「腐っていた20代後半。全部やめて結婚に逃げようとした」元AV女優・蒼井そらさんが女性たちに伝えたいこと

アダルト業界で一世を風靡したタレントの蒼井そらさん(36)。圧倒的に男性ファンの多い蒼井さんですが、以前から女性たちに届けたいメッセージがあったと話します。蒼井さんの半生を小説化した『夜が明けたら 蒼井そら』(藤原亜姫著)では、現実とフィクションを交えながらも蒼井さんの悩みや葛藤がリアルに書かれています。人生を疾走してきた蒼井さんに、小説を通してミレニアル世代の女性に伝えたい思いを聞きました。
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「そらちゃんって、悩みなんてなかったでしょ」

――『夜が明けたら 蒼井そら』は、蒼井さんの半生をベースにしたフィクションの小説ですが、初めて企画をもらったときの率直な感想を教えてください。

蒼井そらさん(以下、蒼井): 正直、私の人生が本になるなんておもしろいのだろうかと思いました。それでも受けることにした理由は、編集担当の方に、この小説を通して「女性に向けたメッセージを送りたい」と言われたからでした。

私はアダルト業界で長く働いてきました。男性向けの仕事が多い一方、女性にも何かメッセージを伝えたいという気持ちを以前から抱いていました。この本をきっかけに女性にも思いを届けられたらうれしいです。

――「女性へのメッセージ」とは、具体的にどのようなものだったのですか?

蒼井: 20代の頃よく言われていたのは「そらちゃんってずっと人気だったし、悩みなんてなかったでしょ」ということでした。明るく振る舞ってはいましたが、私は私なりに悩んでいました。30歳前の女性って、それぞれの悩みは違えども「腐っている時期」を経験する人は多いと思うんです。

まさに、タイトルの「夜が明けたら」なのですが、この「夜」を経験してきたからこそ、同年代の女性に伝えられるメッセージがあるかもしれない、同じように悩んでいる女性の背中を押すことができるかもしれない、と思いました。

――小説内の主人公ジュンと同じように、蒼井さんご自身も「腐っている時期」を経験されてきたのですね

蒼井: 私の夢は「有名になること」でした。その手段として、AV女優になったのですが、20代で「私、有名になっちゃったわ」と思ってしまったんです。確かにアダルト界では知名度が高かったのですが、それは「井の中の蛙」ということに気づいていませんでした。

20代後半になると仕事の要領をつかみ、少し楽ができることもあると思います。私はその時、仕事を1から10までわかると勘違いしてしまい、日常がすべて同じことの繰り返しに思えてしまいました。

その結果、26歳から28歳の時は、仕事に対して新鮮さを失っていて、すべてが面倒くさくなり、「全部やめたい!」と思っていました。その逃げの場所として「結婚」を考えていたこともありました。振り返ると、仕事も結婚も、前向きに捉えられていませんでした。

 

事実と脚色との間で、攻防戦を繰り返した

――そうだったのですね……。蒼井さんがくすぶっていた時の感情が、主人公の葛藤と重なる面もあると思いますが、小説内で「私はもっと上にいける」というワードが印象的でした。

蒼井: 現実でも同じように思っていました。最初に仕事を始めたときに、上を目指そうと思い、目標に向かって全力で走りました。でも腐っていた時期は、その目標に到達してしまったと思ってしまったんですね。振り返ると、全然到達なんてしていなかったのに。

今私がいる場所には、もう少し上があるんだと気づいた時、「今のままじゃいけない」「今の場所にいてはいけない」と思いました。

腐っていた時って、自分ではその自覚がないんですよね。小説の中では、その心の動きを上手に表現してくれています。

――読み始めたら止まらなくて、あっという間に読んでしまいました。同年代の読者にとっては、PHS(ピッチ)など懐かしく思うものやシーンもありました。蒼井さんがこだわった点を教えてください。

蒼井: 本の内容は、全部きちんと細かく確認しました。あくまでフィクションなので、事実と脚色との間で攻防戦を繰り返しましたね。そこは作家の藤原亜姫さんと「実際はこうなんですけど」と話し合いをしながら、事実に寄せてもらったこともあります。

例えば、ミュージシャンの名前が出てくる箇所があるのですが、「私の時代はこの人ではなくこの人」というように、現実に添った時代背景に書き直してもらいました。

どこが現実で、どこがフィクションかはぼかしているのですが、当時感じていた感情や悩んでいたときの心情などはしっかりと描写されていると感じています。時代背景はもちろん、ディテールやその時の繊細な感情などを含め、全体的にこだわっています。

 

夫には一番読まれなくたない(笑)

――今日、本ができ上がったそうですが、初めて本を手に取られていかがでしたか

蒼井: 思ったより分厚かったので驚きました(笑)。ドラマティックに書いてもらったので、物語としても成立してよかったです。

自分では波乱万丈の人生を歩んできたとは思っていませんでしたが、それなりに悩んで、懸命に人生を生きてきたのだと感じることができました。途中投げ出さず、これまで走ってきたよかったと改めて思いました。

――旦那様も本は読まれたのですか?

蒼井: まだです!一番読まれたくない(笑)。自分の半生が書かれていて、過去の恋愛についても触れています。脚色は入っていますが、とても恥ずかしいです。

小説の中では、夫は実際と同じニックネームの「ノンさん」で登場しています。キラキラした感じで書かれていて、かっこいいセリフが多いんです。王子様のようなことを言っているので、実際に本人が読んだら「そんなこと言ってないよ、俺」と思うのかもしれません(笑)。

 

塞ぎ込んでいる女性にこそ読んでもらいたい

――この本をどういう方に読んでもらいたいと思いますか

蒼井: 私もいっぱい悩んで、それでも前に進んできました。小説では、主人公が試行錯誤する場面がたくさんあります。読んでくださった方の背中を押せたらいいなという思いを込めて書いてもらいました。悩みを抱えている女性をはじめ、自信をなくして塞ぎ込んでいる方に読んでもらいたいです。

――telling,はミレニアル世代の女性が主な読者です。仕事、恋愛、結婚などで悩む妹たちにメッセージをお願いします。

蒼井: 悩んでいる渦中にいるときは、いつこの暗闇から抜け出せるのか不安でしたが、途中で諦めないでよかったと心底思っています。

もし、読者の方で同じように行き詰まりを感じている人がいたら、これまでとは違う目標を見つけることもひとつだと思います。例えば、転職など自分を置く場所を変えることで、今見えている世界とは別の世界が見えてくるかもしれません。

明けない夜はないので、新たな目標を見つけて進んでいってください。

●蒼井そら(あおい・そら)さんのプロフィール
1983年11月生まれ。東京都出身。2002年6月にグラビアデビューし、グラビア、バラエティ、アダルトビデオ、Vシネマなどで幅広く活動。18年1月に結婚し、現在は双子の母。中国でもタレントとして活動中で、中国版Twitter「Weibo」ではフォロワー数が1,900万人を超えている。

『夜が明けたら 蒼井そら』

著者:藤原亜姫

出版社:主婦の友社
価格:1,540円(税込)
※電子版(上巻、下巻、完全版)もあり

同志社大学文学部英文学科卒業。自動車メーカで生産管理、アパレルメーカーで店舗マネジメントを経験後、2015年にライターに転身。現在、週刊誌やウェブメディアなどで取材・執筆中。
写真家。1982年東京生まれ。東京造形大学卒業後、新聞社などでのアシスタントを経て2009年よりフリーランス。 コマーシャルフォトグラファーとしての仕事のかたわら、都市を主題とした写真作品の制作を続けている。