【新連載:内田嶺衣奈のBon week-end!】働き方、放送のあり方……時代の変化の真っただ中にいる私たち

報道番組などに出演中のフジテレビアナウンサーの内田嶺衣奈さん。入社9年目を迎えて身近な人の結婚や出産が相次いだり、後輩を指導する立場になったり、「体」の変化を感じたり――。仕事やプライベートについて今感じていることや、高校と大学時代に留学したフランスへの思いなどを内田さんの等身大の言葉で、毎月第2土曜日にお届けします。

思いや悩みを共有できる場になれば

telling,読者のみなさん、初めまして。フジテレビの内田嶺衣奈と申します。現在は「Live News α」の金曜日のメインキャスターを担当。この7月からはtelling,で連載をしていた生野陽子アナウンサーの産休に伴い、後任として「FNN Live News イット!Weekend」のメインキャスターも務めています。

入社以来、日々の仕事に一生懸命に向き合っていたら、1年があっという間に終わっているという年を積み重ねてきました。今は31歳になり、結婚や出産への憧れもある一方、このまま仕事を続けたいという気持ちも強くて……今後の人生の選択について考える年齢なのだと感じています。

この連載が、同世代のtelling,読者の方と思いや悩みを共有できる場になればいいなと思っています。ちなみにタイトルのBon week-end!はフランス語で「良い週末を」の意味。2度留学し私にとってなじみ深いフランスについても、追い追い話していきたいと考えています。

大学在学中に強くなった「伝えること」への関心

初回は自己紹介も兼ねて、私がアナウンサーになった理由から。

子どもの頃から舞台などに触れる機会が多く、エンターテインメントの世界に携わりたいと強く思っていました。私の転機は上智大学4年のときにミスソフィアコンテストに出場し、ミスソフィアに選ばれたことだと感じています。歴代にはフジテレビの先輩である西山喜久恵さんやTBSの古谷有美さんなどアナウンサーになっている方が多かったので、アナウンサーという職業をより身近に感じて興味を持つように。コンテストでスピーチをしたりブログを書いたりする中で「伝えること」への関心も強くなりました。

母が元々フリーアナウンサーとして活動をしていたので、話などは聞いていましたが、大学生になるまでは自分がアナウンサーを目指すとは思っていませんでした。

ミスソフィアコンテストの前後に、友人から様々な業種の就職活動のエピソードを聞く機会が多かったことも関係しています。友人が自らやりたいことを突き詰めたり、夢に向かって頑張る姿に私も影響を受けたりして、“伝える職業に就きたい気持ち”と“自分の可能性を信じて頑張ろうという思い”が生まれました。ただ伝える手段は様々だと感じたので、私は就活ではアナウンサーに加えて、テレビ局の制作職や広告代理店、映画配給会社など幅広い業種・職種に応募しました。

「縁」と「運」で夢叶い、フジテレビアナウンサーに

テレビっ子だった私は、各局のアナウンス試験を受けましたが第一志望はフジテレビ。小さい頃から家のテレビに映っているのはいつもフジテレビの番組でしたし、朝起きるのが本当に苦手な私は「めざましテレビ」の高島彩さんの笑顔に日々、パワーをもらっていました。

実際にフジテレビにアナウンサーとして採用してもらったときは、信じられないという気持ち。本当に狭き門なので、いまだに「縁」と「運」があったのだと思っています。
母からは「おめでとう、よかったね」と。体力的にも精神的にもハードな仕事ということは聞いていたので「しっかりがんばってね」とも言ってもらいました。

入社後の最初のレギュラー番組は「すぽると!」と「笑っていいとも!」。「いいとも!」は32年の歴史の中で最後の半年という貴重な時期に関わる事ができ、最終回にも立ち会えたので、大きな経験であり思い出ですね。その後はスポーツや、情報、報道、バラエティー番組も。そして入社4年目から主に報道を担当しつつ、冬のシーズンには毎年フィギュアスケート中継にも携わっています。

現場に行かないと仕事ができない?

コロナ禍で私の働き方も変わりました。金曜~日曜は生放送の報道番組があるので必ず出社。それ以外の曜日でも取材先に足を運んだり、収録スタジオに行ったりしますが、自宅で番組やインタビューの準備をする日も増えました。テレワークが導入されたのは大きな変化。リモート会議や勉強会も多くなりました。フジテレビのアナウンス室は大所帯で、担当番組の生放送、収録の時間などがそれぞれ異なるので、全員のスケジュールを調整することはこれまでは困難でした。でもリモート会議などが積極的に導入され、室員の情報共有がしやすくなりました。

先日はフジテレビおうち応援プロジェクトの一つとしてアナウンサーが朗読し、無料配信されている「デジタル紙芝居」でリーダーを務めたのですが、ナレーションを収録する以外は全部リモート。

「アナウンサーは現場に行かないと仕事ができない」と思っていたのですが、リモートになると海外にいる選手や全国各地で行われた試合後のスポーツ選手への取材ができたり、その日のニュースについて専門分野の方にコメントしてもらいやすくなったりしました。ただリモートだと、どうしても生放送中に電波の状況が不安定になり音声や映像がとぎれとぎれになることも実際あり、神経を研ぎ澄ませている部分も。新しい時代の働き方や放送のあり方が浸透してきたと、肌で感じています。

一方で、今までの日常生活の楽しさや喜びは当たり前ではなかったと感じた1年半。家族や友人、同僚との些細な会話がストレス発散になっていたのだと気づかされました。以前の私は悩みが積み重なったら、学生時代からの友人と会って相談したり、意見をもらったりしていたのですが……。もちろんLINEしたり、電話したりという機会はあるのですが、会って話すことに強いありがたみを感じるようになりました。

今、私たちは時代の変化の真っただ中にいます。同世代の友人たちとよく話すのは、将来子どもが生まれたら、「新型コロナウイルス感染症が世界的に流行し、お母さん達はこんな時代を生きたのよ」と、このコロナ禍での社会環境の大きな変化について語ることになるのだろうと。

迫る東京五輪開幕「選手がパフォーマンスを出し切れる環境を」

そんな中で7月23日から東京五輪・パラリンピックが始まります。開催が決まったのが入社1年目で、決定特番をBSフジで担当。日本時間深夜に開催地が東京と決まった瞬間、スタジオにいた全員が興奮したことを今でも覚えています。末席ながら努力を積み重ねてきたアスリートを取材してきた立場の私は、とにかく選手たちが安心してパフォーマンスを出し切れる環境であってほしい、と心から願っています。

1990年1月、東京都生まれ。2度のフランスへの留学を経て上智大学文学部仏文学科卒業。2013年、フジテレビにアナウンサーとして入社。「すぽると!」や「笑っていいとも!」などに出演し、人気を集める。現在は「Live News α」金曜、「FNN Live News イット! Weekend」のメインキャスターを務める一方、フィギュアスケート中継や取材も継続的に担当している。趣味は料理、旅行や舞台・映画鑑賞。
ハイボールと阪神タイガースを愛するアラフォーおひとりさま。神戸で生まれ育ち、学生時代は高知、千葉、名古屋と国内を転々……。雑誌で週刊朝日とAERA、新聞では文化部と社会部などを経験し、現在telling,編集部。20年以上の1人暮らしを経て、そろそろ限界を感じています。
1989年東京生まれ、神奈川育ち。写真学校卒業後、出版社カメラマンとして勤務。現在フリーランス。
内田嶺衣奈のBon week-end!