登らなくても、谷を歩いてもいい。人生の先入観もぶち壊せる低山登山のススメ
●キャリアプランは、いらない。特別編
自分の根っこが見つかれば、ちょっとやそっとのことでは揺らがなくなる
太田彩子(以下、太田):低山は知的好奇心を刺激する、クリエイティブなものだっていう印象を受けました。低山に行ったことで、ミレニアル女性にはどのような変化があるんですか?
大内征(以下、大内):先入観をぶち壊すこととほぼイコールなんですけど、自分にとっての“前提”を柔軟に設定することで、自分らしく行動できる人が増える気がします。講義を受け、山に行くことで、「登らなくてもいい山があるんだ」「谷を歩いてもいいんだ」と気づけるようになって、間口が広がる。前提が変わると、人は変わるんだと思います。
太田:行動の幅が広がるんですよね。私、以前は浄水以外のお水を飲むとお腹を壊すと思っていたんです。特に東京では、水は買うものってイメージが強いじゃないですか。でも今は川から水を汲んで飲む。このお水がすっごくおいしい。
大内:山に行くと素直になって、うっかり悩み事を話す人もたくさんいます。働き方の悩みはやっぱり多いですよ。都会が悪いわけではないけれど、その中にいるとそこで解決する方法しか見えないんですよね。自分を、そして悩み事の本質を見つめ直して心身のチューニングをするのに、山はすごくいいと思います。
太田:電話がかかってきたりSNSを見たり、街を見渡しても看板などの情報がたくさんあって、都会だと雑多な物があり過ぎるんですよね。でも山では自分に向き合うしかない。私は特に下山の時、ものすごく自分のことを考えるんですよ。つまり、内省。自分に向き合わざるを得ない環境に身を置くことで、ブレない自分ができるのを実感しています。
大内:自分のことをよく観察して、自分の根っこが見つかれば、ちょっとやそっとのことでは揺らがなくなりますよね。さらに「自然はどうやってできるんだろう」なんてことをゆっくり考えてみると、何かの真理に近づいていく。
仕事から離れた時間を豊かにすることで、仕事でのパフォーマンスは高まる
太田:山にいるときは仕事を遮断しているけれど、それでもふと仕事の意味や働く理由を考える瞬間があるんですよ。普段の環境から離れて非日常に身を置くと、好奇心の高揚感がある。見えなかったものが入ってくるようになるというか。
大内:太田さんは世界が二項両立で成り立っていることを受け入れているから、仕事の疲れを自然で癒して、自然から得たいろんな情報を仕事に活かせるんだと思います。「5時まで仕事をして、それ以降は完全にオフ」みたいにきっちり分断していると、オフの時間の出来事がオンの時間に活かされるとは考えにくいですよね。
太田:心理学の領域では「リカバリー経験」という考え方があります。仕事から離れた時間を豊かにすることで、仕事で受けたダメージやストレスを元の水準に回復させることができ、結果的に仕事でのパフォーマンス等が高まる。このリカバリー経験が、私にとっては山なんです。たとえ仕事で高いストレスにさらされても、山に入ることで回復されて、山から都会に戻る時にポジティブなスイッチが入る。でも、「こう、あらねば」「こう、やらねば」と考える人ほど仕事から離れるのが苦手なんですよね。私自身も、若いころは「うまく休む」ことができなくて。
大内:そういう人は仕事で抱えている課題を山に持っていくといいですよ。そう考えれば、休むことも無駄じゃないと思える。一方では、山に行くためにがむしゃらに働いて体調を崩してしまう本末転倒な人も多いんですが、見方を変えれば身近なところでも環境を変えることはできます。極端な話、代々木公園だっていいんですよ。あれだって標高およそ30メートルですから。
自然の分身と書いて「自分」
太田:悩める人は自然に身を置くことで何かが見えてくるかもしれないですね。この記事を読んだとか、誘われたとか、最初のきっかけはなんでもいい。低山なら軽装でサクッと行けますし、気乗りがしなくても、半強制的だったとしても、行ってみたらきっと何かしらの発見があるかもしれない。
大内:自然の摂理に身を投じて、ぜひそこに向き合ってみてほしいですね。自然の分身と書いて「自分」ですから。自分を知る、友達と分かり合う、健康になる……。登山は手段ですから、目的や楽しみ方は人それぞれでいいんですよ。「百の頂に百の喜びあり」っていうのは、そういうことなんだと思います。
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