仕事一筋の女性は“幸せではない”のか? 『18/40~ふたりなら夢も恋も~』6話

ドラマ『18/40~ふたりなら夢も恋も~』(TBS系)は、福原遥演じる18歳のキュレーター志望・仲川有栖と、深田恭子演じる40歳のアートスペシャリスト・成瀬瞳子をメインに繰り広げられる、女性の生き方を描いた物語。「妊娠・出産」や「キャリア」など、人生のステージが変わる局面に立たされた女性が、どんな選択をするかに注目が集まる。第6話では、有栖と瞳子が子育てに奮闘する姿に焦点が当てられる。
有栖(福原遥)の出産シーンに圧倒。「孫を抱かせてあげたい」瞳子(深田恭子)の呪縛に母は 『18/40~ふたりなら夢も恋も~』5話 戻ってきた元恋人に「海は私の子どもです」。18歳の母・有栖(福原遥)が見せた成長 『18/40~ふたりなら夢も恋も~』7話

家族以外も協力し合う子育ての形

有栖(福原)の息子は海(かい)と名付けられた。瞳子(深田)をはじめ、瞳子の母・成瀬貴美子(片平なぎさ)、有栖の父親・仲川市郎(安田顕)、黒澤祐馬(鈴鹿央士)ら有栖の友人たちなど、有栖の子育てを支えるたくさんの人たちがいる。

そのなかで、有栖と血縁関係にあるのは、父の市郎のみ。彼らのやりとりを見ていると、子育ては夫婦や家族でするもの、といった無自覚な価値観を、根底から覆してくれる。

瞳子が2週間の有給を取り、有栖とともに海の世話に集中する描写は、その最たるものではないだろうか。瞳子は最初こそ「育休を1カ月取得する」と主張していたが、さすがにその申請は通らなかった。それでも、肉親ではない子どもの世話をするための「有給2週間」は、実質育休と変わらない。

実の両親であっても、まだまだ育休制度を利用するにはハードルがある世の中。然(しか)るべき手順と権利でもって制度を使っても、復帰後のキャリアアップが厳しくなる現実もある。母親と父親がそろって育休を取得できるケースも稀有で、信じ難いことだが、父親側が育休を取得しようとすると物珍しい目で見られることも多い。

経団連の調査によると、男性の育児休業取得率は、2021年から22年にかけて29.3%→47.5%と18.2%アップ。このデータを「上昇傾向にあるから良し」とみるか、「これだけ男女平等や働き方改革が叫ばれているなかで、半数にも満たない」とみるか。『18/40』のように「子育ての形にも多様性がある」「人も物も制度も、子育てに使えるものはどんどん使う」……そんなメッセージが含まれたドラマが増えれば、少しずつ現実も変化するかもしれない。

女性は仕事だけに幸せを見出してはいけないのか?

これまで、18歳で妊娠・出産した有栖をとりまく現状に重きが置かれていた『18/40』だが、海の出産を境に、瞳子と加瀬息吹(上杉柊平)をめぐる恋模様にもスポットライトが当てられる。有栖と祐馬で協力し合い、瞳子と加瀬を二人にする時間をつくるなど、「(瞳子の)背中を押す」様子はほほえましい。

しかし、有栖の「握力全開で幸せをつかんでほしい」といった言葉や、貴美子の「仕事もおせっかいもいいけど、自分の幸せを後回しにしやしないか心配」といった言葉に、少しのモヤモヤを覚えるアラサー・アラフォー女性も多いのではないだろうか。

瞳子自身、人並みに結婚や出産を望みつつも、自分の仕事に誇りを持ちながら突き進んできた人だ。その生き方を選んだのは、「女も手に職」という母親からの教えを意識した面もあるのかもしれないが、「結婚や出産という幸せ」を泣く泣く我慢して仕事を選ばざるを得なかった、というわけではない。それは順番の問題で、瞳子は人生において“いったん”仕事を優先しただけのことである。

自分の幸せを後回しにしているのでも、ましてや、仕事に全力を注ぎつつ有栖のフォローをしている現状を“不幸”ととらえているわけでもないだろう。そもそも、仕事一筋で、仕事そのものに幸せを見いだす生き方は、女性として不自然で不幸な状態なのだろうか?

もちろん、有栖や貴美子が瞳子の恋愛を心配するのは、加瀬という具体的な相手がいるからだ。それでも、考えてしまう。恋愛よりも仕事に生きがいを見いだす世の女性が受ける、世間や身内からの筋違いな目線はいつまでもなくならない、と。

有栖と瞳子、それぞれに忍び寄る“恋のライバル”

瞳子と加瀬が少しずつ関係を進展させるなか、その恋愛を脅かす存在・榊原透子(北香那)が登場する。彼女は加瀬が働くファインアート運送に入社してきた社員。加瀬が指導役に任命された。元野球選手と元ハンドボール選手という共通点もあり、過ごす時間の長い二人の距離は否応なく縮まっていく。

仕事中の事故で頭を打ち、救急車で運ばれた加瀬に付き添う透子。加瀬をめぐって、二人の女性が対立する構図になる。第三者視点からみれば、すでに加瀬から好意を受けている瞳子に軍配が上がりそうだ。しかし、瞳子は加瀬からの告白を受けつつも返事を保留している状態。その理由は二人の年の差にあり、加瀬の身近にその“難点”をクリアしている女性が現れたとなれば……。瞳子は身を引いてしまうのではないだろうか。

片や、有栖の恋愛模様にも動きが。カナダに行って以来、とんと音沙汰がなかった、海の父親でもある元恋人の麻生康介(八木勇征)が、ふたたび有栖の前に現れる。同じタイミングで祐馬も姿を見せ、まさに一触即発の空気に。あまつさえ、祐馬が有栖に「好きだ」と告白する展開で、6話は幕を閉じた。7話以降、瞳子と有栖の恋愛がグンと音を立てて動きそうな気配がある。

有栖(福原遥)の出産シーンに圧倒。「孫を抱かせてあげたい」瞳子(深田恭子)の呪縛に母は 『18/40~ふたりなら夢も恋も~』5話 戻ってきた元恋人に「海は私の子どもです」。18歳の母・有栖(福原遥)が見せた成長 『18/40~ふたりなら夢も恋も~』7話

『18/40~ふたりなら夢も恋も~』

TBS系火曜22時~
出演:福原遥、深田恭子、鈴鹿央士、上杉柊平、出口夏希、長澤樹、八木勇征、嵐莉菜、美村里江、松本若菜、髙嶋政宏、片平なぎさ、安田顕ほか
脚本:龍居由佳里、木村涼子
音楽:吉俣良
主題歌:Ado「向日葵」
プロデュース:韓哲、荒木沙耶、内川祐紀
演出:福田亮介、松木彩、宮﨑萌加

ライター。映画、ドラマのレビュー記事を中心に、役者や監督インタビューなども手がける。休日は映画館かお笑いライブ鑑賞に費やす。
イラストレーター。ドラマ、俳優さんのファンアートを中心に描いています。 ふだんは商業イラストレーターとして雑誌、web媒体等の仕事をしています。
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