熱烈鑑賞Netflix 02

超問題作「メシア」が暴き出す世界の酷い真実をイッキ見【熱烈鑑賞Netflix】

世界最大の動画配信サービス、Netflix。いつでもどこでも好きなときに好きなだけ見られる、毎日の生活に欠かせないサービスになりつつあります。そこで、自他共に認めるNetflix大好きライターが膨大な作品のなかから今すぐみるべき、ドラマ、映画、リアリティーショーを厳選。今回は、超問題作「メシア」を取り上げます。一見とっつきにくそうに見えてイッキ見必至!その理由とは?

●熱烈鑑賞Netflix 02

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救世主なのか、詐欺師なのか

2020年元旦にリリースされたNetflixオリジナルドラマ「メシア」が凄い。
Netflix年明け第一弾配信ドラマが、超問題作なんである。
「メシア(救済者)と名乗る者が、いま現れたら世界の人々はどう反応するのか?」というIFを起点にしたサスペンスドラマだ。

現在の世界的な課題である「パレスチナ問題」を扱って、政治と宗教と人種を描いていながら、緊張感あふれるエンタテインメント作品にしあげている。

宗教的背景や中東に関する知識がない自分にはむずかしくてわかりにくいドラマなのではないかと思っていたが、だいじょうぶだった。
派手なところは派手。
そして、「預言の男アル・マスィーフ(メディ・デビ)は何者なのか」という中心の謎が魅力的だ。
救世主なのか、詐欺師なのか、テロリストか、へんなヤツなのか、その正体をめぐって、二転三転する。
みんなで集まって、あーだこーだ言いながら観ると盛り上がるヤツである。

 

圧倒的な冒頭5分

救世主か詐欺師かテロリストか? 預言者アル・マスィーフ(マハディ・ザハビ)/Netflixオリジナルシリーズ「メシア」独占配信中

シリアの首都ダマスカスが、ISIL(イスラーム過激派組織)に包囲される。
ISIL戦車部隊が砲撃準備を終えたちょうどそのとき。
「我が声を聞け」
ダマスカスで、長髪の男が民衆に呼びかける。
「皆を生かそうと、神が敵を撃退してくれよう」
預言である。
砲撃開始。逃げ惑う人々。
そのなかで、ひとり動かずに「神の声」を語る男。
そして砂嵐。
“聖書に描かれるような”43日間の砂嵐で、ISILが撤退する。
災害ドキュメンタリーかと思わせる迫真の映像を最初にぶちかまして、救世主の出現を見せる。
そしてタイトルがドンと出る。
ここまでたったの5分。

 

CIAは教会みたいなものでね

エヴァ・ゲラー捜査官(ミシェル・モナハン) マスィーフの正体を暴くために奔走するCIA捜査官/Netflixオリジナルシリーズ「メシア」独占配信中

この事態を追う中心人物が、CIA捜査官のエヴァ・ゲラー。
演じるのはミシェル・モナハン。
「ミッション:インポッシブル3」でトム・クルーズ演じるイーサン・ハントの妻を、ドラマ「トゥルー・ディテクティブ」でハート刑事(ウディ・ハレルソン)の妻を演じた。今回は、夫を失ってしまっている役だ。
「真実はグレーにみえるだろうけど、そうじゃない」
ゲラー捜査官は、そう断言し、
「CIAは教会みたいなものでね、その教義に従って生きるの」
とも言う。
預言の男マスィーフが2000人の民衆を引き連れてシリア国境を目指して移動しはじめると、武装化を懸念。
彼の正体を暴くために、調査解析し、追跡する。
この「CIA捜査官ゲラーの真実VS預言者の奇跡」をメインの軸にして(なので、話の流れが追いやすい)、さまざまな人や国の運命が激動する。

 

インスタフォロワー数を爆伸びさせるも?

ジブリル(サイイド・エル・アラミ) マスィーフに心酔する人たちと一緒にシリア国境へ向かう少年/Netflixオリジナルシリーズ「メシア」独占配信中

マスィーフについていく民衆のなかにいるふたりの少年ジブリル(サイイド・エル・アラミ)とサミルも、彼によって運命を動かされる。
ジブリルは、「君には光が宿る。だが神の試練が待っている」と言われ、マスィーフに心酔。
サミルは、また別の道を歩むことになる。
最初は、弟子的な位置にいるジブリルだけど、話数が進むにつれて、存在感がどんどん増していく。
(ネタバレしたくないので詳しく書けないのがもどかしいが)シーズン2は「マスィーフVSジブリル」な展開になるだろうことを予感させる怒涛の後半だ。

レベッカ・イゲロ(ステファニア・ラヴィー・オーウェン) テキサスの牧師 (ジョン・オーティス)の娘/Netflixオリジナルシリーズ「メシア」独占配信中
アヴィラム(トメル・シスレー) イスラエルの諜報員、尋問担当/Netflixオリジナルシリーズ「メシア」独占配信中

テキサス州の田舎町で竜巻から救われた娘レベッカは、インスタに彼の写真をあげてフォロワー数を爆伸びさせるも、あんなことやこんなことに巻き込まれる。
「救世主あらわる!」に気持ちがアゲアゲになって暴走する牧師のお父さん。
マスィーフのせいで停職の憂き目にあうイスラエルの諜報員アヴィラム。
さらには、アメリカ大統領も巻き込み、政府高官(悪い政治家を演るとピカイチのマイケル・オニール!)のゲスい陰謀も炸裂する。

そして、観ているこちらも「おまえはどう判断する?」と問われることになる。
奇跡を起すマスィーフ。魅力的な語り。メシアでないとしても、世界を善き方向に導くのではないかと思わせるシーンがでてくる。
一方で、彼の怪しい過去や行動を暴きだそうとするCIAやマスコミ。
どちらが真実なのか。
みごとに、揺さぶられる。
「真実はグレーにみえるだろうけど、そうじゃない」
それは、本当なのだろうか。

 

字幕併用をオススメ

さまざまな宗教観、国家観、人種、家族、文化、言語がぶつかりあうドラマだ(ちなみに、吹き替えだと英語以外が日本語化されてないところもあるので、字幕併用をオススメ)。
日本のドラマを観ると日本人ばかり出ている。日本文化がいかに「均質性の高い(ホモ・ジーニアス)な文化」であることか。
「メシア」を観ると、世界が「複合的(ヘテロ・ジーニアス)な社会」であることを思い知らされる。

シーズン1は2020年制作。1話は45分前後で全10話。
Netflixオリジナルドラマ。
1話、2話、3話とぐいぐい面白さが尻上がりにあがってきて、あとはイッキ観コースだ。

アル・マスィーフと信者たち/Netflixオリジナルシリーズ「メシア」独占配信中

「メシア」
原作・制作:マイケル・ペトローニ
出演:ミシェル・モナハン、メディ・デビ、ジョン・オーティス、トメル・シスレー、メリンダ・ペイジ・ハミルトン、ステファニア・オーウェン、サイード・エル・アラミ、ジェーン・アダムス、ウィル・トラヴァル、ファレス・ランドゥールシ
ジャンル;政治をテーマにしたTV番組・ドラマ TVサスペンス、TVヒューマンドラマ、アメリカ/TV番組・ドラマ

ゲーム作家。代表作「ぷよぷよ」「BAROQUE」「はぁって言うゲーム」「記憶交換ノ儀式」等。デジタルハリウッド大学教授。池袋コミュニティ・カレッジ「表現道場」の道場主。
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