【生野陽子の言葉に乗せて#3】家庭では「よし」とし、仕事の優先順位を高く!生野流“瞬発力”が鍛えられたのは…

フジテレビアナウンサーの生野陽子さんは、2019年4月に第1子となる女児を出産し、約半年間の育休を経て同年10月に復職をし、報道番組を中心に活躍しています。仕事、家族、自分自身について、36歳の現在、どのように感じているのでしょうか。毎月第2土曜日にお届けするコラムで生野さんが今の気持ちを素直に語ります。今回は仕事術を中心に話してくださいました。

新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言は1都3県で延長となりました。医療従事者向けのワクチン接種も始まったので、コロナ禍も次のステージに入ってほしいですね。先月は東北で大きな地震もありました。被害に遭われたみなさまには心よりお見舞い申し上げます。

急きょ対応すべき仕事に備え、“事前にできることは早めに”

出産前の2014年からキャスターをしている報道番組では、災害や事件、事故への即応力が求められます。仕事をする上で「できることを先送りにしない」ことを大切にしています。
突発的な出来事というのは重なることも多く、娘もいつ体調を崩すかわかりません。「言われたことに、すぐに対応しなければならない」という事態も起こります。ですから、事前に出来ることは、可能な限り早く対処。

また仕事も子育ても家事もと、同時に全てを完璧にはこなせないのが実情。あれもこれもと理想を追い求めるものの、時間的にも精神的にも思うようにいかない事も多く、悪戦苦闘しながらの日々。その中で、家事や育児において心がけるようになったのは、「よしとする」こと。例えば、朝食で娘に「もっと野菜を食べてほしいな」と思っても、「よし」。「足りない分は夜に補ったらいいかな」とか「今回はスープを飲んだから」と考えるようにしています。
要は「まぁ、いいか」同じなのですが、「まぁいいか」という言葉を発すると、私の場合、なんとなくマイナスな気持ちが残ってしまい後味が悪いということに気づき、それならばいっそのこと「よし」としてしまう方が、自分の心の折り合いをつけやすいことが分かったのです。
これは仕事に直ぐに対応する為だけではなく、家族が笑顔で過ごせるように、悩みながら生活する中で編み出した方法です!

「めざまし」時代のハプニング 後悔しても…

仕事も育児も真摯に向き合っていますが、私は基本的におっちょこちょいなので、若い時は思わぬミスをしていました。

朝の情報番組「めざましテレビ」を担当していたときは、“羽ピン”をつけたままオンエアに出てしまったことも。放送開始前に行う、原稿の下読み(事前に目を通す)の際に前髪のセットが崩れないように羽ピンを付けて、そのままだったのです、、、。
生放送後に「(羽ピンがついていることを)教えてくださいよ~(笑)」とスタジオを担当していた男性フロアディレクターに言ったのですが、「おしゃれだと思いました」と返されてしまいました(笑)。鏡を見る余裕くらい作ればよかったなと後悔しても、後の祭り。

もう一つも「めざまし」。下読みに集中しすぎて、気づいたら番組が始まっていたことがありました(汗)。大慌てでスタジオに入り、何事もなかったように(メインキャスターの)三宅正治アナの横にスッと立ちました。

生放送は「時間が過ぎたら、終わり」です。後悔しても取り戻すことはできません。大事にしているのは、失敗した時、次にどうするかを考えること。例えばニュースを伝えるときに、言葉がつかえたことに気を取られると、次のミスを引き起こす可能性もあります。

「失礼しました」ときちんと謝り、自分も気持ちを切り替えます。柔軟に対応することも、スキルの一つだと思っています。

報道番組で求められる「瞬発力」とは…

もちろん、間違えないことが大前提。そのために欠かせないのは、日頃の準備や訓練。

現在担当している土日夕方の「Live News イット!」の放送前には、朝と昼のニュースの原稿にも目を通すようしています。そうすることで、「どこまで情報を伝えているか」を再確認し、夕方のニュースに向けて最新の情報を入れていくことに意識が向きますし、自分の表現の幅を広げることができます。

日々意識してニュースを把握。一定のデータや情勢が頭に入っていると、突発的にニュースが入ってきても「この部分が新しい」とか「この速報はあの話題と関連づいている」など、掘り下げて理解し、お伝えすることができます。

オンエア中に速報が入ることも。その時は臨機応変に対応する「瞬発力」も求められます。番組制作者の指示のもと、どう伝えるのが視聴者の方にとってベストなのか、自分でも判断し取り組んでいます。

進行役としてのアナウンサー

「瞬発力」の重要性を認識したのは、生放送の「めざまし」や、バラエティ番組を担当した時です。

先輩の伊藤利尋アナと同じ番組を担当する機会が多く、読み方がわからない専門用語を事前に聞いたり、どういうタイミングで話し出すのが適切かを相談したりと、多くの指導をしていただきました。

バラエティ番組では、アナウンサーは進行役。少しの「間」もつくらずに速いテンポで話される出演者の方がほとんどです。円滑に次の話題に移すために「間」にうまく入り、番組として意図する方向性に持って行かなければなりません。

そのタイミングや決まりは台本にはないので、その場の空気を壊さず、皆さんのお話の流れに乗って、あるいはお話を遮る形で進行していかなくてはなりません。「間」を逃さず、どんな言葉で進行するのか。若い時はうまくいかず、試行錯誤の日々でした。そして今でも難しいと感じます。以前より場を楽しめるようにはなりましたが。

初共演の方がいる場合、事前にテレビなどでその方の話し方のテンポなどを把握したり、先輩に伺ったり、現場でコミュニケーションを取るようにしています。その場の雰囲気を感じながら進められるアナウンサーでありたいです。

先日、ある先輩アナウンサーから「神経が太くなったね」と言われました。何だかとてもうれしかったです。

1984年5月、福岡市生まれ。2007年福岡大学卒業後、フジテレビにアナウンサーとして入社。「ショーパン」の愛称で人気を集める。19年4月に第一子を出産し、同年10月に復職。現在は「Live News イット!」の土日のメインキャスターを務める一方、「ぶらぶらサタデー有吉くんの正直さんぽ」にも出演。書道の師範免許を持っている。
同志社大学文学部英文学科卒業。自動車メーカで生産管理、アパレルメーカーで店舗マネジメントを経験後、2015年にライターに転身。現在、週刊誌やウェブメディアなどで取材・執筆中。
1989年東京生まれ、神奈川育ち。写真学校卒業後、出版社カメラマンとして勤務。現在フリーランス。
生野陽子の言葉に乗せて