チャンネル登録者150万人のYouTuber竹脇まりなさん「どう生きるか」悩んだ会社員時代

心も身体も健康に“をモットーに自宅でできるフィットネスやダイエット料理などを発信する“宅トレ“系YouTuber竹脇まりなさん(30)。共感を呼ぶ内容で支持を集め、「Marina Takewaki」のチャンネル登録者は現在、150万人を超えています。大手企業を退職し、ヨガ講師の資格取得のため海外に渡ったのが2年半前。思い切って「やりたいこと」にチャレンジした竹脇さんですが、当初は迷いや不安もあったといいます。人気YouTuberになるまでのお話を聞きました。

このまま走り続けていいの?

――YouTuberになる前の話からお聞きします。大学卒業後は金融系の大手企業に入社したそうですね。

竹脇まりな(以下、竹脇): 東京の大学を出てそのまま新卒で就職しました。「あるある」かもしれないんですけど、当時は仕事内容よりも、環境重視で就職先を決めましたね。安定していて、長い間働くことができて、女性も活躍できて・・・それが就活の軸でした。いわゆる“ステータス人間“だったと思います。本当にありがたいことに大手企業に入社できました。

――そこで6年間ほど働いたんですね。仕事はいかがでしたか?

竹脇: 2012年4月に入社し、2017年12月に退職しました。振り返ると、トータルには「入ってよかったな、やってよかったな」っていう6年間でした。と言うのは、入社する前、大学生時代の私には本当にやりたいことがなくって・・・。でも、入ってみたらやりがいがあった、という感じなんです。

最初は営業、その後は人事やバックオフィスのお仕事をしました。それぞれの仕事に面白さがあって充実していましたね。総合すると、めっちゃ楽しい会社員時代でした。

――そんな会社を退職しようと思ったきっかけは何だったんですか?

竹脇: 価値観が変わり始め、「本当にやりたいことは何だろう」と考えるようになりました。一番のきっかけは、旦那からの言葉です。私は結婚したのが27歳だったのですが、その時期に旦那から「会社のブランド名じゃなくて、自分自身で生きていけるスキルを身に着けていた方がいいよね」と言われたんです。

旦那は日系アメリカ人。当時は日本で外資系企業に勤めていて、解雇や転職が当たり前の世界にいました。その一方で私の職場環境は安定しており安心感もあったので、旦那の環境とは違っていたんですね。海外経験があって、外資で働く彼と、めっちゃ“純ジャパ“な私という感じで。そういう意味では、彼から見たら色んな意味で固定観念が強い人間だったと思うんです。
自分の会社内で閉じていた私からすると、流動的に変化していく彼の視野の広さ、グローバルな感覚やフラットな物の見方に憧れました。

竹脇 :今は金融の世界にいるけど、本当に自分がやりたいことって何なんだろう?と考えるようになりました。どう生きていったらいいのか、迷ったり悩んだりするようにもなりました。「あれ、私って確かに今は充実してるけど、このまま一生この仕事をしていくのかな?」とか。

――いわゆるアラサーになると、そういった悩みや不安を抱え出す人も多そうです。

竹脇: そうですよね。特に、女性は心のどこかで「30歳」を区切りとして考えている部分があったりします。27~29歳あたりの女性って色々と考えますよね。周りでも結婚や出産があり、ライフスタイルが変わるし、転職する人も増えて、悩む人が多い時期だと思います。

それのどつぼにはまったのが私なんですよね(笑)。その状態でしばらく考えながら、半年間位は本気で悩みながら働いていました。「今、私は頑張ってる。だけど、この特急列車に乗って、このまま走り続けていいのだろうか?」と。毎日「このままでいいのかな」と思いながら、それでも仕事は仕事だから、きちんと働いていました。でも結局、心と体のバランスが崩れちゃって、体調にあらわれた時期もありましたね。

好きなことで自立したい

――そこから、どういうふうに退職の決断をしたんですか?

竹脇: 旦那の言葉が後押しになり、自分の好きなことで生きて、自立していくことを目指したいなって思いました。じゃあ何をしよう?ってなったときに、一番目指したいなと思った姿が、自分の母親だったんです。母は今も実家がある秋田に住んでいて、現役でフィットネスのインストラクターをしてます。私が生まれる前から、30年間くらいずっとジムで働いてるんです。

当時、「何を仕事にしたい」というよりは「私はどう生きたいんだろう」という、その先のことから考えました。そうしたらロールモデルとして、ずっと体を元気に動かしていて、明るく健康で、きれいで、そうあることで人を元気づけさせている母親の生き方というのが、すごく浮かんできて。そんな生き方をするために、何を仕事にしたらいいんだろうと考えて、ヨガの資格を取ろうと決めたんです。

――単身で海外に渡って資格を取ったそうですね。

竹脇: 2018年2月から4月に海外へ行きました。アメリカのロサンゼルスと、ヨガの発祥地インドでヨガを学びました。海外に向かったのは、本場で修行したかったというのが大きな理由です。箔をつけたかったという気持ちがあって。それまで普通の会社員だった私が、フィットネスを仕事にするということは、キャリアががらりと変わります。なので、他の人とは違う経験が必要だと思ったんです。

加えて、旦那の存在も大きかったですね。一人で海外に行って、旦那みたいに視野が広い人間になりたいと思いました。旦那も応援してくれました。

――安定した会社員を辞めて海外へ旅立つことに、不安や迷いはありませんでしたか?

竹脇: いろんな思いが混ざってました。基本的にはすごく楽しみで、わくわくしたのが8割。でも残りの2割は不安もありました。周りの目も半々で、「頑張れ」という人もいれば「もったいないことしてるな」という感じの人もいましたし。

周囲の目は、実際に海外に行ってる間は気にならなかったです。でもそのあと日本に帰ってきて、フリーのヨガ講師として働こうとするんですけど、全然仕事がなかった。そこでショックを受けましたね。

――帰国後は厳しい状況だったんですね。

竹脇: フリーランスとしてスタジオのオーディションを受けようとしたんですけど、どこも通らなくて。そもそも実務経験が無いと契約できないというところがほとんどだったんです。なので、書類選考すら通らないことばかりでした。

現実を知った感覚でした。世間体とか、いろんなものを置いて海外に行って帰ってきたのに、全然仕事にならなかった。「新しく踏み出そう、やったるぞ!」という気持ちでいたのに、オーディションすら受けられなくてすごく悲しかったです。焦りましたね。

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後編ではチャンネル登録者数150万人のYouTuberになるまでのお話をお届けします。

●竹脇まりなさんのプロフィール
心も身体も健康に“をモットーに自宅で気軽にできるフィットネスやダイエット料理などの動画を発信する“宅トレ“系クリエイター。1989年秋田生まれ。大手金融企業を退社後、ヨガのインストラクターを経て、2018年末にアメリカ移住を機にYouTubeを開始。明るくポジティブなキャラクターも支持を集め、2020年5月にチャンネル登録者100万人を突破した。撮影・編集を担当する彼女と、企画・プロデュースを手がける日系アメリカ人の夫の二人三脚でチャンネルを運営している。

https://www.youtube.com/channel/UCw7HTQv0F4CB9zGRhqosYsg

写真家。1982年東京生まれ。東京造形大学卒業後、新聞社などでのアシスタントを経て2009年よりフリーランス。 コマーシャルフォトグラファーとしての仕事のかたわら、都市を主題とした写真作品の制作を続けている。
1987年、愛知県豊橋市生まれ。東京在住。ライター。2010年から2020年まで毎日新聞記者。関心分野は文芸、映画、大衆音楽、市民社会など。愛読書はボリス・ヴィアンの諸作。趣味は夏フェスと水鳥観察です。