世界NO.2女性営業マン和田裕美さんが絵本に込めたメッセージ

「世界No.2営業ウーマン」として活躍し、ビジネス書の著作が50冊以上ある和田裕美さんが、絵本『ぼくはちいさくてしろい』を出版しました。「あなたのマイナスは人を助けるかもしれない。笑顔にするかもしれない」と伝えるお母さんペンギン。悪いことを受け入れて、良いことを探していく“陽転思考“は、大人の私たちにも大きなヒントを与えてくれます。著者の和田さんにお話を聞いてきました。

一度絶版になった絵本が、道徳の教科書に

――これまで多く書いてきたビジネス書ではなく、絵本を出版することになった経緯についてお聞かせください。

和田: 普段、ビジネス書を読まない人にも絵本を通して伝えたい思いがありました。営業職にはメンタルの強さはもちろん、人から好かれ信用されること、人の心を動かすことなど、いろいろな力が必要とされます。それらは、生きていくことに非常に役に立つ能力だと思っています。ビジネスはビジネス、物語は物語と分けずに、ビジネスで培った思いを物語に融合させられると感じ、絵本として出版しました。

『ぼくはちいさくてしろい』(著:和田裕美、イラスト:ミウラナオコ)クラーケン

 実はこの本、2009年に出版されて一度絶版になっています。でもその前に、とある小学校の先生が教科書会社に『どうしてもこの絵本を教科書に載せて欲しい』と直談版されたそうなんです。いまだにそれがどなたかは分からないのですが。その結果、3年かけて文科省の審査が通り、今年から小学校の道徳の教科書に掲載されることになった。それがきっかけになって、本も復刊されることになりました。奇跡の復活本です。

自分の人生を生きるには、皆から浮いてみる

――絵本には悪いことも受け入れて、良い部分を探していこうとありますね。

和田: お母さんペンギンの言葉で、『あなたは走るのは遅いけど、他の子が転んだら起こしてあげる役目なの』と、あります。

 あなたのマイナスが人を助けたり、笑顔にさせたりできるかもしれない。目の前の事実
は変わりませんが、捉え方を変えることによって自分のことを好きになっていきますね。

――周囲から浮くことを恐れてはいけない、というメッセージもありますね。

和田: 浮くことはとても大事なんです。私自身、『世界NO2』と呼ばれて完全に浮いています。あいつなに調子に乗ってるの、憎たらしくて大嫌い、というのが私の存在。それならば、やっぱり浮いた方が成功というのが私の持論です。

 浮くには勇気が必要ですが、動いていくと勇気が出てきます。どうなるか考えたり、こんなことしたら嫌われるかな、なんて思ったりしている段階では、やっぱり現状から出られない。
 仮に仕事で独立したいと思っているときに、『独立した方がいいよ!』と言う人と『正社員の方が安定していいよ!』と言う人の2通りの意見があったとします。もし、身近でとても信用できる人から毎日のように懇々と『正社員の方がいいよ』と言われ続けられたら、独立しないと思うんですよ。

 まわりに合わせて自分の人生が決まっていくシーンというのは、ゼロではないですよね。合わせることは大事ですが、そこに偏りすぎると自分の人生の決断や判断基準を全部、他者に委ねることになってしまう。自分の人生を生きられなくなりますね。だから、浮いた方がいいんです。

自分の闇と人の光を比べない

――最近はSNSで人の幸せに嫉妬してしまう人もいるようですが。

和田: 「次にハッピーになるのは自分の番」と考えて、自分が幸せそうにしているのが一番いいんですよ。SNSはお互い良いところしか見せず、承認欲求の争いをしているようなところがあります。SNS上で幸せをアピールしている人も、もしかしたら、本当はすごく体調が悪く、仕事で嫌な思いをしているけれど、SNSでもう一人の自分を表現しているだけなのかもしれない。

 人はたいてい、「自分の闇」と「人の光」を比べます。相手が持っているものと自分が持っていない部分を比較して落ち込むんですよ。

 たとえば相手の仕事が波に乗っていてうらやましいと思っていたところに、「こんな仕事ができました!」という投稿がSNSに上がっているのを見たら、相手の光に対して「私はできていない……」と自分の闇のほうを見てしまい、さらにうらやましくなる一方です。でも、自分の光にこそ目を向けて気持ちよく生きていると、埋まっていないところも光ってくるはずなんです。

 相手の出来ているところと自分の出来ていないところを比べて孤独感を感じたり落ち込むのではなく、自分が光っているところに目を向けると満たされてきます。

母が自由に生きていたからこその言葉

――絵本はお母様の教えも元になっているそうですね。

和田: はい。私は子どもの頃、自分のことが嫌いでした。自分ってなんの役にも立たない、存在価値なしって。何をするにも、のろまで行動が遅かったんです。そんな私が、自分を肯定して好きになってこられたのは、母の影響が大きいです。

 母は、母親業をきちんとしていませんでした。両親とも浮気をしていて家にもほとんどいない。母の彼氏は小学校の頃から何人も変わっていたし、父も同じです。決して円満な家庭ではなかったですが、そういう中だったからこそ、母の言葉を拾いやすかったのかもしれません。

 一度、母にグレてやる!と言うと、『どうぞグレてください。ママは痛くもかゆくもない、あなたの人生だからあなたが全部責任とって』と。それを聞いてグレるのをやめました。愛が深い突き放し方をするところがあるんですね。自由に生きた母だからこそ、そんな言葉が出たのだと思いますし、母が人生経験で得た言葉をお母さんペンギンがしゃべっている感じです。

――私たち大人にも響く『ぼくはちいさくてしろい』。幸せになるヒントがたくさん詰まっていそうですね。

“陽転思考”の練習になる「人生よかったカルタ」も、和田さんが企画・監修

和田: この絵本に欠かせない存在だった母は若くして亡くなってしまい、私が思い出を美化しているところはあるかもしれません。でも、嫌なこともたくさんあったはずなのに、思い出そうとすると良い言葉しか出ない。それは私が、現在も過去からも「良かった探し」をしようと思って生きているからだと思います。

 この人生幸せって思ったらそれが正解です。自分が前向きに生きて、今の状態を肯定できれば、絶対幸せなはずなんですよね。

●和田裕美(わだ・ひろみ)さん プロフィール

50冊以上の本を出版、累計200万部超えのベストセラー作家として、ビジネス書だけでなく絵本や小説と幅広く執筆中。もともとは外資系教育会社の営業でお客様の98%から契約し世界142カ国中第2位の成績を収め、20代で女性初の支社長となったのち、和田裕美事務所株式会社を設立。自らの経験をもとに、「陽転思考」や「ファンづくり営業」「人に好かれる話し方」などのテーマで国内外でセミナーや講演を多数実施。これまでに10万人以上が受講し多くの人生を好転させてきた。代表作に『人に好かれる話し方』『世界No.2セールスウーマンの「売れる営業」に変わる本』『人生を好転させる「新・陽転思考」』等。2015年出版の『成功率98%の秘訣』はアマゾンビジネス・セールス部門で1位を獲得。

ぼくはちいさくてしろい

ぼくはちいさくてしろい
著:和田裕美
イラスト:ミウラナオコ
発行:クラーケン

東京生まれ。千葉育ち。理学療法士として医療現場で10数年以上働いたのち、フリーライターとして活動。WEBメディアを中心に、医療、ライフスタイル、恋愛婚活、エンタメ記事を執筆。
写真家。1982年東京生まれ。東京造形大学卒業後、新聞社などでのアシスタントを経て2009年よりフリーランス。 コマーシャルフォトグラファーとしての仕事のかたわら、都市を主題とした写真作品の制作を続けている。