戻ってきた元恋人に「海は私の子どもです」。18歳の母・有栖(福原遥)が見せた成長 『18/40~ふたりなら夢も恋も~』7話

ドラマ『18/40~ふたりなら夢も恋も~』(TBS系)は、福原遥演じる18歳のキュレーター志望・仲川有栖と、深田恭子演じる40歳のアートスペシャリスト・成瀬瞳子をメインに繰り広げられる、女性の生き方を描いた物語。「妊娠・出産」や「キャリア」など、人生のステージが変わる局面に立たされた女性が、どんな選択をするかに注目が集まる。麻生康介(八木勇征)と再会した有栖の成長が描かれた第7話は、本作を象徴する回となった。
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妊娠と出産を通して成長した有栖の言葉

カナダへ留学していた康介(八木)が、有栖(福原)の元へ帰ってきた。彼は有栖の元恋人で、海の父親だ。自身の母親からは「有栖は子どもを産まないと決めた」と聞かされていたが、有栖の友人・西村世奈(出口夏希)の連絡で、それが嘘(うそ)だったことを留学先で知る。あらためて話し合いの場を設けた有栖と康介。二人が向かい合うシーンは、このドラマを象徴する回となった。

「俺にも支えさせてもらえないか」「(海は)俺の子どもでもある」と言葉を連ねる康介に対し、有栖はきっぱりと「いいえ、海は私の子どもです」と主張した。“母は強し”だなんて決まり文句でまとめたくはないが、妊娠や出産が明らかに有栖を成長させていることが伝わる。康介自身が真摯(しんし)に誠実に、なんの取り繕いもなく謝罪しているからこそ、中途半端に許してはいけない。

その後、康介の両親は有栖にわびるため、瞳子の自宅を訪れる。言葉は丁寧ながら、体よくお金で解決しようとする姿勢が透けて見える彼ら。けれども、追いかけるようにして現れた康介は「これは俺の問題なんだ」「頼むから帰って」と強く示した。

続く有栖の父・仲川市郎(安田顕)と康介が対峙(たいじ)するシーンも圧巻。無言で康介の胸ぐらをつかむ市郎の気迫は、娘である有栖をおもんぱかる気持ち、大事な存在を軽んじられた悔しさに満ちていた。きっとこの先、何があっても、市郎が康介を心から許し、受け入れることはない。その覚悟が垣間見える表情だった。

康介と瞳子の母に見る子への不誠実な態度

振り返ってみれば康介の母は、有栖の妊娠がわかった当時も、いっさい自分の息子を信じていなかった。あのときも、親だからという理由だけで有栖と康介の間に割って入り、さっさとお金で解決しようとした。息子の人格を少しでも信じ、一歩引こうと思っていれば、到底できないことのように感じる。

こういった親の立場の思考として、子どもを自身の所有物のように思っているというとらえ方もあるだろう。まだ子どもだから判断能力がない、自分が率先して問題解決に動いてあげなければ、と、親は責任感の元で動いているのだ。たとえ子どもが大学生になろうとも、その感覚は変わらないのかもしれない。

康介の母が不誠実な態度なら、ある意味、瞳子(深田)の母・成瀬貴美子(片平なぎさ)も不誠実である。病気のことを自分の口から説明しようとしていないからだ。母であるがゆえ、子どもに心配をかけさせまいとする心情はわかる。しかし、子どもの立場からすれば、たまったものではない。

親自身から病気のことを相談してもらい、ともに悩み、治療方針について話し合うのが家族の形ではないだろうか。母から娘に対する心配や思いやりを越え、娘を一人の人間として信頼し尊重しているのであれば、少なくとも、病気のことを隠したまま故郷へ帰ることはできないはず。

康介の母と瞳子の母は、おそらく意図的に“悪い母”と“良い母”の対比として描かれているのだろうが、それぞれの子への信頼のなさや距離感は、もしかしたら似ているのかもしれない。

北香那だから実現できる“憎めない”恋のライバル

瞳子と加瀬息吹(上杉柊平)の関係が進展。二人で会い、真正面から話をし、瞳子は「私と付き合ってください」と伝えることで加瀬の気持ちに応えた。恋のライバルとして、加瀬が働く運送会社の新入社員・榊原透子(北香那)の存在が気になるところだが、よくよく考えれば、加瀬は最初から瞳子のことしか見えていない。

頭を打ち、肩を痛めた関係で少しのあいだ入院していた加瀬。傍らには当たり前のように透子が付き添っていた。瞳子がお見舞いに持ってきた差し入れを「ありがとうございます」と受け取る様(さま)は、まるでパートナーのよう。視聴者の中には「あなたに持ってきたわけではない!」と突っ込んだ人もいたのではないか。

しかし、なぜか透子を嫌いにはなれない。彼女自身、ハキハキとした物言いが気持ちよく、裏表や駆け引きとは無縁の“体育会系”だからかもしれない。瞳子に対しても「もしかして加瀬さんのことが好きですか?」「(私は加瀬さんのことが)好きです!」と明確に示していた。透子を演じる北香那の表現力でもって実現できる、憎めない恋のライバル像ができあがっている。

瞳子と加瀬が関係を深めたことで、今後もしかしたら透子との一悶着(ひともんちゃく)もあるかもしれない。しかし、彼女のキャラクターなら、そこまで泥沼化はしないだろう。あらためて有栖に告白しフラれてしまった黒澤祐馬(鈴鹿央士)も、彼に思いを寄せる光峯綾香(嵐莉菜)も、裏でコソコソと工作しそうな人物には見えない。いや、綾香は少々怪しいかもしれないが……。

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『18/40~ふたりなら夢も恋も~』

TBS系火曜22時~
出演:福原遥、深田恭子、鈴鹿央士、上杉柊平、出口夏希、長澤樹、八木勇征、嵐莉菜、美村里江、松本若菜、髙嶋政宏、片平なぎさ、安田顕ほか
脚本:龍居由佳里、木村涼子
音楽:吉俣良
主題歌:Ado「向日葵」
プロデュース:韓哲、荒木沙耶、内川祐紀
演出:福田亮介、松木彩、宮﨑萌加

ライター。映画、ドラマのレビュー記事を中心に、役者や監督インタビューなども手がける。休日は映画館かお笑いライブ鑑賞に費やす。
イラストレーター。ドラマ、俳優さんのファンアートを中心に描いています。 ふだんは商業イラストレーターとして雑誌、web媒体等の仕事をしています。
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