『18/40~ふたりなら夢も恋も~』が描いた、女同士の連帯をつなぐ鍵

ドラマ『18/40~ふたりなら夢も恋も~』(TBS系)は、福原遥演じる18歳のキュレーター志望・仲川有栖と、深田恭子演じる40歳のアートスペシャリスト・成瀬瞳子をメインに繰り広げられる、女性の生き方を描いた物語。「妊娠・出産」や「キャリア」など、人生のステージが変わる局面に立たされた女性が、どんな選択をするかに注目が集まった。出だしは不安を覚えてしまう要素もあったが、その後、印象がガラリと変わっていった本作。 最終回までを、あらためて振り返る。
18歳と40歳、女同士の連帯が「当たり前」を変えていく 『18/40~ふたりなら夢も恋も~』最終回 【イラストで見る】ドラマ『18/40~ふたりなら夢も恋も~』

有栖・瞳子の成長と決断に魅せられた

このドラマは、正直に言ってはじめは少々、設定に無理を感じる描写もあった。18歳で妊娠し、否応なく迫る出産・育児と、自分の夢とのあいだで悩む有栖(福原)。一方、仕事か結婚かで思いあぐねた末に仕事を選び、20〜30代を駆け抜けた40歳の瞳子(深田)が直面したのは、子宮内膜症の発覚と年下彼氏との恋愛だった。

有栖は父・仲川市郎(安田顕)になかなか妊娠の事実を告げられないばかりか、瞳子に住む場所やアルバイト先まで世話になっているにも関わらず、ちょっとした喧嘩(けんか)で家を飛び出してしまう。

こうした有栖の幼稚さが浮き彫りになっていたのと対比するように、瞳子は大人として冷静に有栖に接する。しかし、たまたま知り合った相手のために車まで購入する姿勢には「そこまでするだろうか?」とリアリティの欠如を感じてしまうことも。

有栖は息子の海を出産。市郎や瞳子、そして、元恋人で海の父親・麻生康介(八木勇征)や友人の黒澤祐馬(鈴鹿央士)らと接し、自身の置かれた状況や、海のことも含めた未来に目を向けながら、一つひとつの事柄に答えを出していく。その姿には、有栖の成長があらわれていた。

有栖が着実に歩みを進めていくなかで、瞳子も自身の病気や仕事、夢、そして家族やパートナーと向き合っていく。40歳になった瞳子は、病気を治療しつつ、加瀬息吹(上杉柊平)と新しい関係性を築き、夢を叶(かな)えることも諦めない。有栖の成長を直近で見守りながら、人生とは? 自分の幸せとは? と時間をかけ丁寧に考え、決断する瞳子の姿勢に、同年代を中心にした視聴者は、きっと励まされたはずだ。

有栖が、瞳子とともに育児や家事をしながら、仕事や学業に邁進(まいしん)していく過程には、彼女たちが目指す新しい家族像が顕現していたように思える。

互いの存在があって人生に向き合えた

『18/40』は、女性同士の連帯が描かれる、いわば「シスターフッド」に分類される作品だろう。近年国内で公開された映画では、『プリテンダーズ』(2021)『君は永遠にそいつらより若い』(2021)『メタモルフォーゼの縁側』(2022)も、同じジャンルの作品に感じられる。

中でも、“年の差”という観点からいうと、『18/40』は『メタモルフォーゼの縁側』と共通している。この映画は、芦田愛菜演じる女子高生の佐山うらら(17歳)と、宮本信子演じる老婦人の市野井雪(75歳)が、ボーイズラブ漫画を通じて交流をはじめる物語だ。

二つの作品に流れる空気は異なるけれど、どちらも、置かれた環境の違う二人が出会い、お互いの価値観を照らし合わせ、時には距離を置きながら「自分のやりたいこと」を模索していく。そして、ポイントとして“年の差”のある女性同士が上手く連帯するための関係性が浮かんでくる。

それは、とあるきっかけで二人の関係が切れかけたとき、年長者が年少者に対し、一歩引いて修復のための余白をつくることだ。

『18/40』では、瞳子の家を出ていってしまった有栖が戻ってきやすいように、瞳子が有栖を誘い、二人で海に出かけるシーンがあった。どちらか一方が広い心を持ち、もう一方の心境や、互いの状況を俯瞰(ふかん)する視点を持っているのだ。こういった余裕は、同年代の女性同士をメインに据えたシスターフッドの作品には、あまり感じられないように思える。

5年の時を経て、瞳子は加瀬とともに金沢で暮らし、“自分のギャラリーを持つ”夢を叶えた。有栖も、成長した海と、そばで支え合った黒澤祐馬(鈴鹿央士)とともに、学芸員になる夢を叶えている。

もし、有栖が“産む選択”をしていなければ。育児と学業を両立することを、どこかで諦めていたら。5年後に描かれた未来が実現しなかった可能性は、大いにあった。有栖が自分で決断したことを、迷いながらも繋ぎ止めることができたのは、瞳子のおかげだろう。そして、瞳子もまた有栖の存在によって、夢やパートナーシップにおける最善な選択ができている。

お互いの存在によって、自身の人生に向き合い、オーダーメイドな幸せを模索する。彼女たちの姿は、シスターフッド以上に、血縁関係にない人と人が手を取り合って生きる崇高さを見せてくれたと思う。

18歳と40歳、女同士の連帯が「当たり前」を変えていく 『18/40~ふたりなら夢も恋も~』最終回 【イラストで見る】ドラマ『18/40~ふたりなら夢も恋も~』

『18/40~ふたりなら夢も恋も~』

TBS系火曜22時~
出演:福原遥、深田恭子、鈴鹿央士、上杉柊平、出口夏希、長澤樹、八木勇征、嵐莉菜、美村里江、松本若菜、髙嶋政宏、片平なぎさ、安田顕ほか
脚本:龍居由佳里、木村涼子
音楽:吉俣良
主題歌:Ado「向日葵」
プロデュース:韓哲、荒木沙耶、内川祐紀
演出:福田亮介、松木彩、宮﨑萌加

ライター。映画、ドラマのレビュー記事を中心に、役者や監督インタビューなども手がける。休日は映画館かお笑いライブ鑑賞に費やす。
イラストレーター。ドラマ、俳優さんのファンアートを中心に描いています。 ふだんは商業イラストレーターとして雑誌、web媒体等の仕事をしています。
ドラマレビュー