いろんな読み方を教えてくれる。おすすめ“読書本”7冊+α
●ヒマでヒマでしかたないあなたへ
令和初日のこのコラムではありますが、今回は、「10連休、ヒマでヒマで仕方がないあなたへ」というテーマで選書してくださいと言われた。
せっかくの連休に、本を読もうと思ってくださる(今となっては)稀有な皆さんのおかげで、私ら出版業界の人間は生きております。ありがとうございます。ありがとうございます。みなさんの読書が、私たちの血となり肉となり、家賃や食費となっています。
そんな、休みの日に家で本を読んでもいいや、って思ってくれる皆さんのために、今回は特別編として「本を読むこと」について書かれた本を選びました。
私にとって、書籍とは「思考のための装置」で、読書とは「思考のための手段」です。
だから、本を読んでいる時は、その本から連想したこと、考えたこと、ひらめいたことをずっと考えています。私にとって「良い本」とは、いっぱい思考させてくれた本で、だから私にとって「良い本」ほど、読み終えるのに時間がかかるし、中身を覚えていないことが多い。
だけど、当然、読書の意義や効用って、人によって全然違うと思う。ここで紹介するのは、「その人なりの本の読み方」を教えてくれる本ばかりです。自分にぴったりくる本の読み方があれば、これからの読書がもっと楽しくなると思います。
というわけで、じゃん!(効果音入れてください)
本当はこの2倍くらい紹介したかったんだけど、いったん、ここまでで涙を飲む。では、紹介、いきます!
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●作家だからこその「こう読んでほしい」の理想がてんこ盛り
『本の読み方 スロー・リーディングの実践』(平野啓一郎/PHP新書)
稀代の作家・平野啓一郎さんが、「作家はこうやって書いているから、こういうところを意識して読むと、読書はもっと楽しくなるよ」ってことを、もうこれでもかというくらい、丁寧に解説してくれる本。
第三部などは、古今の名著を平野さんの副音声つきで読んでいる感覚で、すっごく贅沢。平野さんの「作家は死ぬほど考え抜いて書いているから、これくらい丁寧にスロー・リーディングしてもらいたい!」の迫力を感じる1冊です。(ただし世の中の本がみな、スロー・リーディングに耐えられるくらい練られて書かれているかは、考えちゃうところだけど)
私は自分が書籍を書く立場になってはじめて、人の書く本に関しても「ああ、だからこんなふうに書かれているんだ」と気づくようになった人間です。なので、「書き手の思考をトレースしてから読むと理解が深まる」というのは、実感的によくわかりました。
豊かな誤読も、また読書。
※この本、現在、電子書籍以外は入手困難です。ただ、今年、改訂版なのか新装版なのかわかりませんが、同じタイトルの本が出るっぽく、amazonで予約開始しています。
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●本と出会うことは人と出会うことである
『読書の価値』(森博嗣/NHK出版新書)
(私が森博嗣さんを大好きであることは差し引いても)、3ページに1回はドッグイヤーするほど、金言の数々が散らばる本。
なかでも、「本は人から勧められて読むものではない」「本を選ぶこと自体も読書体験である」「読書と同じ時間だけ本を選ぶ時間にかけるとよい」のあたりに深く共感してしまうと、このコラムの存在意義があやうい感じなんだけど、でも実は私はこの思想に共感しているから、(今回は違うけど)普段は「書評コラムだけど、書籍の紹介をしない」という立場を取っていたりします。
また、「ベストセラ避けるべき理由」や、「雑誌の新刊はなんでも面白い」「なぜ作家はAIにとってかわられないか」などといった考察も納得です。
個人的には書籍と出版業界の今後について書かれた部分がドキドキで、でも森さんの出版業界予想は20年前からずっと当たり続けているので、近い将来の書籍の形はこうなるんだろうな、と、思ってます。
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●ネットで文章を読むことと本を読むことは違う
『読書する人だけがたどり着ける場所』(齋藤孝/SB新書)
平野さんも森さんも齋藤さんも書き手なので、やはり書き手から見える世界の考察部分が、得難い情報かな、と感じます。
三者、真逆のことを書いている部分もあるし、全く同じことを主張している部分もあるので、ここまでの3人の本を一気読みするのも楽しいかも。
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●本は、読む人にもすすめる人にも薬になる
『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』(花田菜々子/河出書房新社)
この本は、一風変わった読書体験を綴ったもの。タイトルのままなんだけれど、著者の花田さんが、出会い系サイトで出会ったいろんな人の話を聞いて、その人たちに書籍をおすすめしてきた日々について書いた、ノンフィクション。
面白いのは、薬を手渡すように、人に本をおすすめしてきた日々を経た花田さん自身が、1年かけて癒されていること。この本を読んで、京都のホホホ座(旧ガケ書房)まで行ってきました。
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●読んでもすぐ忘れちゃう、が嫌な人に
『「読む力」と「地頭力」がいっきに身につく 東大読書』(西岡壱誠/東洋経済新報社)
いま、売れに売れている読書術の本。とくに、ビジネス書、実用書、啓発書などを自分の血肉にしたい、「読書を役に立てよう」と思っている人には、ここまで手取り足取りわかりやすい本はないかも。
実は、私が仕事の資料として本を読む時の読書法がこの方法にわりと近いのだけど、その効用が具体的に体系だって説明されていて、とても勉強になりました。
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●この本に対して何を語ってもドツボだと思わされる
『読書という荒野』(見城徹/幻冬舎)
見城さんの本を読んでいつも頭に浮かぶのは、地獄の門番のイメージ。出版業界の人間は死んだら多分、見城さんの前に突き出されて、どの地獄に行くか決められるんじゃないかと思ってる。(1ミリも見込みがないと審判されれば天国に行かされる気がする)
本を作るのはもちろん、読むのも、著者や編集さんと刺し違えて返り血をビシャバシャ浴びながら全うせねばアカンのだと思わされるので、そういうメンタルになりたいときにオススメです。あと、どんなダイエット本より、身体を絞らなくては、と思わされる。
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●本の読み方って自由だよね
『裏・読書(ハフポストブックス)』(手塚マキ/ディスカヴァー・トゥエンティワン)
最後に紹介するのは、先月発売したばかりの『裏・読書』。
著者さんは、歌舞伎町でホストクラブや美容院などを経営される方。「本をぐぐっと自分に寄せて読むのが読書である」ということを教えてくれる本です。
ここで紹介されている本は1冊をのぞいて全部読んだことがあったけれど、私自身が感じた感想と重なる部分がほぼ一箇所もなくて、そのことが面白かった。
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●番外編・これも紹介したかった!!!
『僕らが毎日やっている最強の読み方―新聞・雑誌・ネット・書籍から「知識と教養」を身につける70の極意』(池上彰、佐藤優/東洋経済新報社)
書籍に限らず、新聞、雑誌、ウェブから、どのように情報収集するのが効果的かを知れる一冊。これ読んで私は、「新聞をとる人」になってしまいました。
『敗者の読書術―圧倒的な力の差をくつがえす発想法』(高橋弘樹/主婦の友社)
昨年の私の読書体験No. 1だった、『1秒でつかむ』の著者、テレビ東京の高橋弘樹さんの読書法。企画を立てる人、斬新な発想が求められる人に推したい「戦略としての読書」を知る本。
『NO BOOK NO LIFE -Editor's Selection- 編集者22人が本気で選んだ166冊の本』(雷鳥社)
いい意味でもそうじゃない意味でも、「書籍って書籍を好きすぎる人が作ってるんだなあ」と思わされる一冊。自分だったら何を選書するだろうという目線で読むと面白い。私自身はここに載ってる本、ほぼ読んだことなかったです。
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みなさんの連休が、本によって贅沢なものになりますように。
ではまた、来週水曜日に!
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