五島列島でリモートワークを体験。東京に戻って私が変わったこと

大企業の業務改革を支えるIT企業で広報を担当、さらに五島を愛しすぎてしまった人たち「GOTOIST」プロジェクトを通して長崎県五島市のPRを支援する佐藤さん。ふとしたきっかけで離島でのリモートワークを体験し、東京に戻って見る風景は、それまでと少し変わっていたという……。広報活動の最前線で活躍する100社100名の担当者が集まる「若担会」のメンバーが、仕事や生活の現場でふと考えた日々の思いをつづります。

「リモートワークの実証実験プロジェクト」として昨年5月、長崎県の五島列島を訪れた。
若手広報担当者の会で、五島市のPRプロジェクトに参画していたご縁で、実際に五島列島に行きたいと思っていた。そんな時に、事務局をしてみないかとお誘いいただき、1週間ほど五島列島に滞在し、働く場所を変えてみたのだ。

東京にあるオフィスでは、ファックスやコピー機、テレビモニターなど、働くことを念頭に置いた機器がそろって仕事環境は最適化されている。一方、五島列島での職場は基本的にホテルやカフェになる。コンビニは近くに1店しかないし、オフィス文具も十分な品揃えとはいえない。満足にあるのはWi-fi環境だけである。

それで仕事に困ったかというと、意外とそうでもなかった。自分の仕事はスマホとWi-fiさえあれば、たいていのことは解決できてしまうからだ。スマホで仕事をしていると、普段の自分がいかに無駄にパワポの資料で飾り立て、エクセルで数字遊びをしていたかに気がつくことができた。

広報の仕事はコミュニケーションを通じて人やサービス、会社をPRすることが主な業務である。会社と製品やサービスの“本当の価値”に気付いてもらうことなのだ。この本当の価値に向けてより多くの時間を使えるようになるためにリモートワークはいいきっかけを与えてくれた。

行きついた先はダム

福江ダム。どこにでもありそうな小さなダム

五島列島は、コバルトブルーの海に囲まれ、美味しい食材にあふれている。どこの海に行ってもプライベートビーチ感覚で、自然を独り占めしているかのような感覚に陥る。リゾート地としては最高だと思う。新婚旅行にもオススメできる。

そのなかでも私のお気に入りは福江川に建設された福江ダムだ。五島列島のダムが人気かというと、まったくそんなことはない。観光地化されていない山道を15分ほど車で走ると、突然道が開けて、ハッとするような巨大な人工物=ダムが目に飛び込んでくる。

ダムが完成するまでの技術や工程、時間を想像すると、物理的・心理的にも大きな存在であり、自分がいま抱えている課題など小さく見えてしまう。ダムにはこれといって何もないのだが、景色は最高だ。ヒヤッと冷たいので夏は涼しい。そんな人工物と自然の狭間の「非日常感」を味わえる空間に私はただただ感動した。

自分が普段、いかに気を張り詰めて生きていたかを実感

五島列島から東京に帰って、恵比寿のスカイウォークを歩く東京の女子を見て真っ先に感じたのは、「東京女子はヒールの高い靴を履いて、きちんとメイクもして、頑張りすぎなんじゃないか」ということ。メイクや靴に費やす時間とお金の分だけ、私は何かを得ることができているだろうかと不安になった。小さな離島に行ってみて、自分が普段、いかに気を張り詰めて生きていたかを実感すると同時に、心のデトックスをするための「非日常の空間と時間」が大事だと心に刻んだのだった。

普段、自分が身を置く場所から離れて人と話すと、同じ仕事の話であっても新しい発見が多いことに気づく。同じ業界だと「あのシステムは古いから、まずはここを解決しないと…」なんて“マイナス”から入る話が、「これも面白そう」とポジティブワードに変換される。同じ東京から五島列島へ行った人と、こんなにも楽しく仕事の話ができるとは思っていなかった。

自分にとってリラックスできる場所で、良質なアナログ時間を過ごすことで、仕事の原動力となる。新しいアイデアやイノベーションは会議室では生まれない。心の余裕から生まれるのだと思う。

電車通勤でコロナの感染に怯えながら、本当に良い働き方ができるだろうか。
東京へ帰っても、心に余裕のある本当のキラキラした女子になりたいと思った旅だった。

1986年に立ち上がり、30年以上の歴史を持ち、広報活動の最前線で活躍する100社100名の担当者が集まる「広報担当者による、広報担当者のための会」です。広報パーソンとしてのスキルアップ、活きた情報の収集、会員相互間およびマスコミ関係者との人的ネットワークの形成を目的に、日々切磋琢磨しています。
若手広報担当者のつぶやき