ブライダルチェックでわかることは?女性が受けるべき検査項目や方法、費用などを解説

「ブライダルチェック」というと「結婚前に産婦人科で妊娠に向けた検査をする」というイメージを持っている人が多いかもしれません。実際は結婚の予定がなかったり、パートナーがいなかったりしても、受けることができます。「今はまだ予定はないけれど、将来は子どもを」と思うなら一度、考えてみては?検査の内容や費用など、詳しく紹介します。

自分の体の状態を知ることが妊娠への第一歩

ブライダルチェックとは、婦人科で受けられる複数の検査の総称。検査項目に明確な決まりはありませんが、将来、赤ちゃんを望む女性が受けるものです。

卵子が蓄えられている卵巣や胎児を育む子宮の状態、生理は定期的に来ていて排卵があるかなど、「今の体の状態を知ることが、将来の妊娠のために大切」と、東京・自由が丘にある峯レディースクリニック、院長の峯克也医師は言います。

妊娠に関係する検査はどんなもの?

ブライダルチェックの内容について紹介します。全体の流れは、事前の予約、当日の受診、検査の結果を聞くために再度受診となります。検査結果を郵送したりオンライン診療を行ったりする医療機関もあります。

問診

まず、問診票に必要事項を記入します。それを見ながら、医師や看護師が話を聞きます。
聞かれるのは、初潮(初経)の年齢、生理の周期、最後にあった生理の開始日、持病や治療などの病歴、アレルギーの有無、妊娠・出産の経験など。もしも気になることがあれば、遠慮せずに相談しましょう。血圧測定も行います。
・料金:内診・超音波検査と合わせた基本セット5,500円(峯レディースクリニックの場合。税込み。以下の料金も同様)。

内診・超音波検査

内診では、経腟超音波(エコー)を腟に挿入して、子宮や卵巣の画像をモニターに映し出します。子宮筋腫や子宮内膜症、卵巣の腫瘍などがないか確認します。痛みは個人差がありますが、通常はありません。
・料金:問診・血圧測定と合わせた基本セット5,500円。

さらに詳しい検査も受けられる

希望すれば、より詳しい検査を受けることもできます。医療機関によって検査の内容が違うのでホームページで確認しましょう。ここでは、峯レディースクリニックでよく行われている検査を紹介します。

血液検査・感染症検査

貧血や肝機能、腎機能、糖代謝などの基本的な検査のほか、B型肝炎、C型肝炎などを、採血して検査します。
感染症の検査は、梅毒やHIV検査、クラミジア抗体検査などです。検査は採血で行われます。クラミジアに感染している場合、卵管で炎症を起こすと卵管が狭くなったり詰まったりして不妊原因になることがあります。
・料金:血液検査(貧血・肝機能・腎機能・糖代謝検査)2,200円。
・料金:感染症検査(梅毒検査、B型肝炎検査、C型肝炎検査、HIV検査、クラミジア抗体検査)13,200円。

風疹抗体の検査

風疹抗体の有無を血液検査で調べます。
抗体が十分にない場合、風疹に感染する可能性があります。妊娠中に風疹にかかると、赤ちゃんに難聴や心疾患などの先天性風疹症候群が起こる可能性があります。抗体が十分でないことが検査で分かった場合は、ワクチンの接種を受けましょう。接種後は2カ月間、避妊が必要です。
・料金:2,200円。

AMH検査

晩婚化、晩産化で注目されているのが、AMH(抗ミューラー管ホルモン)を調べる検査です。AMH値は、卵巣にどれくらいの卵子があるかの目安となります。
AMH値が極端に低ければ卵子が少なくなっているので、子どもを望む場合は妊活を急いだほうがいいといえるでしょう。検査は採血で行われます。
・料金:7,700円。

腟分泌物(おりもの)培養検査

腟内に雑菌がどれくらいあるかを調べます。通常は雑菌が侵入しても影響はありませんが、疲労などで免疫力が下がると雑菌が増えて腟に炎症を起こすことがあります。
また、性感染症のひとつである腟トリコモナス症は、放っておくと炎症が進むことも。卵管まで炎症した場合、不妊症の原因になる可能性があります。検査は腟の分泌物を綿棒で採取します。痛みは個人差がありますが、通常はありません。
・料金:3,300円。

血液マーカー検査

子宮がんや卵巣がんを調べる腫瘍マーカーを用いて、良性疾患の子宮筋腫や子宮内膜症の可能性を調べることができます。検査は採血で行われます。
・料金:4,400円。

そのほかにも、さまざまな検査があります。医療機関によっては、いくつかの検査をセットにしている場合も多いようです。

診察の時間は、トータルで1〜2時間。検査結果の説明は後日になるので、診察予約をとります。検査結果の説明は、峯レディースクリニックではオンライン診療でも可能です。

ブライダルチェックの料金は?

ブライダルチェックは病気の検査や治療ではないので、基本的には健康保険が適用されません。全額自己負担になるので、受診する医療機関のホームページなどで費用を確認しておきましょう。

参考までに、峯レディースクリニックの料金を紹介します。(いずれも税込み)
・基本診察料金/問診・血圧測定、内診・超音波検査(子宮・卵巣):5,500円
・子宮頸がん検査:4,400円
・血液検査/貧血・肝機能・腎機能・糖代謝検査:2,200円
・風疹抗体検査:2,200円
・AMH検査:7,700円
・セット(卵巣機能や婦人科疾患を主に検査する場合)/
基本診察料+子宮頸がん検査+AMH検査+血液マーカー検査:22,000円
・セット(性感染症を主に検査する場合)/
基本診察料+腟分泌物培養+淋菌PCR検査(子宮頚部、咽頭)+血液検査(感染症+クラミジア抗体検査):29,700円
・セット(将来の妊娠に備えて全ての検査を行う場合)/
基本診察料+子宮頸がん検査+AHM検査+血液マーカー検査+腟分泌物培養+淋菌PCR検査(子宮頚部、咽頭)+血液検査(感染症+クラミジア抗体検査):52,250円

ブライダルチェックを受けておけば妊娠できる?

ブライダルチェックで問題が見つからなかったら、ひとまずは安心。とはいっても、将来の妊娠が保証されるものではありません。妊娠は相手がいるものですし、健康状態は日々変化しています。
また、ブライダルチェックで行う検査は、不妊検査のように詳しくありません。例えば、卵管の詰まりを調べる「子宮卵管造影検査」は不妊検査で必須ですが、ブライダルチェックで受けられるかは医療機関によって異なります。
不妊検査を受ける場合は、生理周期に合わせたホルモン値の検査、排卵前後の超音波検査など、体の状態をより詳しく調べることになります。ブライダルチェックは、その前の予行演習、産婦人科への入門編といえそう。もちろん、やがて妊娠して、次に産婦人科を訪れるのは「妊娠の確認」という可能性もあります。

ブライダルチェックに訪れた人が、そのまま不妊検査をするために通院することも多いのだそうです。出産できる年齢や高齢出産のリスクなど、医師から聞ける機会になるかもしれません。

将来、子どもを欲しいと思うなら

今はまだ考えていなくても、将来の妊娠を希望するのなら健康には気をつけたいもの。特別なことをするというよりも、一般的にいわれる健康的な生活でOK。まずは毎日の習慣を見直してみましょう。

基礎体温をつけてみる

基礎体温の記録は、スマホアプリを活用すると簡単です。
まずは生理の周期は何日くらいか、つかんでおきましょう。26〜35日で定期的に生理があれば、ひとまず問題ないでしょう。
また、体温表が低温期と高温期の二相性になっていれば、排卵していると考えられます。基礎体温表の見本のような、はっきりとした二相性でなくても大丈夫です。

健康的な食生活

体をつくるのは毎日の食事です。栄養バランスのとれた食事、欠食を避けるなど、できることからスタートを。妊娠したら、体調が悪くなったり、生活スタイルが変わったりして、食生活を整えるのが難しくなります。今から習慣化しておきましょう。
胎児の発育に重要な栄養素の「葉酸」は、食事では十分にとることは難しいようです。サプリメントなどを、妊娠を希望する2カ月程度前から積極的に摂りましょう。

禁煙

喫煙している女性が妊娠すると流産や早産のリスクが高くなり、出産では低出生体重児の可能性が高くなります。また、タバコは卵子の老化を早めるという説もあります。

定期的に子宮頸がん検診を受けよう

子宮頸がんは自治体のがん検診の項目になっていますし、職場検診で受けられるケースもあるでしょう。1〜2年に1回は検診を受けましょう。定期的に検査していれば、がんが発見される前の段階(異形成)で見つけることができ、その後の妊娠への影響は低くなります。

体調の変化があれば産婦人科に相談を

「生理痛がひどくて日常生活に困る」「生理のときの経血の量が極端に多くなった」「下腹部に、以前にはなかったしこりのようなものを感じる」など、これまでと違うと感じたら産婦人科で相談を。子宮内膜症や子宮筋腫なども考えられます。

産婦人科に気軽に受診を。男性のブライダルチェックも

ところで、あなたは産婦人科を受診したことがありますか?
生理不順や生理痛がひどいなど、気になる症状があれば産婦人科に行くこともあるでしょう。職場の子宮頸がん検診を受けたことがある人も、産婦人科になじみがあるかもしれません。でもそうでなれば、産婦人科に行く機会はほとんどないのではないでしょうか。

峯医師は「早く受診することによって、負担の少ない治療で赤ちゃんを授かることもできるかもしれません」と話します。ブライダルチェックでは、基本検査のほかに受けたいものを自分で選べます。問診では体のことや妊活の相談も可能です。

また峯レディースクリニックでは、男性のブライダルチェックも。独身男性が来ることもあれば、夫婦でブライダルチェックを受けるケースもあるそうです。
「女性と比べて男性は、どうしても妊娠の知識が不足しています。話を聞くことで、これから妊活をどうするか、二人のライフプランを考えるきっかけになればと願っています」(峯医師)

一生付き合っていく自分の体、これを機会にちゃんと意識してみませんか? 

●取材協力:峯レディースクリニック・峯 克也院長
1998年、日本医科大学医学部卒業。同大学産婦人科学教室病院講師を経て、2017年峯レディースクリニック開院。タイミング法などの一般治療のほか、体外受精・顕微授精の高度な治療も。流産を繰り返す不育症治療にも積極的に取り組んでいる。

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