メガネ姿でティーカップを持つTBSアナウンサーの古谷有美さん
女子アナの立ち位置。

【古谷有美】生活が変わって、気がついた「手放すこと」の意味

ミレニアル世代ど真ん中のアナウンサー、TBS古谷有美さん。またの名を「みんみん画伯」。インスタグラムに投稿される、繊細でスタイリッシュなイラストが人気です。テレビとはひと味違う、本音トーク。朝の番組を卒業し、新生活、スタートしてます。

●女子アナの立ち位置。

自分が「好きだったこと」を、思い出している日々です

朝の番組の仕事が終わって変わったのは、夜の時間の過ごし方。ご飯の時間をゆっくりと楽しめるようになりました。朝の番組をやっていた頃は、出かけても20時くらいになるとそわそわし始めていましたし、お酒もあまり飲まないようにしていました。

とはいえ、朝型の生活に慣れてしまっているので、日付をまたいで飲みに行くということがしたいわけでもなくて。ちょっと遅くに食事を終えて、家に帰ってのんびりするという「普通のこと」が今はとても楽しくて幸せなんです。「翌朝」という未来をつねに意識しながら行動していたから、目の前の時間に集中できることが、ただただ嬉しい。前よりも1杯多く飲んじゃうとか、やっていることは本当に地味なんですけどね(笑)。

友達と気兼ねなくご飯に行くとか、そのまま思い立ってカラオケに行くとか、あるいはひとりでカフェで絵を描きながら過ごすとか。こういう時間がとても好きだったなぁと、自分がもともと好きだったことや大切にしてきたものを、あらためて確認している日々です。

メガネ姿でティーカップを持つTBSアナウンサーの古谷有美さん

ひとつの時間を終えて「もとの自分に戻る」と思ったら、そうじゃなかった

すこし前のコラムで「新陳代謝の時期だから、変わらないものも持ちつつ、どんどん変わって成長していきたい」という話をしましたが、それが今もまだ続いていて。今、いろんなことがとてもいいタイミングで変わってきているなと思っています。

変化を怖がらないで済むように“新しい習慣”はじめました

生活が変わって、自分にとって大切だったものをゆっくり思い出しながら、最初は、一周まわって自分が元いた場所に戻ってきたんだと思っていたんです。元々の自分があって、仕事の変化があって、人との出会いや別れがあって、いろんな気持ちを経験して。でもやっぱりわたしはここが好きだった、と元の自分に戻る作業をしたんだと思っていたら、今自分がいるのは全然違う場所だということに気がつきました。

たとえるなら、木の年輪のようなものでしょうか。自分はここにいると思っていた輪の、もうひとつ外側にある輪の上に立っていたという感覚です。そこから「過去の自分」を見つめて、自分が好きだったもの、好きだった人たちを思い出して。でも当時と同じ熱量でいいなと思うのではなく、どこか懐かしむような気持ち。目の前を見て一生懸命歩いていたら、ぐるぐるとより大きな輪を描くみたいにして、すこしずつ自分の世界が広がっていたことがわかりました。

手放して、「持たない」ことから始まっていくこと

ひとつの環境が終わってしまったり、人との関係が終わるときって、もちろん見方によっては「何かを失った」ように見えるんだけれど、そうではなかったりもする。自分の元から離れていってしまうものではなく、じつは「おいきなさい」という気持ちで、自分の手から放していくものなのかもしれないなと思うようになりました。すこしずつ外側の輪の上を歩いていきながら「じゃあね、またいつか」と、内側の線の上にいるものや人たち、そして過去の自分に声をかけるような感覚です。

そういう思いをリリースすることによって、たぶん、すごく身軽になれる。そして新しい目的地にふわふわと飛んでいけるような気がして。荷物をすべて置いてきてしまって、こんな軽装備で行って大丈夫かな?と不安になってしまいそうだけれど、大丈夫!と。軽装備じゃないと行けない場所がある、と自分に言い聞かせて。道の途中で「あなたこんな軽装備でここまで来たの?これ、あったかいから着なさい!」って、誰かが見つけてくれるかもしれません(笑)。

眼鏡姿で笑顔を見せるTBSアナウンサーの古谷有美さん

手放すこと、そして「持たない」勇気を持つことから始まっていくことがたくさんあると思っています。生活リズムや環境が変わり、大切なものとまたじっくり向き合う時間ができたからこそ、気がつくことができました。そんな今の状況が、自分にとって心地いい。そして、すこしずつ大きな輪を増やしていきながら進んでいけるこの先が、とても楽しみなんです。

1988年3月23日生まれ。北海道出身。上智大学卒業後、2011年にTBSテレビ入社。報道や情報など多岐にわたる番組に出演中。特技は絵を描くことと、子どもと仲良くなること。両親の遺伝子からかビールとファッションをこよなく愛す。みんみん画伯として、イラストレーターとしての活動も行う。
編集者・ライター。東京生まれ、魚座、花と川が好き。思春期がまだ終わっていません。
フォトグラファー。北海道中標津出身。自身の作品を制作しながら映画スチール、雑誌、書籍、ブランドルックブック、オウンドメディア、広告など幅広く活動中。