入社29年目、フジ・西山喜久恵アナ「きょうのわんこ」のナレーションは完成型じゃない!?「今までの発声、すみません」

バラエティーや報道番組、スポーツ番組などで幅広く活躍し、その笑顔で共演者や視聴者から「キクちゃん」の愛称で親しまれるフジテレビの西山喜久恵アナウンサー(51)。現在はアナウンス室チーフアナウンサーも務める西山さんに、これまでや今後の目標などを聞きました。

神様が与えてくれたアテネ五輪取材

――様々な番組に出演されてきました。最も印象に残っているのは?

西山喜久恵(以下、西山): 夕方のニュースの担当をしているときの2004年アテネ五輪取材ですね。世界中の人が注目するビッグイベントを現地で取材できたというのは、私のアナウンサー人生の中で忘れられない経験。日本の金メダルラッシュの中、「神様が、このために色んな経験を私に積ませてくれていたんだな」という取材ができたんです。
「プロ野球ニュース」を担当していたので、野球では参加している松坂大輔投手などプロの選手も知っているし、お世話になった方がコーチ陣にもいて、向こうから積極的に話をして下さることもあった。
準々決勝まで進出した女子サッカーも、認知度が低いころから取材をしていて、ほとんどの選手を知っていました、応援もしていたし、五輪で盛り上がるという確信もあった。実際、その通りでしたね。

スポーツ取材のルールやマナーも分かっていましたし、他の社よりは取材対象者も笑顔で、いい表情が撮れた。「プロ野球ニュース」で培ったスポーツを取材する目を報道番組でいかせたし、いい放送を視聴者の方に伝えることができました。

国民的番組の最終回に立ち会えて

――バラエティーでは?

西山: 色々ありすぎですが、14年3月の「笑っていいとも! グランドフィナーレ」ですね。私は本当にタモリさんが大好き。寂しい思いとともに、いまだに語り継がれるような色んなタレントさんが一堂に会した場面に、いられましたから。

16年12月の「SMAP×SMAP」のスマスマの最終回の進行も印象に残っています。最後は美術や技術、制作の全スタッフがスタジオにいて、つくった作品を最後に見守りながら送り出すという瞬間に立ち会えた。最後の5人が歌う「世界に一つだけの花」までのコメントを私が言い終わった瞬間には、スタッフが拍手をしてくれて、「キクちゃんありがとう」って。忘れられない体験でしたね。

声を磨いて究極のナレーションを!

――今後は何をしたいですか?

西山: 音声表現です。コロナ禍でなまらないようにという意味も込めて、オペラ歌手の先生に発声を2週間に1度、習っています。もう本当に今までの発声、すみませんという感じ。オペラ歌手の方の体を響かせて楽な音で出す方法を、アナウンサー29年目で初めて知りました。「まだ遅くはない」と先生は言ってくださるので、もっといい声になりたいですね。そして、究極のナレーションかできるようになったら素敵だなと思っています。

というのも、ナレーターの方の声でみなさん、各番組に引き込まれていると思うから。「めちゃ×2イケてるッ!」の木村匡也さんが「今週のめちゃイケは」って言ったり、「情熱大陸」(TBS系)の窪田等さんが「2007年」と語り始めたりすると、その一言でやられちゃう。声の影響力って聞けば聞くほどすごいな、って思っています。ありがたいことに「めざましテレビ」内の「きょうのわんこ」をずっと担当させてもらっていますが、まだまだ完成形ではない。とても心地の良い音で「きょうのわんこ」のナレーションをできるようになりたいですね。

アナウンサーは「大変だけど、大好きな仕事」

――新たな試みも始められました。

西山: コロナ禍で外に出られない親子のために、家で楽しめる「デジタル紙芝居」をYouTubeで始めました。「注文の多い料理店」や「ブレーメンの町楽隊」といった教科書に載っている作品を、アナウンサーが朗読し、美術スタッフや絵がうまいスタッフに作画をしてもらっています。手作り感満載!それも上司が「やりなさい」と応援してくれて、あっという間にできあがった。そこで音声表現の大切さを私は改めて気付きましたし、後輩たちにも重要性が分かってもらえて、とても嬉しいです。

――アナウンサーという仕事は?

西山: 大変だけど、大好きな仕事です。担当している「めざましどようび」では、子育てや家庭でのいいことや悪いこと、悩んだことをコメントに反映させています。

一生懸命頑張って生きていること自体が、役立てられる仕事なんてなかなかない。それに最前線の現場に行けるし、聞きたいことも尋ねられる。年を重ねていけばいくほど、楽しくてやりがいのある仕事だと痛感しています。

●西山喜久恵(にしやま・きくえ)さんのプロフィール
1969年、広島県尾道市生まれ。上智大学文学部卒業後の92年にアナウンサーとしてフジテレビに入社。「森田一義アワー 笑っていいとも!」や「FNNスーパーニュース」といった様々なジャンルの番組に出演してきた。現在はアナウンス室チーフアナウンサーとして管理職業務を行う一方、「めざましどようび」などにも出演している。

ハイボールと阪神タイガースを愛するアラフォーおひとりさま。神戸で生まれ育ち、学生時代は高知、千葉、名古屋と国内を転々……。雑誌で週刊朝日とAERA、新聞では文化部と社会部などを経験し、現在telling,編集部。20年以上の1人暮らしを経て、そろそろ限界を感じています。
写真家。1982年東京生まれ。東京造形大学卒業後、新聞社などでのアシスタントを経て2009年よりフリーランス。 コマーシャルフォトグラファーとしての仕事のかたわら、都市を主題とした写真作品の制作を続けている。