一星、佐々木、そして鈴の過去に触れる『星降る夜に』3話

ドラマ『星降る夜に』(テレ朝系)は、とある理由から大学病院を辞めた産婦人科医・雪宮鈴(吉高由里子)と、ろう者の遺品整理士・柊一星(北村匠海)の、運命的な出会いから始まるラブストーリーです。第3話では、一星、マロニエ産婦人科に勤務する新米医師・佐々木深夜(ディーン・フジオカ)、そして鈴自身の過去が垣間見られました。
親のいない子どもは「かわいそう」?『星降る夜に』第2話で描く“生き方の選択肢”

恋の始まりに心浮き立つ鈴と、嫉妬に揺れる一星

前回の終盤にて、踏切越しに「雪宮鈴、好きだ」と告白した一星(北村)。雪が降っているロマンチックな状況とあいまって、本作の胸キュンベストシーンに名を連ねそうだ。しかし、鈴(吉高)にとっては「10の年齢差」が心のブレーキとなり、思わず一星に対し「ステイ」と伝えてしまう。

思いのままに交流を重ねたいとエンジンをふかす一星だが、鈴自身も、恋が始まる予感に腰が引けているわけではなさそう。一星とコミュニケーションを取るため、手話教室に通い始めるあたりから、彼女の心境の変化がうかがえる。ここで、一星が勤める「遺品整理のポラリス」の社長・北斗千明(水野美紀)と再会する鈴。北斗も一星のために手話教室に通っているのかと思うと、心優しさを感じる。

一星のパーソナリティと、耳が不自由な人と健聴者との恋愛といった題材から、ドラマ『silent』(フジ系)を思い出す方も多いのではないだろうか。まさに新進気鋭と言える脚本家・生方美久による物語でも、中途失調者の想(目黒蓮)と、健聴者の紬(川口春奈)の交流が細やかに描かれていた。

『silent』と『星降る夜に』で決定的に違う点は、「耳が不自由であることをどれだけ前面に出しているか」にあるだろう。

『silent』では、中途失聴者である想の心の動きはもちろん、耳が聞こえない事実がどれだけ周囲の人間との交流に影響を及ぼすかについて、想自身が事実を受け入れつつ共生しようとする過程が、実に丁寧に表現されていた。

『星降る夜に』は、あえて一星の“耳が不自由である”点には重きを置いていないように受け取れる。実際、第2話では鈴が一星に対し「(両親がいない、耳が聞こえないあなたは)かわいそうなの?」と問いかけていた。耳が不自由であることは、鈴と一星が関係を築きあげていくうえで、どんな足枷にもならないことを示している。

鈴に一目惚れしてしまった一星にとって、彼女のフラットな姿勢は喜ばしいものであるはず。だからこそ、鈴と佐々木(ディーン)がふたりっきりでいる場面を見たときのショックは、計り知れないものがあっただろう。現に、鈴と佐々木はこの少し前まで佐々木の自宅で、ソファに横並びに座り、重い話題を話していたのだ。

大切な人の死を経験し、生きる道を決めた2人

佐々木が鈴に話したのは、自身が産婦人科医を目指すにいたった理由について。予想はできていたが……やはり、佐々木は妻と子を亡くしていた。

一気に妻と子を亡くす経験と、そこから生まれる悲痛は、想像しようとしてもできるものではない。ましてや、生まれてくるはずだった子の顔さえ見られなかったのだ。その場で、誰よりも泣き、深く悲しんでいたのが、当時まだ研修医だった鈴。佐々木は、そんな鈴の姿を見て「産婦人科医になろう」と心を決めたのだと話す。

大切な人の死によって、職業を決めた人物はもうひとり。一星が遺品整理士になった理由について、鈴と再会した北斗がこっそり教えてくれた。

亡くなった両親の遺品を整理するのに猛反対していた一星。しかし、「これはあなたがお食いぞめのときに使った食器だから、残しておきましょう」「あなたとお母さんの写真ばかり、お父さんが撮ってくれていたんですね」と言いながら、残された品物に込められた思いを汲み取ってくれた北斗に対し、心を開く。

すぐさま「遺品整理士になりたいからここで働かせてほしい」と事務所にやってきた一星の行動力もさることながら、「耳が不自由だから難しいかもしれない」などとは一切言わず受け入れた北斗の包容力も見習いたい。

ゼリーとデコチューで泣ける理由

鈴と佐々木がふたりっきりでいる現場を目撃してしまった一星。ショックのあまり風邪をひいて寝込んでしまったのには、驚いた。ゼリーを持って看病にくる鈴も、鈴のスプーンからゼリーを奪い取る一星のやりとりも、すべてが可愛らしい。SNS上では「1話冒頭の唐突なキスシーンで離脱してしまった皆さま、2〜3話も素晴らしいので観て」といったような投稿も散見される。

極めつけは、ステイしてきた鈴への仕返しにと、「キスをステイ」した一星に対し「デコチュー」した鈴。後ろに流れる由薫の『星月夜』のおかげもあってか、ふたりのスキンシップにいちいちキュンとしつつも泣けてくる。

SNS上に「最近の日本のドラマはあんまりイチャイチャしないけど、『星降る夜に』は最高」といった趣旨のコメントもみられるように、キスやハグなどの触れ合いが多めな本作。しかし、決していやらしさがなく、むしろ微笑ましさが勝つのが不思議だ。

ずっとこのふたりが幸せでありますように、と思わず願ってしまうのは、もしかしたら、この恋愛には悲しい終わりがあると予感してしまうからだろうか。

親のいない子どもは「かわいそう」?『星降る夜に』第2話で描く“生き方の選択肢”

『星降る夜に』

テレ朝系火曜21時〜
出演:吉高由里子、北村匠海、千葉雄大、水野美紀、光石研、ディーン・フジオカほか
脚本:大石静
音楽:得田真裕
主題歌:由薫『星月夜』
挿入歌:NCT ドヨン『Cry』
ゼネラルプロデューサー:服部宣之(テレビ朝日)
プロデューサー:貴島彩理(テレビ朝日)、本郷達也(MMJ)
監督:深川栄洋、山本大輔

ライター。映画、ドラマのレビュー記事を中心に、役者や監督インタビューなども手がける。休日は映画館かお笑いライブ鑑賞に費やす。
福岡県出身。現在は大阪在住のイラストレーター&クリエイター。"変化を起こすトキメキ"をテーマにPOPなイラストを描いています。WEBサイト、ノベルティーグッズ、イベントロゴ、動画などでイラストを提供中。趣味は映画、ドラマ、アニメ、ミュージカルなど鑑賞に偏りがち。
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