ノートで学ぶマネーの「常識」 FP fumicoの“Live colorfully”#46

【FP fumico】保険料、何となく払い続けていませんか? 物価高の今こそ固定費を見直す

物価高騰の今、家計のやりくりを考えるなら固定費削減が効果大。なんとなく加入したままになっている保険を見直してみませんか? 「マネー」に関するインスタグラムへの投稿で、主に20~40代の女性から支持を集めるFP(ファイナンシャルプランナー)のfumicoさんが、見直しのポイントを、インスタでもお馴染みの手書きのノートとともに解説します。
【FP fumico】子どものお小遣い、定額制?都度払い? 渡し方のポイントは 【FP fumico】給与明細も「ちんぷんかんぷん」……お金についてまず何を学ぶべき?

生命保険加入率は9割。でも「知識がない」人も

8月の消費者物価指数(生鮮食品を除く)が前年同月比で3.1%上がり、24カ月連続の上昇となるなど、物価高の波がなかなか収まりません。賃金がこの春に上がったという方もおられるかもしれませんが、物価の上昇はそれを上回っており、家計管理の難しさを感じておられる方も多いのではないでしょうか。

生命保険文化センターが行った「生命保険に関する全国実態調査」(2021年)によると、生命保険の世帯加入率は89.8%で、1世帯の年間保険料は37.1万円。
一方、生命保険や個人年金保険について「ほとんど知識がない」と思う人の割合が67.2%で、不足している生命保険知識は「どういった保障が必要なのか」が42.3%と最も多い。
保険に関する知識がなく、必要な保障が分からないままに月3万円もの生命保険料を支払っている姿が浮かびます。

公的保険で既に十分備えている……?

ここでいうリスクとは、「将来起こるかどうか分からないことや、その影響が不確実であること」。ですので、病気や怪我をするといった悪いコトだけでなく、長生きをしたり出産(により休業)したりといった喜ばしいコトも含みます。

公的な保険について、「こんなに入っているの!?」と驚かれた方も多いかもしれません。それもそのはず、これらは私たちの口座にお給料が振り込まれる前に天引きされていますし、誰も「こういった内容の保険に加入して、いくらの保険料を納めます」と説明してくれません。
ちなみに、労災保険は企業が保険料を全額負担しますので、私たちが納める必要はありません。
例えば公的な医療保険では、医療機関を受診した時の費用を一部(現役世代では7割)負担してくれるだけでなく、「高額療養費制度」といって、ある月に支払った医療費が高額になった場合に一定額を超えた金額が後から戻ってくる仕組みもあります(詳しくは♯36『ホントは手厚い公的医療保険~高額療養費制度で私もホッと!』)。
さらに、勤め先によっては従業員の医療費負担を軽減するために、健康保険組合が「付加給付」と呼ばれる上乗せをすることも。この場合、入院や手術をしても、医療費の負担は2万円程度で済むこともあります(差額ベッド代や食事代は別途かかります)。

私たちが準備しておくべきお金は、それほど多くないと感じられる方も多いのではないでしょうか。

加入はリスクへの対応策を確かめてから

リスクへの対応策は、「移転」以外にもあります。
自動車の運転で例えると、
・運転する以上は事故を起こす可能性が0ではないため、運転そのものをしないのが「回避」(ただし、現実的な選択肢ではない場合もあります)
・安全運転を心掛け、シートベルトを締めるなど「軽減」策を取れば、事故に遭う確率を下げ、万が一の事故においても影響を小さくできる
・交通量の少ない道路で安全運転を心掛ければ、事故が起こる可能性は低く、起きても影響が小さいためそのまま運転しリスクを「保有」する
といったものです。もちろん、これらの対応策を組み合わせることもできます。

ノートで挙げた保険以外にも、最近は病気や怪我で働けなくなった場合の収入減少に備える「就業不能保険」に加入する方も増えています。ただ、会社員や公務員の方が加入する健保組合や協会けんぽであれば、傷病手当金で一定期間は給料の3分の2程度を受け取れます(詳しくは♯37『他人事じゃない傷病手当金~足らない出産育児一時金』)。
ここでもやはり、ご自身が既に備えられていることを確認してから、加入が必要かどうか検討したいところです。

ライフステージの変化に応じて見直そう

保険商品を販売する側は、みなさんのお勤め先の付加給付を始めとする福利厚生制度や預貯金などの備え、ライフステージの変化などを知らない場合も多い。
・子どもが生まれたから、死亡保障を手厚くする
・逆に子どもが独立すれば、死亡保障を減額する
・住宅ローンを組む際に団体信用生命保険に加入したため、保障の重なる部分を減額する
・会社勤めからフリーランスになったので、就業不能保険を検討する
など、ご自身の状況に合わせた保険になるよう、保険の加入や見直しに主体的に取り組む必要があります。

固定費削減は効果大。でも気をつけるべきポイントも

保険以外の固定費について気になる方も多いかと思います。♯24『作ってみよう! あなたのB/S&P/L』でも書きましたが、固定費は変動費を減らすよりも手続きなどの手間が掛かる一方で、効果が大きい。
ただし、光熱費や通信費の削減については気を付けたい点も。新電力会社は一時期、倒産や事業撤退が相次ぎましたし、大手電力会社同様、値上がりもしています。割安だと思って契約した携帯電話の料金プランが変更されたり、通信速度や災害時の対応に不安があったりする場合も。
毎月の負担を下げることももちろん大切ですが、生活の利便性が失われたり、ストレスを抱えたりすることになっては本末転倒です。
ご自身の生活にとって必要な支出であれば、必ずしも安さだけを優先させなくても構いません。

家計管理はダイエットに似ています。無理な「〇〇抜きダイエット」は続かないしリバウンドしがち。運動や食生活などの生活習慣を見直せば健康的な体を維持できます。家計管理も同じで、「何となく続けている大きな支出」を見直すことで、スリム化しやすくなります。
ぜひこの機会に、備えに過不足がないか確認してみて下さいね。

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FP fumicoの“Live colorfully”の次回は、10月27日に公開の予定です。

【FP fumico】子どものお小遣い、定額制?都度払い? 渡し方のポイントは 【FP fumico】給与明細も「ちんぷんかんぷん」……お金についてまず何を学ぶべき?
CFPⓇ保有のファイナンシャルプランナー。 大学卒業後、生命保険会社や市役所での勤務を経て、2017年12月より「お金」に関するInstagramへの投稿を始める。社会保険や税金・資産運用といった学ぶ機会がなく、話題にも上りづらいコトを身近に感じてもらえるよう、解説の投稿は手書き。趣味は起床後すぐの15分ヨガと、株式投資。