COHINA代表・田中絢子さん「悩みの中にこそ、チャンスがある」小柄女性向けブランドにかける思い

身長150センチ前後の小柄の女性が着られる服を作ろうと、ファッションブランド「COHINA」を立ち上げた田中絢子さん(27)。口コミでCOHINAの服の評判が広がり、創業から3年で月商1億円にも成長しました。COHINA創業までの思いや、服作りを通じて実現したいことなどを田中さんに語ってもらいました。

現在、ファッションブランドCOHINAの代表兼ディレクターをしています。

私の身長は148センチ。他の人に比べて小柄で、着られるお洋服がほとんど無いことが、ずっと悩みでした。普通サイズの服を着ると襟元が大きく開きすぎるし、肩周りもドロップショルダーになってしまう。丈も長過ぎるから、どうしても服に“着られてる”感じになってしまうんです。

ファッションを楽しみたくても、身長が低いという“自分ではどうしようもない条件”の制約がある。デパートでの買い物は“着たい服”じゃなくて、“着られる服”を見つける作業になっていました。

市場に無いなら自分たちでお洋服を作ってみようと思い2018年、COHINAを立ち上げたんです。

COHINA提供

サイズもテイストも、探すのが大変だった

おしゃれに興味を持ち始めたのは中学1年の頃で、メイクやファッションが大好きな女の子でした。でも、学年が上がるにつれ、自分の世代を対象とした服と、着られる服にズレを感じるようになったんです。

身体に合わないので、キッズ用の服を買いに行くしかありませんでした。いまの小学校6年生の平均身長が150センチくらいで私とほぼ同じなので、着る服は11~12歳向けのもの。着ている服のタグにある「キッズ」の表記を見られて、恥ずかしい思いをしたこともあります。

大学生になってからは、サイズはもちろん、テイストにも違和感を抱くようになりました。キレイ目で大人っぽい服が着たくても、店員さんが勧めてくるのは可愛らしいお洋服ばかり。

当時はカジュアルな服が流行り始めた時期。オーバーサイズシルエットも人気を集めていました。ダボッとしたサイズの服やメンズパーカーをあえて着るファッションで、世の中の服がどんどん大きくなっていっちゃった。小柄女性が苦労する時代の始まりでした。

“まだないもの”を作りたくなった

大学時代は、インターンやボランティアで海外に行くなどアクティブに過ごしました。そして友達と一緒に立ち上げた学生団体で、フィリピンの女の子に夢を語ってもらう「ミスドリームコンテスト」というイベントを始めたんです。

出場する女の子にはメイクやドレスアップをしたうえで、歌やダンスを披露し、自分の将来の夢についてのスピーチもしてもらう。イベント自体は1日でしたが、3カ月くらいかけて準備しました。

その中で目の当たりにしたのが、女の子たちの顔つきがどんどん変わっていく様子。「こんな経験したのは初めて」って喜んでくれて、「もっとこうなりたい」と前向きな感情が出てくる。
彼女たちのキラキラした表情が印象的でした。

大学4年の頃の就職活動では、憧れの 大手IT企業から内定をもらいました。ただ、就活を通じて、“何かに参加すること”と“新しい価値を生み出すこと”の違いに気づいたんです。会社の中で本当にやりたいことがまだわからず、 自分の好きな領域で“まだ無いもの”を作りたくなったんですね。

当事者として私が考えられて、誰かの悩みの解決につながるようなこと――それが“やりたいこと”なんじゃないか、と。

色んな選択肢がある中で辿り着いたのは、ずっと悩んできた小柄女性向けの服作り。仲良い友達に雑談がてら話す中で、一緒にやることになりました。


「市場規模が小さすぎる」「ニッチ過ぎるのではないか」

就職活動などで知り合った社会人の先輩方に相談すると、ほとんどの人からネガティブな反応。「やっぱり難しいのかな」と思っていましたが、ある起業家の方が「一緒にやってみよう」と言ってくださったんです。

そこから一気に話が進み、COHINA は2017年10月のプレオープンを経て、翌年1月に創業。最初は新卒で入社した会社と二足のわらじで働き、後に退社してCOHINAのみに注力するようになりました。

デザイナーは自分、知り合いのお母さんが型紙起こし

アパレル関係の知り合いが全くいなかった私たち。初めは知り合いのつてを頼りに服を作るしかありませんでした。自分たちで考えたデザインを、知り合いのお母さんに型紙にしてもらって……。

中でも一番苦労したのが、生産をしてくれる工場探し。立ち上げたばかりのブランドで、素人だと知られると、途端に拒否されてしまうんです。国内工場は何十社も電話したし、ホームページから問い合わせもしましたが、全然見つかりませんでした。
大学生でも手が出せる価格帯で作ろうとすると、生産価格が高い国内工場では厳しいこともあり、早々に海外工場を探しました。

最終的に中国の工場で第1弾のセットアップを作ったのですが……シワシワでひどい仕上がり。服作りについて、当時は本当に知らないことだらけだったんです。学び始めるのが遅すぎました(笑)。

どう考えても失敗するやり方だったし、もっと怖がるべきだったかもしれない。でも、やりたいことがどんどん形になっていくことは、楽しくて仕方なかった。

仕事は山のようにあり、ギリギリで終電に乗れるか、みたいな毎日。服作りやマーケティング、経営のこと……全部、無知だったからこそ“やりたい”という自分の気持ちに純粋になれた気がします。

インスタライブは連続配信900日超

第1弾のサンプルができる前から、Instagramのアカウントを開設し、更新していました。普通は自社商品を宣伝することが多いと思いますが 、そもそも商品が無かったので「私の今日の私服」を載せたり、他ブランドのXSの着用感を紹介したり。「小柄女性にとって有益な情報を発信するアカウント」にしていました。

初めて商品ができた時はフォロワーの方々が、「ついにできたんだね!おめでとう!」と言ってくれて。まるで友達のような感覚で見守ってくれていたんです。

いまでは、「どんなことに悩んでいますか」「この商品いくらで 買いたいですか」といったことを、フォロワーさんにインスタ上で聞くことも。友達に聞くような感覚でお客さんにヒアリングができるので、商品作りにダイレクトに生きている。早々にコミュニティができたことはCOHINAの一番の財産です。

インスタライブの連続配信日数は先日、ついに900日になりました。

洋服について発信するときは、等身大。リアルな情報にするよう心がけています。
小柄女性の中には、通販で失敗した経験がある人がたくさんいるからです。「モデルさんが着てスタイル良く見えるのは 当然だけど、自分は着られない」という経験を、多くの人が 持っています。

服を着てからはもちろんですが、買うまでの過程も含めて「自分でも可愛く着こなせそう 」という思いを提供したい。イメージしやすいように、様々な身長、体形の人にモデルをやってもらっています。

インターネットが普及し、誰もが発信できる現代。高身長で 細いモデルさんよりも、リアリティーがある方が求められているように感じます。

ひと匙の“憧れ”は大切にしつつも、「みんなの“なりたいもの”をみんなで作っていこうよ」という気持ちを持って、お客さんに向き合っていきたいんです。

そんなCOHINAのモデルさんたちの中には、もともとお客さんだった人も。応募してくれるのは、アパレル関係や芸能関係に進みたかったけど、体型 を理由に諦めた人たち。その人たちが輝く場にもなっています。

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やりたいのは、自信を持つきっかけづくり

私たちって何かを見て「可愛い」と感じたり、「こうなりたい」って憧れたりしますよね。好きなものに近づきたいし、自分のことをもっと好きになりたい。

でも、小柄というだけで世の中の美の基準からは外れてしまう。私も学生の頃は、長身でおしゃれを楽しんでいる周りの友達がうらやましかった。卑屈になるようなことは無かったけど、あの頃は、「なりたい自分」を当たり前のように諦めていて、ジワジワと心が死んでいくような感覚がありました。

だからこそ服作りを通して、自信を持つきっかけを提供したいのかもしれない。思い返せば、中高時代はミュージカルをやる部活で衣装の担当をしていました。人に似合うものを提案し、その衣装を着た人の表情が輝く瞬間が、すごく好きだった。そして「ミスドリームコンテスト」の経験――。

自信を持つきっかけさえあれば、人は大きく変われる。生きていくうえで糧になるような“経験”にこそ、価値がある。それをつくってくれるのが、メイクやファッションの力です。

その軸は、COHINAを立ち上げてからも生きています。

お客さんの中には、「おしゃれが楽しいと初めて思えました」とか「プロポーズや入籍、両親への挨拶の日は全てCOHINAの服でした」と聞かせてくれる人もいるんです。
おしゃれが楽しくなると、些細な日常がキラキラし始めて、愛おしくなる。“たかが服”かもしれないけど、私たち小柄女性は、自分を何度も諦めてきてるから……卑屈にならなくて済むというだけで、前向きになれるんです。

着るだけで人生がパッと明るくなって、小柄女性自身が主役になれる。そんな服を、今後も作っていきたいです。

悩みにこそ、チャンスがある

昔は「世の中にフィットしない自分が悪いんだ」と思っていた時もありました。でも今は、高い身長に生まれ変わりたいと思いません。

身長が高かったらCOHINAはできていないし、COHINAがない人生は考えられない。小柄なこと自体、人と違う「いい味」って今は思えています。

悩んだり傷ついたりしてきたからこそ、同じ痛みを持った者同士で共感し合える。そうやってつながれるのが人間であり、人生の面白さだと感じます。

そして、悩みの中にこそ、チャンスがある。世の中が便利になるにつれ、不自由なことは少なくなってきていますよね。例えば移動も便利になったし、住み方だって自由になっている。多くの人が感じる悩みに対する解決策は、どんどん出てきている。

「次の課題はなんだろう」「新しい価値をどう提供していこうか」などと考える際には、自分ならではの着眼点や実体験が大事なんじゃないかな。

ニッチな悩みだとしても、新たな価値をつくることが、誰かの大きな勇気や希望になるかもしれない。「自分だけ」と思わずに、「これ、私だけじゃないよね」と次の一歩につなげていけば、コンプレックスが新たな価値を生む可能性もあるのです。

COHINA提供

COHINA

2018年創業の小柄女性向けファッションブランド。「あなたに陽が当たる服」をコンセプトに、"小柄女性の美しさ"を追求し、日々を自分らしく過ごせる服を贈る。

1989年、東京生まれ。香川・滋賀で新聞記者、紙面編集者を経て、2020年3月からtelling,編集部。好きなものは花、猫、美容、散歩、ランニング、料理、銭湯。
キレイの定義