迷える婚活女子必読! 名言で振り返るドラマ『婚活1000本ノック』
「誰かと一緒にいたい! 誰かに愛されたいし、愛したい!」(1話)
平成に思春期を駆け抜けた世代には、きっと百発百中でわかってもらえるはず。KinKi Kidsが歌う『愛されるより愛したい』に、おそらく当時の小中学生は度肝を抜かれただろう。
若かったころはピンとこないこの言葉。しかし、年齢を重ねれば重ねるほど、実感をともなって「わかる」ようになってくる。正直、愛されたいことに変わりはないけれど、それと同じくらいに、心から愛したい人を求めるようになる。混じり気なしに、心から、純度100%で「愛せる!」と思える人を。
第1話で主人公の綾子が言う「誰かと一緒にいたい! 誰かに愛されたいし、愛したい!」のセリフは、彼女と同じアラサー独り身女子には、痛いほど伝わる言葉だろう。
ああ、愛したい。今は一人でも十分楽しいけれど、40歳、50歳、60歳になっても同じように一人だったら? 果たして、年齢を重ねても変わらずに「一人って、楽しい♪」と、音符マーク付きで言えるんだろうか。
「妥協するくらいなら、結婚なんてしなくていいって思うけどね」(2話)
顔か、性格か、それとも条件か? 恋愛相手、はたまた結婚相手に求めるものは、人それぞれ違う。人の数だけ、理想や希望がある。そのはずだけれど、それらを求めてがんばればがんばるほど霧の中に入っていくような気持ちになるのが、婚活なのかもしれない。
綾子自身も、「どんな人と結婚すれば自分は幸せになれるのか?」と迷い、悩んでいる。そんな彼女に向けた、婚活のサポート役であり、幽霊の山田。彼が彼女に向けた、ある意味気楽なセリフが「妥協するくらいなら、結婚なんてしなくていいって思うけどね」。
確かに、そう。結婚しなくても、生涯独身でも、きっと幸せに生きていける。少しずつではあるけれど時代はアップデートしているので、女性一人でも安心して飲み食いできるお店が増えてきたし、「恋愛がすべてじゃないよね」的な価値観も浸透してきているように思う。それは、独身者にも優しい世界だ。
でも、ふとした瞬間にInstagramのラブラブ投稿とか、街中で歩いているラブラブカップルとかを見るたびに、あれ、私このまま一人でいいんだっけか、と思い、そして気づく――。
誰かと生きていくためには、パートナーを見つけなきゃならない。だって、一人は寂しいから、と。
そのためには「理想とする結婚相手の条件」に当てはまる人と出会わなければいけないわけだが、驚くほどにその確率は低いように思う。もしかしたら、宝くじに当たるくらいの奇跡かもしれない。
「言うとおりにして自分殺して、そんなんでほんとに幸せになれんの?」(4話)
綾子には、頼もしい友人が二人いる。韓国料理店を営み、婚活情報を教えてくれる鳥羽(中越典子)と、推し活にいそしむ、おけけ(橋本マナミ)だ。婚活で壮絶な体験をした綾子が、鳥羽の韓国料理店で二人に話を聞いてもらう……というのが、お決まりの流れになりつつある。
山田の紹介で、大企業の御曹司・大池貴司(野村周平)と出会った綾子。デートに彼の母親がついてきて「もし結婚するなら、大池の名にふさわしい人間になってもらう」と言われた顛末(てんまつ)を話すと、おけけがこう返す。「言うとおりにして自分殺して、そんなんでほんとに幸せになれんの?」
結婚から切っても切り離せない問題、それが「相手の家族(親族)とどう付き合うか」。恋愛までは二人の世界で完結させられるけれど、結婚となるとそうはいかない。いわば、相手の家族も、まるっと受け入れて結婚する覚悟が必要になる場合も多い。
幸せになるために結婚をしたいのに、結婚のために自分を殺して不幸になっていたのでは、本末転倒。この矛盾、世の中の夫婦はどうクリアしているのだろうか。
「大好きなカップラーメンを、こっそり食べる人生でいいんですか!?」(4話)
同じく第4話より、母親の助言がないと何も決められない大池に対し、綾子がズバッと言い切ったセリフを挙げたい。母親の目を気にして、堂々とカップラーメンさえ食べられない彼に対し、綾子は「大好きなカップラーメンを、こっそり食べる人生でいいんですか!?」と突きつける。
このセリフには、綾子の心中に渦巻くさまざまな“モヤモヤ”が内包されているように思う。
おけけの言葉も脳裏によぎっていただろうし、母親の言いなりになって自分の人生を諦めている大池が、まったく幸せそうじゃない現実も、婚活が上手くいかない自分に重なったかもしれない。
なぜ恋愛をしたいのか? なぜ結婚をしたいのか? つまりは、なぜ一人ではなく誰かと生きていきたいと願うのか?
それは、幸せになりたいからだ。自分のためはもちろん、ともに生きていく誰かのためにがんばってみたいからだろう。それなのに、幸せになるために好物を我慢し続けるなんて……。
あらためて、自分にとっての「幸せ」は何なのかを腰を据えて考えないと、簡単に見失ってしまいそうだ。
「みんな誰かを好きになって、その人と結ばれて、幸せになりたいだけなんだよ」(7話)
婚活に疲れ果てた綾子は、やがてトチ狂って(?)幽霊である山田と一緒にいられれば、それでいい……と勘違いしかける。しかし、山田のほうが現実的だった。綾子をだましては、さまざまな男性と引き合わせ、なんとか婚活を成功させようと画策する山田。一年以内に綾子と交わした約束を果たさないと成仏できず、虫になるらしいが、そんなに虫になりたくないのか。
もう山田には任せられないと、綾子が自力でマッチングして出会ったのは、明らかにクソ男であることがダダ漏れのラジ男(忍成修吾)。婚活そのものに疲れている綾子は、クソ男だと頭ではわかっていても、ラジ男の甘い言葉に乗せられてしまいそうになる。
しかし、ギリギリのところで踏みとどまる。そして言ったのが「みんな誰かを好きになって、その人と結ばれて、幸せになりたいだけなんだよ」というセリフ。
誰かと付き合って、結婚して、家族になって、生涯の最後まで添い遂げる人もいれば、仕事を終えて帰っても、家に待つ人がいない人もいる。そんな生活が続くと、漠然と老後や孤独死のことを心配してしまうだろう。
でも、綾子だって、もともとはもっとシンプルな感情だったはずだ。「誰かを好きになりたい。そして、その誰かに好きになってもらいたい」と。
誰かを好きになって幸せになる、簡単なことのはずなのに、難しくしている要因はどこにあるのだろう。
「ほら、やらなかった時の後悔って一生残るじゃん?」(8話)
綾子のように、幽霊(父親)のサポート(?)を受けながら婚活に励む、作家の九本凛(関水渚)。第8話にて、綾子と九本が、二人でペヤングを食べながら話すシーンがある。そこで綾子が「ほら、やらなかった時の後悔って一生残るじゃん?」と何気なく言うセリフがあり、九本はそれを聞いて一瞬考え込む。
8話を最後まで観ればわかるように、九本は心のどこかで堂島(風間俊介)のことを思い出していたのではないだろうか。
元ヤンの言動が出てしまった瞬間を堂島に目撃され、それ以来、彼との仮交際も断ってしまった九本。どこから見ても二人は互いに惹かれあっていた。堂島が勇気を出して九本の目の前にあらわれ、夜景をバックにサプライズでプロポーズをしたからこそ、二人の縁はふたたび繋がった。
しかし、なかなか現実世界は同じように進まないのではないか。せっかくマッチングアプリで出会った相手とも、メッセージのやりとりや何度かのお茶・ご飯を共にするする過程で、驚くほど簡単に糸は途絶えてしまうように思う。何が原因だったか振り返ってみても、本人に直接聞けない限り、答えは見つからない。
やらなかった後悔は、一生残る。もしあのとき、自分からメッセージを送っていれば。もしあのとき、素直に「会いたい」と言えていれば。さまざまな「たられば」が積み重なっていくけれど、それらはやがて重たい後悔となって、いつまでも心の奥底に横たわる。
綾子のように、パワフルに婚活に立ち向かいたい。それこそ1000本ノックのように、たとえ心が折れても修復しながら突き進んでいきたい。
何度婚活に失敗しても、起き上がりこぼしのごとく復活する綾子の信念が「やらなかった後悔は一生残る」なのかもしれない。彼女の元来の明るさは、こういう考え方からきているのかも、と納得してしまう名言だ。
フジ系水曜22時~
出演:福田麻貴(3時のヒロイン)、八木勇征、関水渚、野村周平、白河れい、橋本マナミ、中越典子ほか
原作:南綾子
脚本:ニシオカ・ト・ニール、松本美弥子、山岡潤平、藤平久子
主題歌:水曜日のカンパネラ『幽霊と作家』
プロデュース:羽鳥健一、矢ノ口真実、髙石明彦
演出:田中亮、西岡和宏、 吉野主
©フジテレビ
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