【古谷有美】TBSアナ・古谷有美「私、土曜の朝6時から“チーママ”やってます」
●女子アナの立ち位置。
この10月から、木梨憲武さんのラジオ番組でパーソナリティを務めています。土曜日の朝6時、生放送。テレビとは違うやりがいがあって、とても楽しいです。どんな気持ちでお届けしているのか、お話しさせてください。
ラジオは、その人に深く潜り込むからこそ面白い
テレビは、画面を通じて何百万人の方に情報を伝えるメディアです。ラジオも同じように電波を使って、何百万人の方に呼びかけている。けれど、ラジオはどこか“1対1”を感じるメディアだと思います。
たとえるなら、電話のような感じ。どれだけ有名な方がパーソナリティでも、自分の耳元で「最近こういうことがあってね、どう思う?」なんて話しかけてくれているような……それこそ、つい相づちを打ってしまいそうになるんです。
それだけ空気の違うメディアだから、私たちのやることもすこし変わってきます。
テレビでのアナウンサーは、あくまで情報を整理して伝える係。自分が話す時間を20秒与えられたとしても、その20秒は「私はこう思います」じゃなくて、視聴者にとって必要な情報をまとめてお伝えするための時間です。だから、テレビで自分語りはしません。
でも、ラジオは内容がパーソナルであればあるほど、リスナーが楽しんでくれるんです。
「すべてのネタを優等生にひとしきり喋れます」というよりも、ちょっとムラがあってもいいから「この話はとことん語れる!大好き!」みたいな人間くささがあるほうが、面白がってもらえる。だから、そういう偏りを持つことの勇気を学べる気がしています。
ノリさんが思いきり飛び出すための、ほどよいナビ。
生放送でラジオをやるのは、約半年ぶり。朝の時間帯は初めてです。芸人さんは深夜帯の番組を担当することが多いけれど、今回TBSは木梨さんで、あえての早朝。
局としては気合いの入った番組ですが、いかんせんノリさんご自身はいつもゆったりと自然体の方。だから私もそれに倣って、気持ちいい朝にノリさんと歩幅を合わせて、散歩しながら世間話をするような気持ちでいこうと思っています。(もちろん、心の中には「一花咲かしてやるぞ!」という熱いものも、忘れずに持っているつもり)
ポジション的なことを言うなら、私はノリさんがやりたいことをのびのびやれるように、ちょっとした時間管理や軌道修正をする係。生放送はなにが起こるかわからないので、交通情報やお天気、災害時の対応など、インフォメーションや危機管理も担当します。
それに、ノリさんがいくら喋りのプロといえど、ずっと一人で話し続けるのは大変ですよね。ひと呼吸ついたり、頭のなかを整理する時間が生まれるように、適度な相づちやコメントも入れるのも、私の仕事です。
格好つけた言葉は届かないから、自然体で。
私がノリさんの相手に選んでもらえたということは、若さでギュンギュンいく感じとは違うムードを求められているのかな、と思っています。だから私も、いまの自分だからできることを探しながらやっていけたら……たとえば、チーママ的な?(笑)ノリさんやリスナーの話を「うん、うん」と聞いたり、ときにはいなしたり、自分の意見を言ってみたり。声だけのメディアだからか、うわべだけ格好つけた言葉で取り繕っても、すぐにばれちゃうんですよ。だからもう、ありのままで。気負わず進めていきたいですね。
こまかい進行がないぶん、自分たちのさじ加減で話を掘り下げたり、山場をつくったりできるのもラジオの面白いところです。「時間の長さ」と「話題の深さ」という2つの軸は、いつも縦軸・横軸としてまじわっているけれど、それを操る感覚がぐっと磨かれそう。その経験は、テレビやイベントで台本のない時間を過ごすときに、かならず活きてきます。どのメディアも大切で、全然べつの筋肉を使うからこそ、やればやるほどアナウンサーとしての幅が広がるんです。