「忙しい」はもう言わない。「時間」をつくるシンプルな方法
頑張りすぎている日本の女性が心配
去年の春に育休から復帰して以来、家事と子育てに追われ、平日の通勤電車の中が唯一の一人時間の私。モニカさんのこんな一言が、ぐっときます。
〈家族を大切にするように、自分自身も大切にしてください。あなたが倒れたら大変ですから。(中略)女性雑誌にあるような完ぺきを目指すのはやめましょう〉
たしかに私が倒れたら、今夫と2歳の息子の3人家族の我が家は大ピンチ。そんな女性は私だけではないはず……。
――でも、モニカさん、そもそも、これほど日本の女性たちを気にかけてくださっているのは、なぜでしょう?
モニカさん 20年前に日本語を学び始めたことをきっかけに、日本という国と文化に興味を持ちました。仕事の都合で長期滞在したり、来日する機会が多いので、日本人の友人が多くできたんです。彼女らを通して、日本女性の生き方や考え方を見てきました。
どんなに優秀な人でも、家事も子育ても仕事も、全部はムリ
モニカさん 日本の女性は本当に家庭や子どもを大切にすると思います。同時に、自分のケアを忘れてしまっているのではないかと心配になるときがあって。北欧では、パートナーや夫も食事をつくり、積極的に子育てをするので、女性は生活にゆとりがもてます。一方で、日本の女性の多くは、家事をすべて受け持ち、子育ても仕事もしている。あまりにやることが多すぎて、どんなに優秀な人でも手に負えなくなるときがあると思うのです。

――彼女たちを心配してるんですね。
モニカさん ええ。日本の女性を励ましたい、応援したいと思っています。今、もしくはこれから家庭をもち、子育てをし、仕事もする女性に対して、フィンランドの女性の両立の工夫を伝えたかったんです。私自身もいろいろと試行錯誤しました。
――モニカさん、シングルマザーでいらっしゃるんですよね。①残業はしない ②家事は自分の体調を優先 ③まず子どもと自分、そのあとに親……。
「自分を大切にする」を軸に、仕事も家事も「やらないこと」を決めてるんだなと思いました。たとえば、掃除は木曜日しかしない、とか。
いつもみんなと同じ、でいいの?
――それから、「女性が頑張りすぎてしまう社会的な背景として、日本はフィンランドよりも同調圧力が強いのではないか」という指摘にドキッとしました。
モニカさん たとえば、いつもみんなと同じファッションでいいの? ということです。家庭でも同じ。「女性は家事と子育てをするもの」という伝統的な考え方に、彼女たち自身も同調しているように見えるんです。
もちろん状況は少しずつ変わってきているし、まさに過渡期ですよね。だからこそ、ただ盲目的に今までの「正しい」についていくのではなく、ときどき立ち止まって、自分が何を求めているのかを見つめることが必要だと思います。
そのために、自分のための時間――“マイタイム”をもつことが大切だと思うんです。

モニカさんのいう“マイタイム”は、「仕事や家庭の責任から離れ、自分に投資する時間」のこと。友人と過ごす、エクササイズをする、自然や芸術を楽しむなど、過ごし方は人それぞれ。たまたまできた空き時間をなんとなく過ごすのではなく、「自分の意志や気持ちに耳を傾ける一人の時間」をもつことだそう。
いいなあ、とは思うけれど、今の私には夢の世界。平日は家事、仕事、家事、寝る。休日は2歳の子どもの後ろを追いかけて嵐のように一日が過ぎ去る……。
モニカさん いつも忙しく何かに追われていたら、思考回路がとまってしまうこともありますよ。全部やればいいというものじゃないし、全部をやるのは、ムリ。“マイタイム”をもつことによって、リラックスし、新しい発想も生まれやすくなります。いいことずくめなんです。仕事や子育てのストレス解消の一つだと確信しています。これは、意外かもしれませんが、フィンランドでもまだ新しい世代の、新しい考え方です。
不必要な罪の意識にさようなら
モニカさん 欧米のミレニアル世代は、仕事だけが人生ではない、と当たり前のように思っています。自分の趣味や価値観も生活に盛り込んでいる。人生のルールや基準は、自分で決めることができるんです。ミレニアル世代の日本のみなさんにもあなたにも、自分らしく、輝く将来が待っているのです。

そう、日本人女性にメッセージを送ってくれたモニカさん。「ちゃんとやらないといけない」――無意識にそう思いがちなのかな。そんなふうに思う私は、こんな一文に、ハッとさせられました。
<“マイタイム”をつくる勇気を持つということは、「自分を大切にする勇気を持つ」ということ>
勇気が必要。結局、私は「仕事だから」「散らかってる片付けなきゃ」とまわりの環境のせいにしているのかも。散らかっていてもいい、ご飯は毎日手作りじゃなくてもいい。その代わり、私がずっとやりたかったことをやろう。
私がモニカさんのインタビューを通して決めた“マイタイム”。実は私がやりたいのは、「ネットフリックスを夜にだらだら見る」。あの夢の世界でリラックスしたい! そんなことも、「人生のルールは自分で決める」の第一歩。今日から早速、実践します。

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