皆方由衣さん「可愛いものが大好き。30代もロリータを続けます」偏見に負けず好きを貫くファッションモデル
可愛いものが好き。気づけば海外でも活躍するモデルに
――ロリータファッションに目覚めた時のことを教えてください。
皆方由衣さん(以下、皆方): 中学生のとき、当時高校生だった兄が女友達にピンクと白のロリータ服を着せられていたんです。その時に私も着させてもらったのがきっかけでした。
私は小さい頃からお姫様に憧れていて可愛いものが大好き。下妻物語に出てきそうなお洋服に袖を通したら、本物の姫気分になれて…そこからロリータにはまっていきました。
――モデルになったきっかけは?
皆方: 18歳のとき原宿の竹下通りで母と買い物をしていたところ、スカウトされました。
その事務所からKERAのモデルさんが出ていることもあり「KERAに出たいです!」って言ったんです。小学生の頃から愛読していたので。
スカウトされるまで雑誌は見る側で、将来の夢も「お嫁さん」と思っていたのですが(笑)。そこで初めてモデルになりたい気持ちが固まりました。
――モデル活動を始めて10年目です。振り返るといかがですか?
皆方: モデルになった当初はお洋服のブランド名もあまり知らなかったです。
ロリータファッションが好きな方や原宿界隈の人に教えてもらって知識が増えるにつれ、どんどんのめり込んでいきました。けれど、ロリータは歴史も長いし奥が深い世界なので、まだ理解しきれていない部分もたくさんあります。
2014年にアメリカで開催された「ANIMEMATSURI」という日本のアニメやカルチャーを集めたイベントを皮切りに海外でもお仕事をさせてもらうなど怒涛の10年でしたね。ロリータだからこそ、こういう経験ができたのかなって思います。 あっという間に感じますけど、充実感もあります。
――ロリータに対して、海外の方の受け止めはどんな感じなんですか?
皆方: 日本よりもたくさんの人が、「かわいい!」って応援してくれる印象です。
日本のカルチャーを発信するイベントだから、そもそも日本に興味がある人が来ているということもあるかもしれませんが・・・「最高!」と褒めてもらえますね。
あとは、中国では男女ともに人気でモテファッションなんですよ。普段からロリータファッションをしていない子もデイリーのお洋服に取り入れていて一般化されています。300〜500近くのブランドがあり、日本にも進出しています。
日本では偏見の目。恋人から否定されたことも
――日本でのロリータに対する反応はどうですか?
皆方: 目立つファッションなので、街を歩いていると結構煙たがられますね。
ひそひそと何か言われているなって感じることはあります。 ひどい場合は罵声を浴びせられたり、酔っ払った人から「お人形さん来たね〜」と冷やかされたりすることも…。
「ファッションがおかしいから、中身もおかしい」と決めつけられ、お菓子しか食べないと思われることもあるんですよ。外も中もメルヘンと思われてしまうのでしょうか。これでも以前より、偏見はだいぶ薄くなってきましたけどね。ファッションなのに人格まで想像されてしまうのはつらいです。
――恋愛など、私生活で生きづらさを感じたことはありますか?
皆方: 彼氏に「そのお洋服ではデートしたくない」と言われたことはあります。甘くて目立つ服装が嫌だったのかな…あまり中身を見られていない気がしたので、その場ですんなりお別れしました(笑)。それなら一緒にいる意味はないかなっていうのと、ロリータありきの私なので、そこを否定したら元も子もないというか。
――将来に不安を感じたことは?
皆方: 27〜28歳くらいのときは、年取るのがすごく嫌でした。
同い年の人がキャリアを積んでお給料が安定してきていたり、子供を産んでいる人も増えてきていたりしていたので、仕事もプライベートも焦りを感じていましたね。やらなきゃいけないことがまだいっぱいあるのに、年だけとっていっている気分で。
でも、先日29歳の誕生日を迎えたら、なぜか清々しい気持ちになって「20代最後を楽しもう」って思えたんですよね。いまは「私の30代はどうなるんだろう」って、ワクワクしています。
30代は外見だけじゃなく、内面的なものを発信したい!
――30代になってもロリータは続けますか?
皆方: 30代になっても続けていく気です。
青木美沙子さんや深澤翠さんなど長くロリータを着ている先輩もいて、自分もそうなっていきたい。 応援してくださる方の中には「30歳になっても40歳になってもロリータを続けてください」と言ってくれる人も結構いるんです。
ファンの方を残念な気持ちにさせたくないし、自分が後悔することのないように、見た目も中身も向上していきたいですね。
――モデルという仕事は女性にとって憧れだと思うのですが、今後はどんな自分を見てもらいたいですか
皆方: 人として“中身”の部分も発信していきたいですね。
いままでは割と外見に囚われていたんです。可愛いお洋服に合う顔とスタイルをキープしないといけないっていう気持ちが強くて。ロリータだから可愛らしくお淑やかに、お洋服が汚れないように…と行動や所作が制限されていた部分もありました。
でも日々SNSで発信するなかで、見ている人は内側から出るものを感じ取ってくれることに気づいたんです。なので年をとっていく上で、自分の内面もさらけだしていきたい。
最近では私がロリータのお洋服を着てDIYをする動画をYouTubeにあげています。父が大工ということもあるのですが、「ロリータだからやめよう」「汚れちゃうからやめよう」じゃなくて、どんどんトライしていこうって思っています。
思いついたらすぐ行動派なので、思いついたことを楽しんでやっていきたいです。
まるで恋愛しているみたいに、世界をキラキラに変えてくれる
――ロリータにも年相応なワードローブの変化があるんですか?年齢的にずっと続けていけるものなのでしょうか。
皆方: 年を重ねても着れますが、ワードローブの変化はありますね。
10代の頃は丈が短くてかつボリュームがあるスカートが好きだったんですけど、今はロング丈や、短くてもお膝が隠れてほしいなっていうのがあったり…。
柄や色に関しても一般的なファッションと一緒で、若いうちはビビッドなピンクも着れたけど、今はくすみ系のピンクとか、無地でフリルとか。そういった服に変化していてます。
――周りから色々言われることもあると思いますが、そんななかでもロリータを続けるモチベーションはなんでしょう。
皆方: やっぱり着たときの自分が好きだし、ロリータのお洋服が好きだし、もうやめられないなっていう感じです。
恋愛するとキラキラフィルターかかるって言いますけど、ロリータは恋愛しててもしてなくてもお洋服を着るだけで魔法みたいに世界が変わる気がします。気持ちが華やいで、性格も良くなるんじゃないかって勝手に思ってます(笑)。着るだけでそんな気分にさせてくれるのは、ロリータだけです。
――恋愛や人間関係などの悩みの中で、好きなことを諦めようとしている方もいると思います。そんな方へ向けてメッセージをお願いします。
皆方: 人と比べずに自分がどうしたいかを考えること。
ロリータの場合は、批判される時ってTPO に合わない場合もあるので、 TPOは考えていいと思います。うまく仕事と折り合いをつけて、通勤のお洋服はフリル少なめにしたり、週末だけロリータを楽しむ「週末ロリータ」をやったりしている方もいます。
そのうえで、自分の好きなことを認めてくれる人を見つけられたらいいんじゃないかな。
そういう人ってあんまりいないかもしれないけど、諦めずに共に探しましょう!と伝えたいです。
●皆方由衣さんのプロフィール
1991年、東京生まれ。2011年から『KERA』や『Gothic&LolitaBible』などのファッション誌でロリータモデルとして活動を開始。『Used Mix』『LARME』『CUTiE』といった雑誌レギュラーモデルや、ロリータブランド「Innocent Word」「Baby, The Stars Shine Bright」のモデルも。海外でのイベントにゲスト出演したり、カラーコンタクトレンズのイメージモデルとなったり、幅広く活動中。
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