオシャレが好きないわゆる「サブカル系女子」。クリエイティブな業界へのあこがれが強く、平凡でパッとしない自分の世界にモヤモヤを抱えている。ラジオの放送作家をやっている男性に恋心を持っていましたが、失恋。そのあと元同僚と付き合うものの、その男性があまりにも「普通」でサブカルトークも伝わらず、いい人なんだけど退屈……となってしまいます。

かつて「相手と音楽の趣味が合うかどうか」を最優先事項として恋人探しをしていた私は、身につまされるような気持ちで読みました。私の女友達も主人公に共感し、「いい人でも面白くないのは無理」「文化的な趣味の一つくらいは持っていて欲しい」といった意見が多数。「普通」な彼氏への評価は厳しいものでした。こうやって相手に「文化的素養」を求めるのって女性が多いよなあ、と思っていた矢先、興味深い出会いがありました。

普通の女性に興味が持てない超文化系男子

婚活のために使ってるマッチングアプリで先日お会いした男性は、映画やドラマのPRを行うお仕事をしている方でした。本人も映画や本が大好きで、繰り出される豊富な知識と鋭い考察。私の好きな映画を伝えると、「いいですね~僕も好きです」に続けて「あの映画の劇中歌の歌詞って、誰目線なのかによって聞こえ方が変わりますよね」と返してきたり、「ラストのシーンのカメラワークで何が強調されているかわかります?」と高度な質問を投げかけてきたり。さらには「この役者さんとはPRでとても協力してもらってプライベートでも飲みに行って~」と、作品を見ているだけでは知ることができないような裏話も披露。私は前職で芸能関係の裏方をしていたのもあり、聞いているだけでとても楽しかったのですが、ふと「神山さんは、僕の話おもしろいと感じますか」と聞かれました。「すごい面白いです!こういう話できる人ってなかなかいないので」と返すと、ほっとしたようにこう切り出しました。

「僕、普通の女性を好きになれないんです」

一体何のことかと思い聞くと、婚活で会う女性はみんなこの「映画論」に興味をもってくれないと言います。監督や演出について語ってもポカンとされると。もう一つの趣味である読書についても、本を読んでいない人が多く、そもそも活字に興味もなさそうで、会話が広がらないとのことでした。
たしかに彼の話はやや難解なところがあり、私は近しい業界で働いていたから所々話を合わせられたものの、普通の人が「カメラワーク」や「劇中歌の主語」といった玄人的な視点で映画を見ているとは思えません。聞くことに徹したとしても、興味がなければ退屈だし、間違ったことを言ったら指摘されそうなので相槌を打つのがやっとかもしれません。彼と楽しく会話をするには、映像作品や活字への興味や知識が人並み以上にあることが必須になってくると感じました。

さらに彼が言うには、そういうものに興味のない「普通の人」は判を押したように同じような趣味・休日の過ごし方をしていてつまらないのだそうです。「趣味はヨガ」「休日はネットフリックスで恋愛バラエティ」と聞くともうその人に興味が持てなくなる、と。

「見た目もみんな清楚なOLといった感じで個性を感じなくて…」

いやいや、趣味がヨガでも面白い人はいるだろ!婚活で清楚な恰好するのは当たり前だろ!とツッコみたくなりましたが、彼自身、そんな自分に嫌気がさすのだそう。

そういえば私もマッチングアプリでプロフィールに「趣味はフットサル」「休日はYouTubeを見ています」と書いてある人はマッチしないようにしてきたので、同類です。フットサルが悪いわけでもないし、YouTubeは私もよく見るけど、そんな人はこの世にごまんといます。もっと「本気で好きなもの」みたいなのないのかな?と思ってしまうのです。
実際に会って話をすれば、その人の奥深さみたいなものも見えてくるのだと思います。ただ「フットサル」と聞くと、陽気で明るくて、その代わり文化的なものには疎くて、インドア派の気持ちはわかってくれなさそう……。という偏ったイメージが先行してしまい、どうしても乗り気になれません。

ただこれはとても偏見に満ちた考え方だというのはお互いわかっているので、「趣味で相手を嫌いになりたくないですよね……」「気をつけましょう……」と最後はなぜか落ち込んで解散しました。

「趣味が合う」って結婚に必須な条件ですか?

彼にとっても「趣味がヨガ」「清楚なファッション」が、決して悪いわけではないのだと思います。ただ、文化的な仕事にまい進し、絶えず情報を仕入れている彼からしたら、それについて全く語れない女性を退屈に感じてしまうのかもしれません。
映画や本に詳しい人が偉いというわけではないけれど、「そんなことも知らないの?」と思いながらお付き合いはできないですよね。きっと彼は同じくらいの文化的素養を持っている人としかお付き合いできないでしょう。そうなると選択肢はかなり限られてきそうです。

では彼は果たして「理想が高い」のでしょうか。
そう言われるとちょっと違うかな?とも思います。膨大な知識は間違いなく彼が仕事や趣味に熱中した証で、実際それは彼の魅力に繋がっていました。婚活市場の「普通」に合わせてその魅力を封印してしまうのはもったいない。他人事なので無責任に言えば「きっといい人見つかるからそのスタイルで頑張って!」という感じです。

そもそも結婚において「趣味が合う」ってどれくらい重要なんだろう。私も趣味が合わないというだけで、たくさんの人をスルーしてきました。その中にとてもいい人がいたかもしれません。結婚してしまえば、趣味がどうこうなんて関係なくなるのでしょうか。もしかして、“とてもくだらないこだわり“で視野を狭めてしまっているのかもしれないなと思った出来事でした。

1991年生まれ。芸能・出版などマスコミ業界で働く会社員。リアルなミレニアル世代として、女性特有のモヤモヤや働き方などを主なテーマに記事を執筆中。
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