女子アナの立ち位置。

念願のミステリーハンターに挑戦!「ダメ元で上司に掛け合って、熱いアピール文を提出しました(笑)」

ミレニアル世代ど真ん中のアナウンサー・TBS古谷有美さんによる、テレビとはひと味違う本音トーク。今回は、古谷さんが学生時代から出演を夢見ていたある番組についに……!?

●女子アナの立ち位置。

ダメ元で立候補した、小さなころからの夢

2020年、ついに、念願のお仕事をさせていただきました。毎週土曜日21時からでおなじみの『日立 世界ふしぎ発見!』です!

幼いころからテレビで見るたび、世界中を旅する方々が本当にかっこよく思えて。家族にも友達にも「大きくなったら、ミステリーハンターになりたい!」と言っていました。大学時代にミスコンに出たときも、プロフィールの「将来の夢」には「ミステリーハンター」と書いていたりして。

そんなお仕事のチャンスをいただけたのは、ダメ元の立候補がきっかけでした。

昨年10月の番組改変期。私はずっと担当していた『ビビット』が終了し、入社以来はじめて帯番組を持たない状態になりました。毎日の出演がなくなってさみしくはあるけれど、それは裏を返せば、これまで難しかった長期ロケなどにも行けるということ。今後のお仕事について考えているうちに「そういえば、私はミステリーハンターがやりたかったんだ!」と、原点回帰したんです。

情熱のほとばしるアピール文が、功を奏した!?

とはいえ、女子アナがミステリーハンターをした前例はほとんどないし、やりたいと言ってできるお仕事ではありません。だけど、ここであきらめるのはどうしてももったいない。上司との面談中、最後の最後に「ほかに何かある?」と聞いていただいたとき、意を決して「ダメ元で言うのですが……いましか行けないかもしれないので、ミステリーハンターをやりたいんです!」と切り出しました。

そのあとすぐ、上司が制作サイドの方に掛け合ってくださって。「いままでの旅行歴や興味があるジャンルなどを、箇条書きでいいので教えてください」とご連絡をいただいたのは、面談から2週間も経たないうちのことでした。

でも、いざパソコンに向かって、その思いのたけをまとめようとすると。愛があふれてとまらないんです(笑)。

「大学2年のときにはじめてメキシコに行って以来、フィリピン、カンボジア、タイ、モロッコ、インド……延べ30か国は旅してきました!」「英語もしゃべれます」「汚い、怖い、きつい、危険……Kとつくものも余裕です!」「どんなところでも生きていける自信があります!」

とても箇条書きにはまとまらず、長~い自己PRをお送りして。そんな熱っぽいアピールをあたたかく受け入れてくださったあとは、とんとん拍子。2019年の年末には、10日間の南イタリアロケが決まりました。

プレッシャーをほぐしてくれた、ディレクターさんの言葉

ずっと憧れてきたふしぎ発見。夢が叶ってうれしい想いと「失敗できないぞ」というプレッシャーは、ないまぜです。TBSアナウンサーとして出演させていただくからには、情報をしっかり伝えるために“きちんと”しなくては、という思いがありました。

それに、帯番組がなくなってスケジュールを調整できたから行く……なんて言うと、なんだか“ご褒美ロケ”のようにも見えてしまうかもしれません。だけど、私からしたらまったくそんなことはなく。むしろ、どんな仕事よりも緊張する現場だったんです。
だから、ロケ地を訪れたことのある方に話を聞いたり、資料を読み込んだり。イタリア語をちょっと勉強したりもして、地道な準備を進めていました。

でも、ロケの前に打ち合わせをしたときのこと。
ディレクターさんが「古谷さんはこれまで、いろんな国に行っていろんなものを見てきた方ですよね。せっかくそういう旅好きの方が行くんだから、その経験を活かしてほしい」と言ってくださったんです。

たとえば「このタイルの模様は、あの国の織物に似ていますね」とか「あの国で食べたスープの味にかなり近いです、地理的にはこんなに離れているのに!」とか、そういうコメント。自分の記憶や感性を呼び起こして、私だから話せることを大切にしてほしいと言っていただき、心がとても軽くなりました。

体調や心持ちはきちんと整えるし、必要な下調べは惜しまないけれど、あとは現地での出たとこ勝負。はじめて見るもののリアルな感想や、旅を数日続けたころに感じる変化などを、いきいきと。頭でっかちになりすぎないよう、ロケを楽しみたいと思えたんです。

出国する前夜は、めずらしくあまり眠れず……身体の中の細胞が、勝手にむずむず、そわそわして。武者震いともすこし違うような、不思議な感覚を味わいました。

“足るを知る”感覚にあふれた、豊かなプーリア

そんないきさつでお邪魔したのは、南イタリアの田園地方・プーリア。私の生まれ育った北海道にも似た、のどかな土地です。出発前の緊張は、人や景色とのすばらしい出会いで、少しずつほぐれていったように思います。

東京のように何でもそろう便利さはないけれど、ものがないことや不便であることって、ある意味でとても豊か。普段せわしなく過ごしていると、そういう感覚って、つい見失いがちです。プーリアに暮らす方々とふれあううちに、そんな“ゆるくてあたたかい豊かさ”を教えてもらいました。故郷の北海道のことを、これからもっと大切にしていきたいなぁとも思えたりして。

みなさんにも番組を通じて、プーリアの魅力が伝わりますように。美しい建物やすばらしい仕事、おいしい食べ物のうしろに、とてもやさしい時間が流れています。

2月15日のオンエア、楽しみにしていてくださいね! 月末に更新するコラムでは、ロケの裏話などもお届けします。

1988年3月23日生まれ。北海道出身。上智大学卒業後、2011年にTBSテレビ入社。報道や情報など多岐にわたる番組に出演中。特技は絵を描くことと、子どもと仲良くなること。両親の遺伝子からかビールとファッションをこよなく愛す。みんみん画伯として、イラストレーターとしての活動も行う。
ライター・編集者 1987年の早生まれ。雑誌『走るひと』副編集長など。パーソナルなインタビューが得意。紙やWeb、媒体やクライアントワークを問わず、取材記事やコピーを執筆しています。趣味はバカンス。好きなバンドはBUMP OF CHICKENです。
フォトグラファー。北海道中標津出身。自身の作品を制作しながら映画スチール、雑誌、書籍、ブランドルックブック、オウンドメディア、広告など幅広く活動中。