【高尾美穂医師に聞く#20】デリケートゾーンにかゆみが。婦人科?皮膚科? 病院に行く目安は
Q. デリケートゾーンにかゆみがあり、悩んでいます。病気のサインでしょうか?(35歳、女性)
──デリケートゾーンのかゆみを訴える患者さんは多いのでしょうか。
高尾美穂医師(以下、高尾): 季節で言えば夏前ごろから、外陰部のかゆみを訴える患者さんはとても多くなります。かゆみには、皮膚科的あるいは婦人科的にはっきりとした原因がある場合もあれば、そうでない場合もあります。
皮膚科的な原因がある場合とは、皮膚の色みや肌触りに変化が生じていて、一般的なかゆみ止めの塗り薬が効果的とみられる状態です。外陰部も皮膚の延長ですから、ほかの場所と同じようにかゆみが起こることがあります。乾燥による場合もありますし、ショーツの端っこが擦れるといった継続的な摩擦も原因になります。
生理用ショーツを続けて履くなどしてムレても、かゆく感じることがあります。こうした場合は、おりものシートを常用しているなら使わない日をつくってみるとか、素材をコットンに変えてみるとか、生理用ナプキンから吸水ショーツにしてみるとか、ご自身でいろいろと試してみるのもいいと思います。
ほかには、更年期世代に多いですが、乾燥が原因でチリチリするようなかゆみが出ている場合があります。そういったケースは保湿剤を塗ることが対策になりますね。
繰り返しがちなカンジダには、自分の傾向を知って
──婦人科的な原因とは?
高尾: 婦人科的にかゆみが出る原因は大きく二つ。カンジダとトリコモナスが挙げられます。これらの場合はおりものを検査することでわかります。
カンジダは、実は誰もが持っておかしくない「常在菌」です。腟の中には本来、菌の繁殖を防ぐ自浄作用がありますが、抗生物質を飲み続けたり睡眠不足が続いたりして免疫状態が低下するなど、何らかの原因で一時的にカンジダが増えると、おりものの状態が変化したりかゆみなどの症状を起こしたりすることがあります。カンジダ腟炎、カンジダ腟外陰炎、カンジダ外陰炎と段階があり、腟錠といって腟の中に挿入する薬や塗り薬で治療します。
カンジダによる症状は繰り返す場合があります。生理前とか性交渉の後とか、人によって出やすくなる傾向が異なるので、自分の傾向をある程度把握しておくのも大事なことです。これも、おりものシートを長時間つけているなら使用を控えたり、ショーツの素材を変えたりすることで改善する場合もあります。
一方、トリコモナスは性交渉で感染するので、検査で見つかったら、原則としてパートナーも治療を受けるのがよいでしょう。こちらも腟錠などで治療します。
かゆい=性病?と不安に
──デリケートゾーンがかゆいとなると、「性病」が気になってしまいます。
高尾: 心配になるかもしれませんが、それは、どういう性交渉をもったかによりますよね。パートナーが変わっておらず、そのパートナーと以前から性交渉をもっていて、これまでそういった状態になっていないのであれば、基本的に心配は要りません。それ以外で、もし心配になるような性交渉をもった場合であれば、一度受診するのもいいのではないかと思います。
婦人科と皮膚科、どちらにかかればいい?
──かゆみが出た場合、婦人科と皮膚科、どちらにかかればよいのでしょうか。受診するかどうか、目安はありますか。
高尾: 婦人科・皮膚科のどちらにかかっても適切なアドバイスがもらえると思いますが、腟の中がむずがゆい、といった状態であれば婦人科がよいでしょう。外陰部以外の、例えばお尻のほうに広がるかゆみといった場合であれば、皮膚科で診てもらってもよいかと。
これはどんな症状にも言えることですが、何日も同じ状態が続いているときや、一度治っても繰り返すとき、かゆくて眠れないなど何らかのかたちで生活に支障が出ているときには一度受診してみるといいと思います。
繰り返しかゆみが出る場合は、やはりいったん何が原因なのかまず考えてみる姿勢も大切。ご自身がどういう状況だとかゆみが出やすいかを自分なりに把握できるとよいですね。実際には「気にしすぎ」というケースも多いので、実は、あまり心配しすぎないことも大切です。
著者:高尾美穂
発行:朝日新聞出版
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