【内田嶺衣奈のBon week-end!#5】学生時代の留学でハマったフランス、「語学が“幅”を広げてくれることに気付きました」
初めて覚えたのは「ボンジュール」
連載の初回でお話ししたように、タイトルのBon week-end!はフランス語で「良い週末を」の意味です。私にとってフランスは2度留学した馴染み深い場所。今回はこれまでの私と、フランスの思い出についての話にお付き合いください。
私は小中高一貫校に通っていました。小学校は若干名男子がいましたが、中高は完全に女子のみ。
小学校の頃の記憶はほとんどないのですが、小さな頃はかなりの泣き虫だったそう。一貫校なので、小学校からの同級生は、ほぼ幼馴染という感覚ですね。いまだに昔話に花が咲きますし、連絡を取っています。
学校は外国語教育に力を入れていて、小学生のときから授業でフランス語に触れていました。初めて覚えたのは「ボンジュール」。フランス語は発音がきれいで日本語にはない音が面白いと思いましたし、小学生向けの授業なので歌で学ぶ、といった内容だったんですよね。だから「楽しい」をきっかけに「好き」になりました。
中学ではダンス部に入りました。もともと幼少期から習っていたのと、部活自体も楽しそうだったから。部員は中高あわせて100人ほどの大所帯。その100人近いメンバーで創作ダンスを織り込んだミュージカルを毎年、公演していました。入部当初は大きな役なんて全然もらえなくて、鳥や海に扮していたのですが、みんなで必死に練習したり、作り上げて達成感を得たりすることがとにかく楽しかったですね。チームで何かをつくりあげることが好きなのは、今の仕事にも繋がっている部分だと思います。
中学生という多感な時期で、なかなかスムーズにはいかないこともありましたが、
今振り返るとそれも青春だった気がします(笑)。
カナダで、自分のフランス語で買い物ができた
そしてフランスに関しては文化を学んだり、映画を見るようになったりして、より深く知るにつれて興味を抱くように――。高校ではメインで学ぶ外国語を、英語かフランス語か選択できるのですが、既にフランスに魅了されていた私は吸い寄せられるようにフランス語のコースへ。
決定的にフランスにハマったのは、短期留学を経験してからですね。学校のカリキュラムで希望者は留学ができたので、高校1年の夏休みにフランス語と英語が公用語のカナダに同級生と一緒に留学しました。それぞれが各家庭にホームステイし、同じ学校に通っていました。私がお世話になったホストファミリーは若いご夫婦で、家の中ではフランス語と英語が両方飛び交っているグローバルな環境でした。現地ではとにかく必死に想いを言葉にし続けて、生きたフランス語が学べました。自分のフランス語で買い物ができたり、現地の学生さんと仲良くなれたりして、語学が自分の視野や価値観、人間関係の“幅”を広げてくれることに気付きました。根底に気持ちさえあれば、どうにか心は通うのですよね。
学校に行けば同級生に会える。休日はみんなでナイアガラの滝へ観光に行ったりしていたので、ホームシックにもならず、あっという間の楽しい留学でしたね。フランス語を話せるようになりたいという思いがより強くなりましたし、勉強のモチベーションも高まりました。
大学でカルチャーショック、授業に男の子が…
高校2年の冬には学生同士の交換留学プログラムを使って、フランスのマルセイユにホームステイへ。“交換留学”なので、私がホームステイした先のお子さんは逆に、私の実家に滞在して日本文化や日本語を学ぶという――。マルセイユは海鮮が有名で楽しみにしていたのですが、ホームステイ先で出てきたのはお肉が多かったです。家の中で議論が多かったことも、とても印象に残っていますね。フランスの人は食事をしながら政治などについて熱くディベートをするんです。そんな中で私は展開の早さに加えて専門用語が多過ぎて聞き取れなくて……。この留学では、フランス語を少しは話せるようになったのですが、一方で“追いつけない”もどかしさも感じました。
帰国後も学び続けたい思いが強かったので、大学も関連した学科に進もうと漠然と考えていました。そしてオープンキャンパスで色んな大学を巡る中で出会ったのが、上智大学。フィーリングが合う…と言いますか、私の通っていた学校の雰囲気となんだか似ていて、馴染みやすそうだったのです。ご縁あり、その後上智大の仏文科に進みました。
中高が女子高だったので入学当初は戸惑いの連続でした。そもそも授業に男の子がいるということがカルチャーショック……。最初はグループワークを一緒にすることすら、少しそわそわしました。運動系のサークル活動の激しさに驚いたことも。ただ、限られた人数で同じ授業を何度も一緒に受けるため、知り合いをつくりやすかったことが幸いでした。大学当時は、かなりアクティブに友達の輪を広げられたという印象がありますね。大学時代の友人とも今でもよく連絡をとりますが、みんなそれぞれの道を歩んでいて、いつも刺激を受けています。1つの世界にしか触れていないと凝り固まってしまう部分があると思いますが、様々な刺激が感覚をフラットに戻してくれるような気がします。
アンジェで人生最大のピンチ?
そして、フランスへの2回目の留学を大学のプログラムを利用して1年生のときにすることになります。このときにホームステイしたのがパリからはぐっと西の方の郊外にある小さな街、アンジェ。留学先の大学までバスでも時間がかかるうえ、バスの本数自体も少なくて。30分以上かけて歩いて通うこともありましたが、それが苦にならないくらい街並みが本当にきれいでした。緑や古い建物が多くて、人が温かく、所々に小さなカフェがあって。地元のスーパーも素晴らしくて、私の大好きなチョコレートの品揃えには衝撃を受けました。棚一面が全てチョコレートで埋め尽くされていてそこはもう楽園。あとはパンにも感動しました。普通のクロワッサンが、とにかく美味しいんですよね。大好きなチョコレートペーストをバターたっぷりのクロワッサンにつけて食べるという、カロリーお化けになった日々を過ごしていました。
この時のホームステイ先は、おじいちゃんとおばあちゃんの2人暮らしの家庭で、すごく良くしてもらいました。
ただ、そこで人生最大のピンチも……。家族と海に行ったとき、おじいちゃんが海辺で食用の貝類を大量に集めて、その中にあったのがなんと牡蠣。おじいちゃんは、その場で牡蠣の殻を割って私に「食べてごらん?」と勧めてきました。身の危険を感じて、おじいちゃんに「日本ではこういう取れたての牡蠣を、処理せずにそのまま食べるという文化がない」と必死に説明したんです。すると「なおさら、異文化を知る気持ちで食べた方がいい!」と言われて。優しさで勧めてくれているし、美味しそうではあるしと沸き起こる恐怖心を押し殺して……。意を決して食べたら、案の定体調が明らかにおかしくなって、24時間寝込んでしまい、その間の記憶がないんです!
その後、時間差でおじいちゃんも食当りになって。「嶺衣奈の体調不良がうつっちゃったよ」と言って、牡蠣が原因とは思っていない様子。「絶対牡蠣にあたったんだよ〜」と伝えたかったのですが、フランス語力の拙さで説明ができなくて……。なんだか悔しい思いをしました。一度あたると食べられなくなることも多いと聞きますが、私はそもそも苦しんだ間の記憶がないので、今でも大好物です。
そんなこんなでものすごく濃くて一番印象に残っている、このアンジェへの留学も短期間でした。長期留学を経験していれば、さらなる別の世界が見えたのかもしれません。それでも、フランスとつかず離れず、触れ続けてこられたのが良かったと今、振り返って思います。
大切な“非日常”や“リフレッシュ”する時間
ここまで読んでいただいたみなさまには伝わっていると思いますが、フランスが本当に大好き。街並みが素敵で美味しいものが多いことに加えて、言葉が通じるという点も大きいですね。街中どこでもアートに触れることができるし遊び心に溢れていて、大好きなカフェの数も豊富で、好きなものがぎゅっと詰まっている国です。
留学以降も、入社前とコロナの感染が拡大する2年前の2回、母と一緒に旅行するなど度々フランスを訪れました。2年前には工房と店舗が隣接している食器屋さんで長く使える味のある食器を購入したり、現代アートの美術館に行ったりと、これまでと少し違う楽しみ方もできるようになっていました。また近いうちにと思っていたのですが……。
こんなにも“遠くなる”日が来ることは想像もできていませんでした。コロナが収束したらどこかのタイミングで絶対、またフランスへ。パリはもちろんのこと、アンジェのような都市部から離れたところも是非訪れたいですね。
非日常に触れたり、リフレッシュしたりする時間は誰にとっても大切だと思います。刺激があるからこそ、日常をより頑張ることができますよね。私は夏休みを楽しみに1年の大半を生きているようなタイプ。休みの計画を立てたり、行く場所を悩んだりする時間が、すごく好きなので……。
コロナの感染状況も落ち着いてきている印象もありますので、もう少しの辛抱なのかなと思っています。
それではみなさま。
Bon-weekend!
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