ライアン・レイノルズ『アダム&アダム』大人の自分と子どもの自分がバディを組む痛快タイムトラベル
●熱烈鑑賞Netflix113
「過去の自分と会う」というストーリーを主軸に据え、子ども時代の自分とバディを組んでしまうタイムトラベル。それがNetflix映画『アダム&アダム』だ。
主演は、『デッドプール』『ヒットマンズ・ボディガード』そして『名探偵ピカチュウ』でピカチュウ役も務めたハリウッドきってのコメディ俳優ライアン・レイノルズ。監督は『フリー・ガイ』でレイノルズとコンビを組んだショーン・レヴィだ。
2人のアダムの冒険
戦闘機のパイロット・アダム(ライアン・レイノルズ)は、ディストピアと化した2050年を変えるため、2018年にタイプワープを狙うが、不時着してしまう。そこで出会ったのは、身体が弱くイジメられがちな12歳の自分(ウォーカー・スコーベル)だった。2人のアダムは未来の荒廃を防ぐため、時間旅行技術を研究する自分の父・ルイス(マーク・ラファロ)のいる2018年へ向かう。
どういう原理で時間を飛び越えるかなどの科学的な根拠の説明はほぼないが、登場人物が『ターミネーター』というワードを出したりして、「ああいう世界観だよ」と 抜け抜けと共通認識に訴える。未来人と遭遇した時のタイムトラベルに対する理解が早いのも、理系オタクだったりなど、なんらかの下地がある人間ばかりなので、違和感なく飲みこめる。
SFとして新鮮なワードと言えば「フィックスタイム」だろうか。「本来その人間が生きるべき時間軸」という意味で、このワードがあることで大人アダムと子どもアダムが一緒に存在することが成立している。
レイノルズは負けが似合う俳優
レイノルズを主役にするだけあってコメディ色が強い。
例えば、大人アダムと子どもアダムが出会うシーン。突然現れた大人アダムは脇腹を撃ち抜かれる大怪我を負っていて、子どもアダムに不審者扱いされる。絶体絶命のピンチ。しかし、必死で言い訳をする大人アダムの腹の傷口からは屁のような音が出てしまう。この音が妙なリアリティがある。確かにそれだけ大きな傷口ならそんな音が出るかも……。武器を構える子どもアダムの警戒心も解けようものだ。
子どもアダムがイジメられる場面に遭遇した時も、最初は「未来に影響が出ないように加勢はしない」と宣言するのだが、殴られる子どもアダムの姿を黙って見ていられず、結局いじめっ子を思いっきり恫喝してしまう。決めるべきところではしっかり決めるのだが、基本的にレイノルズは“負け”が似合う俳優なのか、寂しそうな表情、後悔する顔が抜群に似合う。
子どもレイノルズがレイノルズに“似ている”
そんなレイノルズと憎まれ口を叩き合い、ときに言い負かすのは子どもアダムを演じるウォーカー・スコーベルだ。この二人、顔が似ているわけではないのだが、言い回し、会話のテンポ、表情の作り方がどことなく似ている。レイノルズの過去の作品を参考にしたのか、それとも生来そういう個性の持ち主なのかわからないが、デビュー作となる12歳の少年の存在感は非常に大きい。
子どもアダムは、相手が自分なのをいいことに「なんでそんなにバカなの?」「身体を鍛えすぎたんじゃない?」などと言葉に容赦がない。大人アダムは軽い調子で反論しようとするのだが、いとも簡単に打ち負かされてしまう。未来を知る立場からの自分へのお説教も、刺さったり刺さらなかったりだ。
アクションあり、親子愛あり、CGもレベル高し。ちょっとエグめの下ネタも入るけれど、気軽に観られるコメディタッチのファミリー映画、おすすめです。
監督:ショーン・レヴィ
出演:ライアン・レイノルズ、マーク・ラファロ、ジェニファー・ガーナー他
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