鈴(吉高由里子)に迫る黒い影 『星降る夜に』5話は大切な人との向き合いも教えてくれた

ドラマ『星降る夜に』(テレ朝系)は、とある理由から大学病院を辞めた産婦人科医・雪宮鈴(吉高由里子)と、ろう者の遺品整理士・柊一星(北村匠海)の、運命的な出会いから始まるラブストーリーです。第5話では、前回少しだけ明らかになった鈴の過去が深く掘り下げられました。
“子どもを持たない”選択をめぐる『星降る夜に』4話、吉高の存在感も際立つ

鈴の過去と、残るトラウマ

同期に頼まれ、断りきれずに救急車で受け入れた患者が亡くなってしまった件で、訴えられた過去がある鈴(吉高)。彼女が大学病院を去り、マロニエ産婦人科医院に来た理由でもある。その一件が、マロニエのSNSで言及されていた。「雪宮鈴は人殺し」「マロニエに行くな」との心ない書き込み、診療のキャンセルが相次ぐ。

鈴の自宅には嫌がらせの貼り紙がされたり、窓からブロック石が投げ込まれたりなど、警察沙汰になってもおかしくない事態にまで発展してしまう。

マロニエのスタッフが「なんでみんなネットばかり信じるのだ?」と口にしている。多くの人は実生活において、SNSなどの恩恵を存分に受けているだろう。けれど、明るい面だけではなく、暗い面も無視してはいけない。実際には目に見えない、水面下をひっそりと漂う言葉たちは、ふとした瞬間に押し寄せて心を覆ってしまう。

幸いにも、鈴には一星(北村)や佐々木深夜(ディーン・フジオカ)がいる。同じマロニエに勤める佐々木は、落ち込む鈴に自身の白衣を着せてあげたり、嫌がらせを受ける鈴を身を呈して守ってあげたりした。薄い白衣は、彼の見せる“頼りない優しさ”の象徴かもしれないが、十分に鈴の心を支えてくれているだろう。

対話の大切さを教えてくれる仲直りシーン

一星の同僚・佐藤春(千葉雄大)は、妻・うたが妊娠したことで心が揺れていた。社会からドロップアウトした過去を持つ春にとって、「子を持ち親になる」ことが怖くてたまらない。自分にそんな責任が背負えるのかと、そればかり考えている。

引きこもりになってしまった過去の春を助けたのは、一星だった。亡くなった人に敬意を表しながら仕事をする一星を見て、春は同じ仕事を志した。外の世界に戻るきっかけを与えてくれた一星は、今回も知らぬうちに、春に手を差し伸べている。

自分が父親で子どもは幸せなのだろうか、うたのことだって幸せにできていないのに、と打ち明ける春に対し、うたも怖いかもしれない、話してみろよ、と背中を押す一星。

気まずくなっていた一星と春は、一緒にお酒を飲みながら、手話で「ごめん」と謝り合った。この二人には、この二人のペースで積み上げてきた時間と言葉がある。その厚みを感じられるシーンだった。

一星の言葉で勇気を得た春は、うたとしっかり向き合い、互いの怖さを共有し合う。家族だからって、夫婦だからって、なんでも分かり合えているわけではない。不安を理解し合うには、言葉が要る。大切な人だからこそ、対話しなければならないことを改めて教えてくれる。

順調だった一星と鈴の関係が……

これまでの回と比べると、一星と鈴のキュンとするシーンは少なめだったように思える。過去の裁判の件で、自宅にまで嫌がらせの手が伸びてきてしまった鈴を助けてくれたのは、主に佐々木だった。

鈴の元へ駆けつけた一星は、鈴の心配をするよりも先に、自分ではなく佐々木が家にいることを非難。「なんで俺に何も言わないんだ」「頼りないから? 年下だから?」と手話で訴える様子には、切なさを感じる反面、鈴の気持ちを慮ってあげてほしいとも思ってしまう。

ついさっきまで、手話で「鈴、好きだ」「知ってる」とやりとりし、いつもの仲良しっぷりを見せてくれていたのに。この件についてはSNSでも多くの言及が見られ、1話冒頭の“最速キスシーン”同様、少々物議を醸しているようだ。

しかし、一星を演じる北村匠海はこれまで、映画『君は月夜に光り輝く』(2019)や『思い、思われ、ふり、ふられ』(2020)などの王道ラブストーリーはもちろん、『東京リベンジャーズ』シリーズ(2021、2023)をはじめとする熱血で真っ直ぐな主人公まで、幅広く演じてきた経歴がある。

王道ラブストーリーの要素に加え、熱血主人公の“まっすぐさ”というエッセンスも入った一星という役柄は、北村の引き出しを持ってすれば十分に表現しきれるものであるはず。信頼があるからこそ、若干「あれ?」と思うシーンはあれど、安心して見続けようと思えるのかもしれない。

第5話の終盤、これまで順調に思えた一星と鈴の関係に、一抹の不安が。鈴に起こった嫌がらせの件で、喧嘩のような形になってしまった二人が、仲直りのために会う約束をする。鈴が、車で迎えに来た一星の元へ駆け寄ろうとすると、運転席に座る一星に覆い被さる北斗桜(吉柳咲良)の姿が。一星が勤める「遺品整理のポラリス」の社長・千明の娘で高校2年生だ。

キスしているように見えただけ、と信じたい気持ちもあるが、次回6話の予告を見る限り、見間違いではなさそうだ。恋愛ドラマにおいて、恋のライバルが出現する展開は王道ではあるけれど、ついにやってきてしまったピンチに心がざわめく。ドラマ『恋する母たち』(2020・TBS系)や『あのときキスしておけば』(2021・テレ朝系)などを手がけてきた脚本家・大石静は、どんなストーリーを当てはめてくるのだろうか。

“子どもを持たない”選択をめぐる『星降る夜に』4話、吉高の存在感も際立つ

『星降る夜に』

テレ朝系火曜21時〜
出演:吉高由里子、北村匠海、千葉雄大、水野美紀、光石研、ディーン・フジオカほか
脚本:大石静
音楽:得田真裕
主題歌:由薫『星月夜』
挿入歌:NCT ドヨン『Cry』
ゼネラルプロデューサー:服部宣之(テレビ朝日)
プロデューサー:貴島彩理(テレビ朝日)、本郷達也(MMJ)
監督:深川栄洋、山本大輔

ライター。映画、ドラマのレビュー記事を中心に、役者や監督インタビューなども手がける。休日は映画館かお笑いライブ鑑賞に費やす。
福岡県出身。現在は大阪在住のイラストレーター&クリエイター。"変化を起こすトキメキ"をテーマにPOPなイラストを描いています。WEBサイト、ノベルティーグッズ、イベントロゴ、動画などでイラストを提供中。趣味は映画、ドラマ、アニメ、ミュージカルなど鑑賞に偏りがち。
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