YouTuber竹脇まりなさん「自分が動いてる姿、自信がなかった」。夫婦で二人三脚、「比べない」フィットネス動画が人気に

心も身体も健康に“をモットーに自宅でできるフィットネスやダイエット料理などを発信する“宅トレ“系YouTuber竹脇まりなさん(30)。共感を呼ぶ内容で支持を集め、「Marina Takewaki」のチャンネル登録者は現在、150万人を超えています。大手企業を退職し、ヨガ講師の資格取得のため海外に渡ったのが2年半前。YouTubeを始めたきっかけや、動画を通じて伝えたい思いなどを聞きました。

最初は自信がなかった

――前編ではモヤモヤしていた会社員時代やヨガ講師として仕事をすることができず悩んだことをお話していただきました。どうしてYouTubeを始めたんですか?

竹脇まりなさん(以下、竹脇): しばらくはフリーのヨガ講師として、自立するに及ばない程度の仕事量をしていました。転機は2018年12月に、今度は旦那の仕事の都合で、渡米したことです。アメリカに着いたその日に、最初の動画を撮影してみたんです。

それまではインスタグラムをやっていて。投稿を見てヨガの教室に来てくれる人もいたので、発信を続けていました。だからインスタを見てくれている人たちに、もっと情報をお伝えしたいと思ってYouTubeを始めることにしました。ニューヨークだったので、日本にはない最先端のヘルシーな情報も伝えることができると思って。だから、ものすごく熱意があって始めたというより、アメリカに渡ったタイミングで試しに始めてみたという感じです。今みたいになるとは想像してなかったです。

――最初はどんなことを動画にしていたんですか?

竹脇: マルチに、ジャンルを絞らずにやってました。日常的なことが多くて、アメリカの街並みやスーパーマーケットの様子、食べ物の紹介などです。もともとは今みたいに健康に特化したチャンネルではなかったんですよ。

チャンネル登録者数も、2019年8月までは300人くらいだったんです。超低空飛行で、8カ月間続けてました。

先生じゃない、「みんなのダイエット友達」

――そこからブレイクしたきっかけがあったんですね。

竹脇: 2019年8月に「ハンドクラップ」というダンスがSNSで流行って、私もやってみたんです。そこで初めて“バズった”というか、見てくれる人が増えました。それまで私は、踊ったりフィットネスをしたりする動画を出していませんでした。「よくわからないけど流行ってるしやってみるか」という感じで投稿した動画が、いろんな要因が重なって多くの人に届いた。私は最初、自分が動いている姿を配信することに自信がなかったんですが…。

――笑顔のフィットネス動画を見ていたら、とてもそうは思えないです。

竹脇: ヨガスタジオを落ちた経験もあったし、自分の動く姿にすごく自信があるかと言うと、そうではなかったです。ダンサーのように踊り自体がとても上手、というわけでもないし。化粧とかマスカラとかぼろぼろに落ちながらやっちゃうので、そういうのを配信したら・・・叩かれる?(笑)とか思ってました。

でも「ハンドクラップ」で、そういう素の部分、“まんま”な部分がいいと言ってくださった人がいて。それに加えて、旦那も「フィットネス中心にやっていったほうがいい」とずっと言い続けてくれて。それを機に旦那が企画・プロデュース、私が撮影・編集と担当分けして、フィットネスと健康のジャンルに絞ってやっていくことにしました。
完全に舵を切ったのは今年に入ってから、2020年の1月からですね。

――いまやチャンネル登録者150万人以上です。ものすごいスピードで人気が高まったんですね。反響も大きいでしょう。

竹脇: 最初は、同世代の人たちや友達をイメージしながら、動画を作ってたんです。「この動きできるかなあ」とか想像しながら。だから自然と、同世代のいわゆる「アラサー」に向けて発信していたんです。でも本当にありがたいことに最近は、いろんな世代の方々が見てくれるようになりました。学校の授業でも私の動画を使ってもらえることがあるみたいで。

多くの人に見てもらうようになって、動画を投稿するときに、昔より今の方が緊張するようになりましたね。慣れるんじゃないの?と思うかもしれませんが、いまだに全然慣れません。どんな層の方が見てくれても安全なものになっているだろうか?とか、この内容や要素で大丈夫かな?とか、いつも考えています。プレッシャーというか、責任感が日に日に増してきました。もちろん動画の撮影自体は楽しんですけどね。

――竹脇さんの動画は多くの人から共感を集めていますよね。動画を作る上で意識していることは何ですか?

竹脇: 一番意識しているのは、私が皆さんと横並びであるということ。それを大事にしてます。生徒と先生という関係ではなくて、私はずっと、「みんなのダイエット友達です」って言ってるんです。

ジムのグループレッスンを想像してみてほしいんですが、先生と生徒さんがいますよね。その生徒さんたちの中の最前線に、すごくできる人がいません?めっちゃノリノリでやってる、みたいな。私はそちら側のイメージで。“生徒代表”じゃないですけど、一緒にダイエットやボディメイクをしていく立場として、一緒に楽しめる横並びの存在でありたい、といつも思っています。だから、私自身も筋トレをしていてすごく疲れるのですが、そういう疲れた姿も動画でそのままお見せしています。

自己肯定感を持ち、素直に

――コメント欄を見ていても、視聴者が動画を見ながらフィットネスに取り組んでいる報告がたくさんありますね。ほほえましいです。

竹脇: 動画を作るときには、見てくれた人が自分自身をもっと好きになってくれるように、ということも心掛けています。チャンネルの目標は「痩せる」ではなくて、「自己肯定感を持つ」なんです。

運動すると、達成感があるんですよ。「昨日はできなかった腹筋が、今日はこれだけできた」とか。少しだけでも「体が絞れてきた」とか。運動することで前向きな気持ちになれるんですよね。

私も会社員時代に悩んで、自分を否定的に見る時期がありました。そういう時に救ってくれたのが、運動や健康的な食事でした。だから、痩せるために運動するというのはもちろんですが、本質的には、人は、自分をもっと好きになるために運動するんだと思います。
「私は私でいいし、あなたはあなたでいいんだよ」っていうのを実感するために運動するものだと私は思ってます。だからテロップで言葉を入れるときも、「人と比べなくていいんだよ」「比べるのは過去の自分だ」とか、そんな発信を心がけてます。

――現代の20~30代の社会人の中には、人生に悩んだり、迷ったりする人がたくさんいると思います。そこから一歩踏み出した竹脇さんとして、何かお伝えいただけることはありますか?

竹脇: さっきの話と通じますが、“他人と比べないこと“が大切だと思います。
20代で働き始めて30歳くらいになってくると、自分のやりたいことよりは、世間体とか見栄えがいいこと、聞こえがいいこととかに、寄っていきがちだと思うんですよ。インスタグラムとかを見ても、みんな“映え“てて、いいところばっかり投稿してたりするから、自分が低く見えちゃう。「みんなこんないい生活してるのに、なんで自分はこんな忙しくしていて、”映え“てないんだろう?」みたいに思っちゃう。それは仕事においても一緒で、同じような環境の人と比べてしまうことだとか。

でも、他人と比べることって実は無駄だと思います。それより自分にフォーカスして、本当に自分が好きなものは何か、やりたいことは何か、考える時間をとってほしいなと思います。自分も元々は比べたがりで、すごく“ステータス人間“だったので、余計に思いますね。”聞こえ重視”とか、そういう女性って多い。なので同世代の女性たちには、他人は関係なく、自分に素直な感情をもうちょっと大事にしてみてほしいな、と思います。

●竹脇まりなさんのプロフィール
心も身体も健康に“をモットーに自宅で気軽にできるフィットネスやダイエット料理などの動画を発信する“宅トレ“系クリエイター。1989年秋田生まれ。大手金融企業を退社後、ヨガのインストラクターを経て、2018年末にアメリカ移住を機にYouTubeを開始。明るくポジティブなキャラクターも支持を集め、2020年5月にチャンネル登録者100万人を突破した。撮影・編集を担当する彼女と、企画・プロデュースを手がける日系アメリカ人の夫の二人三脚でチャンネルを運営している。
https://www.youtube.com/channel/UCw7HTQv0F4CB9zGRhqosYsg

写真家。1982年東京生まれ。東京造形大学卒業後、新聞社などでのアシスタントを経て2009年よりフリーランス。 コマーシャルフォトグラファーとしての仕事のかたわら、都市を主題とした写真作品の制作を続けている。
1987年、愛知県豊橋市生まれ。東京在住。ライター。2010年から2020年まで毎日新聞記者。関心分野は文芸、映画、大衆音楽、市民社会など。愛読書はボリス・ヴィアンの諸作。趣味は夏フェスと水鳥観察です。