8年の不妊治療を“卒業”した親友。瞳子(深田恭子)は40代の結婚に踏み出す 『18/40~ふたりなら夢も恋も~』9話
不妊治療を続けていた薫の選択
「人生は選択の連続だという。そしてその選択とは、何かを諦めることでもあるのだ」。9話は、薫(松本)のこんなナレーションから始まった。
18歳で妊娠、出産した有栖(福原)は、偶然出会った年上の女性・瞳子(深田)と協力しながら、育児と夢の実現を目指す。
一方、薫は、医師としてお産を担当するのが、もうすぐ2000人目になるが、自身は8年ものあいだ不妊治療をしていた。9話では、長く治療をしていた事実と、夫と話し合い、きっぱり諦めて“卒業”したことを、薫が瞳子へ告白する。「いつかは子どもがほしい」と純粋に願う瞳子に対し、彼女はどんな思いで診療していたのか。親友のことを「子どもをつくらない主義」だと思い込んでいた瞳子。不妊治療のことを初めて明かされた時の心境もさることながら、薫の“卒業記念日”に肩を寄せ合って一緒に泣く二人の心の内は、想像しきれない。
薫に先んじて泣いてしまった瞳子に、「泣かないでよ、なに泣いてんのよ」と茶化した声を上げる薫自身も、やがて涙をこぼす。「私、がんばったよね」と自身に言い聞かせるように言う薫の姿は、望んだ末に夢が手に入らなかった女性の努力と懊悩(おうのう)を象徴しているようにも見えた。
年下の恋人との結婚を決めた瞳子
加瀬息吹(上杉柊平)からのプロポーズに対する返事を、しばらく保留していた瞳子。しかし、ついに彼との結婚を決めた。子宮内膜症であることを加瀬に告げ、「卵巣機能も低下していて、子どもが産めないかも」と打ち明ける瞳子と、その事実を真摯(しんし)に受け止める加瀬のシーンに、SNSでも視聴者から共感の声が上がっている。
もしかすると、加瀬にとって、瞳子との結婚は「子どものいない人生」を歩むことになるかもしれない。
しかし、加瀬ははっきりと言った。「子どものことは、あなたがいればそれでいいです。俺は、瞳子さんとずっと一緒に生きていきたい」と。加瀬の職場の後輩である榊原透子(北香那)の登場により、一時は“瞳子にもライバル出現か!?”と、恋愛ドラマの王道を行くかのような展開となった。しかし、振り返ってみれば、加瀬は瞳子以外の女性に一度も心を揺らしていない。
なぜ加瀬がここまで瞳子に惹かれたのか、心境の変化をもう少し見てみたい気持ちが、物足りなさを呼ぶ。しかし、瞳子が自身の病気について告げても、1ミリの迷いも見せなかった彼なら、これからの瞳子が進む道をともに支えてくれるだろう。
瞳子からの独り立ちを決めた有栖
有栖の息子・海はすくすくと成長し、保育園通いも始まった。大学に復学した有栖は、遅れた勉強を取り戻しつつ、キュレーターになる夢に向き合い直している。
薫は不妊治療からの卒業、そして瞳子は結婚を決めた。有栖の選択は、自分の足で踏み出すこと。加瀬との関係が順調な瞳子のことも後押しとなり、瞳子の家を出て行くことを決める。
瞳子と有栖は、互いの夢を共有した。瞳子は、自分のギャラリーをつくり、世界中でまだ見いだされていないアーティストの作品を飾って応援すること。有栖はもちろん、キュレーターになること。そして有栖は、瞳子の会社が主催するプロジェクトで、育成キュレーターの最終選考に残った。本番前日、「プレゼンが通ったら、キュレーターになる夢に、一歩近づけますかね?」と、不安や焦りが拭いきれなかった有栖。当日、海が急に熱を出し、保育園から呼び出しがあったものの、黒澤祐馬(鈴鹿央士)が助けの手を差し伸べた。有栖は無事にプレゼン審査に合格し、夢の実現に一歩近づいた。
二人は、ともに歩んできた。思いもしなかった出来事に翻弄(ほんろう)され、上手く進まない物事に悩み、衝突し、立ち止まることもあった。それでも、お互いに思うことを伝え、できることをして支えとなってきた。瞳子の「私と有栖はこれからも、ずっと変わらないからね。だから私たち、少し前に進んでみようか?」……この言葉に、これまでの彼女たちの歩みと、これからの暮らしに向けた望みと期待が詰まっている。
3人が選んだ“人生の舵(かじ)”が、それぞれどんな方向に行き着くのか――。その最終回が待たれる。
TBS系火曜22時~
出演:福原遥、深田恭子、鈴鹿央士、上杉柊平、出口夏希、長澤樹、八木勇征、嵐莉菜、美村里江、松本若菜、髙嶋政宏、片平なぎさ、安田顕ほか
脚本:龍居由佳里、木村涼子
音楽:吉俣良
主題歌:Ado「向日葵」
プロデュース:韓哲、荒木沙耶、内川祐紀
演出:福田亮介、松木彩、宮﨑萌加
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