ヒマでヒマでしかたがないあなたへ

【Dr.尾池の奇妙な考察】暗闇で探す自分にとっての「本来の現実」。ランプ片手に「夜登山」のススメ

化粧品の開発で、それまで縁のなかった「女性の美」について考えるようになった、工学博士であり生粋の理系男子である“尾池博士”。10連休にオススメのレジャーは?と聞いたところ、博士の答えは「夜登山」。その理由は「真の現実逃避だから」だそうです。

●ヒマでヒマでしかたがないあなたへ

日常こそ自分からの現実逃避だ

ゴールデンウィークの旅行。しかしそれは単なる現実逃避に過ぎず、連休が終われば現実が待っている。そんなあきらめに似た捉え方をすることがあります。

しかし私は時々、逆なのではないかと感じることがあります。それは現実からの逃避ではなく、現実への逃避なのではないか。

家族と食べ、友人と語らい、自然に遊ぶ。
それが私たちの本来の姿=現実のはずです。しかし生活を守るために現実に目をつむり、普段は仕事に甘んじているだけなのではないかと。そのため、1年に数度、思いっきり本来の現実へ逃避する。それが大型連休ではないでしょうか。

だから大型連休は、もっともっと自分の「本来の現実」に戻るべきだと思います。ですから「本来の現実」を見つけて再確認する過ごし方を考えてみてはいかがでしょうか。

「本来の現実=自分」を見つける方法としてすぐ旅に出る人がいますが、それは危険だと思います。旅は誘惑が多すぎるからです。少なくとも私は旅で自分を見つけた人に会ったことがありません。旅は自分以外の情報が多すぎるのです。

不純物を排除する漆黒の闇

では、どうすれば自分を見つけることができるのか。自分以外の情報を徹底的にシャットアウトすべきです。化学の実験などで物質を抽出する場合、当たり前ですが、不純物を徹底的に排除します。その物質の純度を上げることによって抽出するわけです。人間も同じように、自分以外の情報をシャットアウトする以外に、自分の純度を高める方法はありません。

自分以外の情報をシャットアウトする方法は二つです。
1:光をシャットアウトする。
2:音をシャットアウトする。

この二つを満たすことができるという意味で、ナイトキャンプをおすすめします。

光をシャットアウトして聴覚を研ぎ澄ませる

光をシャットアウトするには自然の中の暗闇が最適です。私の趣味の一つが夜登山ですが、特に新月の夜、暗くなってから山に入ります。そこはまさに漆黒の闇。自分が目を開けているのか閉じているのか分からないほどの漆黒です。ランプをつければさっと明るくなりますが、消すとまた漆黒です。

そんな漆黒の闇の中では感覚が研ぎ澄まされます。地球上で実感できる存在は自分だけ。しばらくすると遠くのザザザ……と鳴る風の音を感じるようになります。それはやがて山肌をなでるように自分に近づいてきます。

そうか、これが猫バスか、と分かるようになると、遠くを歩く動物の足音も感じるようになり、自分以外の存在に気がつきます。もちろん夜の山に入るには危険が伴います。初心者は21時くらいまで営業しているオートデイキャンプ場の安全なルートでのナイトトレッキングから始めるのが、手っ取り早いかもしれません。

音をシャットアウトして幻聴に耳を傾ける

聴覚を研ぎ澄ませると、一つ面白い体験ができます。幻聴です。これはベッドの中でも体験できます。

幻聴は心身の衰弱や疾患と関連付けられることが多いですが、正常な状態でも起こる現象です。もっとも分かりやすいのは夢かもしれません。

私の場合はやはり夜登山の最中、漆黒の闇に浸っていると、遠くのパトカーのサイレンの音が聞こえてきました。しだいに遠のいて聞こえなくなりましたが、じっとしているとまた聞こえてきました。ああ、またか、と思ったのですが、なんとその音は、聞こうと思えば聞こえ、気が散ると聞こえなくなるような奇妙なサイレンでした。

これは面白いと思って、自分の名前を聞いてみたくなりました。無音の漆黒の闇の中で一度「オイケ」と自分でつぶやいた後、しばらく頭の中で繰り返すと、ふとした拍子に「オイケ」と聞こえました。まさか脳で感じているものがこれほどあいまいなものだったとは。

そして直感しました。なんだ、世に言う「天の声」とはこのことか、と。
種を明かせば何でもない、幻聴。夢と変わりません。普段のストレスも、本来はあいまいなもので、私が重く受け取りすぎているだけなのかもしれない。そんな気分にもなりました。

今回のまとめ

自分以外の情報をシャットアウトして残ったものは、自分のあいまいすぎる感覚でした。「本来の現実に戻るべき」だと思ったものの、外の世界なんてどうにでも受け取れるし、外の世界で受け取られている自分の姿だって、結局あいまいなものなのかもしれません。

でも、そんなあいまいな感覚の中ではっきり残ったのは、ランプを灯した時、暗闇の中に友人の笑顔を見つけた時の安心感でした。私にとっての「本来の現実」は、多分ふとした笑顔に素直に喜ぶ感覚のことだったようです。仕事への逃避のなか、多すぎる情報で忘れていました。

みなさんも、ぜひこの10連休は「本来の現実」の発見をお楽しみください。特に、安全なキャンプ場でランプを片手にナイトトレッキングにトライしてみるのがおすすめです。

<尾池博士の所感>夜登山は山登りではごく普通のことなんです。ほんとです。ナイトトレッキングって言うんです。ほんとですって。

工学博士/1972年生まれ。九州工業大学卒。FILTOM研究所長。FLOWRATE代表。2007年、ものづくり日本大賞内閣総理大臣賞受賞。2009年、PD膜分離技術開発に参画。2014年、北九州学術研究都市にてFILTOM設立。2018年、常温常圧海水淡水化技術開発のためFLOWRATE.org設立。
イラストレーター・エディター。新潟県生まれ。緩いイラストと「プロの初心者」をモットーに記事を書くライターも。情緒的でありつつ詳細な旅ブログが口コミで広がり、カナダ観光局オーロラ王国ブロガー観光大使、チェコ親善アンバサダー2018を務める。神社検定3級、日本酒ナビゲーター、日本旅のペンクラブ会員。
Dr.尾池の奇妙な考察