SCANDAL RINA「カッコいいだけじゃない、新しい女性ドラマーの見せ方を追求したい」

結成から13年目のSCANDAL。日本を代表するガールズバンドとして国内外に多くのファンを持つ彼女たちは、今年は新しくプライベートレーベルを立ち上げさらなる飛躍を目指します。「カッコいい」がスタンダードだったバンド界に女性らしさを持ち込んだSCANDALは、どのように時代を切り開いてきたのか。ドラマーのRINAさんにお話をうかがいました。

制服姿の鮮烈デビュー後、色眼鏡で見られ……

―――とても嬉しいことに、RINAさんはtelling,のファンでいらっしゃるとか。何かきっかけはあったのでしょうか?

RINA(以下、RINA): telling,でもコラムを書いているRuru Rurikoさんのファンで、彼女の撮る写真や文章、フェミニズムを感じる作品が好きなんです。その方の活動を追いかけていたら、telling,に出会いました。

telling,は色々な人たちの他では聞けないパーソナルな部分を知れる媒体で、どの記事もすごく面白いですね。自分の言いたいことを真っすぐそのまま文章にしてくれる媒体って意外と少ないと思うんですが、telling,はそれを突破している気がします。

―――ありがとうございます。今日も、RINAさんの「言いたいこと」をどんどんおっしゃってください(笑)。SCANDALは、今年結成13年目なんですね。人気と実力を兼ね備えたガールズバンドとして今や海外でも多くのファンを獲得していますが、デビューからしばらくは、かなり苦労をされたそうですね。

RINA: SCANDALは不器用で、常にもがき戦い続けてきたバンドです。結成は私が中学3年生のとき。当時はお金もなくて、制服姿でライブハウスを回ったり、学校帰りにスタジオに入ったりしていたんですよ。すると、「制服と楽器の違和感って面白いね」と、レコード会社の人の目に留まり、そのままブレザー姿でデビューすることになりました。

制服姿で活動したのは3年程度ですが、「制服×楽器」は自分たちが思う以上にインパクトが強かったみたいで、そのイメージからいつまでも抜け出せない葛藤はありました。27歳になった今でも、「制服で演奏していたバンドだよね?」と言われますよ。

実は、デビューして5年くらいはフェスや音楽雑誌からもなかなか声がかからなくて、苦悩の時代でした。同世代のバンドはどんどん呼ばれるのに何でだろうって、いつも思っていました。バンド界は男社会とはいえ、女性ミュージシャンでも呼ばれる人は呼ばれていたし、私たちはどこか色眼鏡で見られていたような気がします。

―――色眼鏡、というと?

RINA: 制服姿もそうですし、当時は自分たちで作詞作曲をしていなかった。そのことで、ミュージシャンとして「本物」と認めてもらえなかったのかもしれません。

誰が作詞作曲をしても良い音楽は良いし、楽しいんです。でも、曲を作れなくて誰かに提供していただくのと、自分たちでも作れるけど、より良くするために誰かと一緒に作っていくのでは全然違う。今だから言えますが、当時の私たちは自分たちの思いをクリエイティブで表現しきれず、一番大切なものが欠けていたのかもしれません。

その後、試行錯誤しながら自分たちで作詞作曲に取り組んで、デビューから5年くらい過ぎてやっとフェスにも呼んでもらえるようになり、活動の幅が広がっていきました。この葛藤の時期があったからこそ、「自分たちをまっすぐ届けたい」という、怒りのようなパワーを手に入れられたとも思っています。

スカート禁止!?男社会のバンド界に起こした「革命」

―――「バンド界は男社会」とのことですが、RINAさんのような女性のドラマーもまだ珍しいのでしょうか。

RINA: 女の子でドラムというと今でも少しびっくりされますし、「見た目からは想像できないね」、と、120%言われますね。

今はないですが、以前はスカートやネイルが禁止と言われていた時期があったんです。スタッフが、細かいところまで当時のバンドのイメージやブランディングを考えてくれてのアドバイスだったんですけど、でも、それって全然自然じゃない!と思って勝手にスカートを履いたり、「絶対黒髪じゃなきゃだめ!」と言われているのに、撮影の前日に黙って髪の毛を染めたりしたんです。編集で真っ黒にされていましたけど(笑)。

ドラムはカッコいい楽器ですが、私はカッコよさだけではなく、女性ドラマーだからこそ出せる「しなやかさ」や「美しさ」も大事にしたい。見て「綺麗だな」って思われるようなプレイでありたい。だからこそ、自分のテンションが上がる洋服やヘアメイクでライブに望み、ちゃんと女の子であることも楽しみながらバンドをしたいんです。

そんな新しいドラマーの楽しみ方や見せ方が出来たらいいなって、ずっと思っていました。10年ほど前はそんな考え方や表現をしている人が今より圧倒的に少なかったように思います。

―――時代がRINAさんに追いついてきた?

RINA: 私になのかはわからないけど、女性ミュージシャンの多様性が認められてきたなとは思います。インスタもそうですよ、10年前はドラマーが今日の洋服を載せても微妙な反応だったと思う。でも、今はミュージシャンが音楽以外のことを発信するのは珍しくないですよね。音楽だけではなくライフスタイルや哲学など全部が繋がっていると感じていて、色んな事を発信していきたいなと思っています。

プライベートレーベル「her」を立ち上げて

―――3月にはSCANDALとして新たに起ち上げたプライベートレーベル「her」から新曲、「マスターピース / まばたき」の両A面シングルをリリースしました。

RINA: 春のスタートにふさわしい、今だからこそ書けるはじまりの歌を書きました。特に、「マスターピース」は新しいシーズンに飛び出すようなイメージです。プライベートレーベルを設立したことで、2回目のデビュー曲のような気持ちで作れた曲ですね。

―――プライベートレーベルから楽曲をリリースする経験は、これまでと違いましたか?

RINA: 全然違いました!これまで色々な経験をさせて頂き、そろそろ新しいことをしたいという気持ちが強くなっていたんですよね。ジャケットのデザインや曲の内容、リリースのタイミングもなんとなく見えないルールみたいなものが出来ていたし。そういったしがらみや縛りから解き放たれ、自分たちらしさを追求したいという思いも年々、高まってきていました。

今後も長く活動していくためには大きな起爆剤や変化が欲しい。思い切って作る場所を変えるタイミングかもしれないって思って、4人でプライベートレーベルを立ち上げることにしました。

もちろん新たに道を切り開くのは大変ですが、それ以上に自分たちがワクワクする方に進もうという気持ちが全員一致しましたね。新レーベルを立ち上げたら、自分たちでも新鮮に感じられる曲がドドドって出来て、良かったと思っています。

これからも、周りに合わせて自分の好きなことを変えるのではなく、自分が思ったことを信じて生きていきたいと思っています。

■SCANDAL RINA(りな)さんのプロフィール
1991年8月生まれ奈良県出身。ガールズバンド、SCANDALのドラム・ボーカル担当。2006年、大阪でSCANDALを結成。2008年に「DOLL」でメジャーデビュー。 翌年には「少女S」でレコード大賞新人賞受賞。近年はファッションアイコンとしても注目を集め、自身のアパレルブランド 「Feedback!」をプロデュース。2019年にはプライベートレーベル「her」を 設立した。

東京生まれ。千葉育ち。理学療法士として医療現場で10数年以上働いたのち、フリーライターとして活動。WEBメディアを中心に、医療、ライフスタイル、恋愛婚活、エンタメ記事を執筆。
フォトグラファー。北海道中標津出身。自身の作品を制作しながら映画スチール、雑誌、書籍、ブランドルックブック、オウンドメディア、広告など幅広く活動中。

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