【古谷有美】月に一度。この時間を大切にしています
●女子アナの立ち位置。
#月1で何かを観るルール
社会人になって2、3年目くらいからでしょうか。「月に一度、何かを観に行く」というマイルールを設けています(上のハッシュタグですこしずつインスタに記録中)。音楽のライブでも、演劇でも、生身の人間が表現している姿をできるかぎり生で見る。人のパワーを肌で感じて、誰かがつくりあげたものを、自分の目で見て、耳で聞いて、触れる時間をつくろうと思って始めました。
アクティブなお芝居やパフォーマンスを観て、「動」の空気感の中で気持ちをグラグラと揺さぶられたり、感情が動かされる瞬間も好きですが、最近は「静」の空気感の中に自分の身を置くのが気分。都内だけではなく、わざわざ遠方の美術館に出かけることもあります。少し前に行った箱根のポーラ美術館は、展示はもちろん、建築も本当に素敵でした。
ルールと言っても、こうして芸術に触れたりする時間は、もはや月に一度の自分へのご褒美のような時間。日常のリセットタイムになっています。
「仕事だけが自分のすべて」になりたくなかった
このマイルールをつくったのは、どこかで「仕事だけの自分になりたくないな」と思っていたからだと思います。会社の先輩に「職場以外でも知り合いをたくさん作ったほうがいいよ」と言われたことがとても印象に残っていて。それがどのくらい深い関係かということよりも、職場以外で出会った人たちとも同じ空気を吸ってみるということが大事なのかなと思いました。
これはどんな職場にも言えることかもしれませんが、テレビの世界だって、広いようでそうではなかったりします。この世界だけが自分のすべてになってしまうことを避けたかったのは、自分自身のためでもあるし、たくさんの人たちに物事を伝えるうえで、フラットにいろんな視点を持てる人間でいたかったから。そんなことを思って、仕事以外で出会う人との会話や、そのような場所を大事にするようになりました。
理解しようとしなくたっていい。自分の「好き」をストックしていく
先日、東京オペラシティアートギャラリーで、ジュリアン・オピー展(現在は終了)を観ました。そのとき一緒に行った友達に「どうして美術館で展示を観るのが好きなの?」と聞かれて、ふと考えたんです。私の場合は、作品を観ながら「この絵、なんだか気になるな」「この作品はいまいち響かないな」「あ、これとても好きだな。さっきの作品とこの作品、どっちも好きだけど、ふたつに共通しているものって何だろう?」と、そんなことをやんわり考える。すると、自分が好きなものがすこしずつ見えてくるんですよね。
私、この色合いが好きなんだ、とか、この時代背景が好きなんだ、とか。逆にまったく引っかからないものだってもちろんある。今はまだ興味が持てなかったり、純粋に好きじゃない色彩だったり。作品の価値を理解することも面白みのひとつだと思いますが、それ以上に自分の「好き」をちょっとずつストックしていく作業が楽しいんだと思います。
それってきっと、ライブに足を運んだり、ストリーミングでいろんなアーティストの曲を聴いて探したりすることと似ているかもしれません。聴いてみて、あんまり好みじゃないなと思うものもあれば、すこし聴いてどハマりしてしまったり。美術館での時間も、そのような感覚で楽しんでいます。
美術館に行く「ついでのあれこれ」が欠かせない
美術館に行くことが好きな理由として、もうひとつ。普段行けないところに行けちゃう、ということも大きいです。「せっかくここに来たから周りを歩いてみようかな」「このお店にも入ってみようかな」と、美術館を中心にその街を知っていくことができる。遠いところはもちろん、都内にも本当にいろんなところに美術館があるので、そういった楽しみ方もあるのは良いですよね。
箱根のポーラ美術館に行った話をしましたが、生まれて初めてロマンスカーに乗れたことがとっても嬉しくて。チケットの買い方や乗り方を一生懸命調べたりするのも楽しかったんです。良い雰囲気のお宿に泊まることもできたり、美術館に「行くついで」に、たくさんの嬉しいことがありました。
ささいなことだけれど、今までできなかったことができるようになる。たとえばロマンスカーの切符を買えるようになったり、箱根湯本駅の近くにはお金を下ろせるところがないから、現金は多めに持っていったほうがいいということを学んだり(笑)。改めて、自分が知らないことってまだまだたくさんあるんだな、という発見の連続で、とても素敵な時間でした。