テレ東・相内優香さん 昨春大学院へ進学。キャスターと学業の両立に「それぞれが繫がり、狙い通りです!」

10年間にわたり出演を続け、メインキャスターも務めた「WBS」(ワールド・ビジネス・サテライト)を卒業したテレビ東京の相内優香アナウンサーは今春から「Newsモーニングサテライト」(モーサテ・平日朝5時45分~)の月曜から水曜のメインキャスターを担当しています。昨春から通う大学院と仕事の両立、生活の変化や番組への思いなどについて伺いました。
テレ東・相内優香さん、大事なのは“やってみなはれ”の精神。「始めるのに遅すぎるということはない」

激変した生活、これまでより体のケアを重視

――11時から生放送のWBSから、朝545分開始のモーサテへ。生活にも大きな変化があったと思います。

相内優香: WBSの時は深夜に寝る生活でしたが、今はモーサテがある月曜から水曜は深夜1時に起きています。でもモーサテに出演しない週の後半は深夜に寝る生活になりがち……。だから日曜に必然的に身体をリセット。自己管理の方法も含めて、すべてがガラッと変わったという印象ですね。まずは“起きる”ことがハードル、さらにモーサテは80分と長く、マーケットの動向を中心に伝えるニュース番組。情報量が多く専門性も高いので、休みの日でも世界のマーケットの動きに注意し、日々勉強。本当に毎日、時間に追われているような感じですね。

――日曜にリセットし、月曜の早朝に起きるために大切なことは?

相内: やはり自律神経を整えてあげることが重要。今までよりも自分の体に気を付けるようになりました。寝る前にアロマ、お風呂でキャンドルをたいたり、ゆっくりストレッチをしたりして、よく眠れるよう自分自身を落ち着かせていますね。もう私も30代の半ばです。ちゃんと体に気を使いながら、元気に番組をお届けしたいと考えています。

「Newsモーニングサテライト」のメインキャスター(月曜~水曜)を務める一方、大学院でMBA取得も目指している=写真はいずれもテレビ東京提供

モーサテは「みんなで勉強する学校のような場所」

――番組の内容もWBSとは違います。

相内: 見ている方の年齢層は大きくは変わらないですが、求められている内容が違います。ニューヨークから中継を入れてマーケットの最新情報をお届けしていますし、株や為替、債券の動きなども深掘りしているので、見てくださっている方はマーケットや金融機関の関係者、投資家の方々が中心です。
専門用語も飛び交いますが、あえて詳しくは説明していません。チャートを使いながらマーケットの動きをお伝えするので数字も多いですし、専門家の解説もたっぷり。毎朝、結構な情報量をお伝えしているので、原稿の量もWBSの倍くらいあります。会社に着くとVTRの中身も含めて全ての原稿に目を通し、世界のマーケットの動きや新聞をチェックし、アナリストの方々と打ち合わせ……朝は時間との勝負、猛烈な戦いです。

話し方も夜と朝では大きく違いますね。夜のWBSでは、みなさん寝られる前だと思うので、“トーンは低く抑え、ゆっくり”を意識していました。一方、朝は1日の始まりで、様々な準備をしながら見ている方もいらっしゃるので、テンポが重要だと個人的には思っています。ニュースを読むときもフリートークをする際も、WBSに比べて早めですね。

――モーサテへ、という話を聞いたときは、どのように感じられましたか。

相内: モーサテは“覚悟して臨まないといけない番組”という印象があったので、戦々恐々という感じでしたね。担当するためには「頭をマーケット脳にしないといけない」との話も聞いていましたし。実際に携わると、出演者やスタッフみんなで勉強する学校のような場所でした。“モーサテスクール“だなと感じています。

大学院で使用しているタブレット端末

ノーベル賞受賞者の言葉も影響し昨春、大学院へ進学!

――スクールといえば、相内さんは2020年の春から早稲田大学大学院経営管理研究科(早稲田ビジネススクール)でMBAの取得をめざされています。そもそも大学院に進まれた理由を教えてください。

相内: まず、アナウンサーとして経済番組を中心にキャリアを歩んできた中で、自分の経済・経営分野の専門性を高めたいという気持ちがありました。また、アナウンサーという専門職に加えて、もっと視野を広げたいという思いも。エクセルやパワーポイントでまともな資料もつくれなかったし、デジタルにも弱かったですからね。
大学院進学の決断に大きく影響したのは2年前に、ノーベル化学賞を受けた吉野彰さんとジャーナリストの池上彰さんの対談のナレーションを務めたこと。その際に吉野さんの「ノーベル賞受賞者の研究がスタートするのは30代半ば」「コツコツやってきたことが35歳を過ぎてから花を開いていく」「35歳までに力を貯め、過ぎたらそれを爆発させるべきだ」といったお話に触れたのです。33歳くらいだった当時の私は「どうしよう? 35歳まで、あと2年くらいしかない……」って。これまでの経験を生かしつつ、自分の仕事にもつながるのはMBAだと、その時、強く思ったんです。MBAに対しては以前から憧れもありました。その中で早稲田の大学院に進んだ大きな理由は、夜間のコースがあり、仕事と両立できるからです。

大学院で入山章栄教授(左)とゼミの仲間らと写真にうつる相内優香さん(左から2番目)

コロナ下での大学院での勉強で上がった“デジタルスキル”

――大学院に進むという決意が揺れたことは?

相内: 「すごく大変だろうな」とは思っていたんですが、早稲田ビジネススクールに通っているテレビ東京の後輩に応援され、後押しもされました。それにWBSで楽しく、とても勉強になる解説をされている経営学者の入山章栄先生も教授としていらっしゃった。仕事しながら勉強するビジネススクールは宿題が大量で本当にハードですけど、自分の未来の選択肢を増やすための投資は「今しかできない」とも思いましたし、入学して良かったと思っています。
ただ、試験に合格してから新型コロナウイルスが感染拡大して……。入学前はちゃんと授業を受けられるか不安だったのですが、早稲田はいち早くオンライン授業を導入。不便はなかったです。初年度は手探りで勉強した1年間でしたが、コロナ下で課題も含めてデジタル化したことで、デジタルスキルも上がりました。メモもすべてタブレットで取るようにしていて、紙はほとんど使う機会がありません。現在の授業はオンラインと対面のハイブリッド。私はオンラインと対面で授業の質の「差」は感じなかったですね。むしろオンラインの方が通学時間を短縮できたり、じっくりと資料を見たり、オンライン上で資料にメモをすることができたりして、まったく苦ではなかったです。
同級生も社会人なので、オンラインのやりとりでも十分なコミュニケーションが取れていると感じます。対面に勝るものはないと思いますが、満足しています。

――早稲田ビジネススクールでの同級生との「出会い」で得た、気づきがあれば。

相内: 多種多様なメーカーや金融機関、広告会社、商社など本当に様々な職種、ジャンルの同級生がいます。異なる職種で尊敬する仲間に出会えたことは大きいですね。また、テレビ東京を客観的に見られる、良い機会になっています。外に一歩出てみたことで、今まで気づかなかった組織の良い面や課題などを、時には経営理論と照らし合わせながら俯瞰して考えるようになりました。

「Newsモーニングサテライト」スタジオの相内優香さん(左)

日々成長し、一人前の経済キャスターに!

――先ほどモーサテスクールという話がありました。番組と大学院で学んだ内容がリンクすることはありますか。

相内: 今年の春学期で学んだESG投資に関する授業やマーケットマイクロストラクチャーの授業では東証の新しい市場区分に伴う企業戦略。また、ファイナンスの授業ではどれだけ効率的に利益に結びつけているかといった企業価値にまつわる計算などがあり、まさにモーサテに直結しています。モーサテの「マーケットリアル」という企業の株価の転換点に、トップへインタビューするコーナーでも、グローバル戦略など、学んだ経営理論に当てはめて考えるようになり、企業の経営戦略を理解するための新しい視点が加わりました。今度インタビューする企業も大学院の課題でたくさんケースを読み込んでレポートにまとめたことがあり、取材の準備にも役立っています。それぞれが繫がり、相互作用していて、狙い通りです!

――改めて今後のモーサテへの意気込みを教えてください。

相内: モーサテも担当する前は本当に不安でしたが、始まってみれば、風通しの良いチームの中で学ぶことが楽しく、やりがいを感じています。幸せなのですが、まだまだ周囲に頼ることばかりなので、一人前の経済キャスターになれるよう、日々成長していきたいです。皆さんの1日がより良いものであるようにとの思いを込めて、引き続き元気にお伝えしていきます!

●相内優香(あいうち・ゆうか)さんのプロフィール
1986年、群馬県生まれ。立教大学社会学部卒業後の2008年、アナウンサーとしてテレビ東京に入社。報道番組を中心に活躍。19年に『Vチューバー相内ユウカが経済ニュースわかるまで聞いちゃった。』(日本経済新聞出版社)を出版した。早稲田大学大学院経営管理研究科2年生。

テレ東・相内優香さん、大事なのは“やってみなはれ”の精神。「始めるのに遅すぎるということはない」
ハイボールと阪神タイガースを愛するアラフォーおひとりさま。神戸で生まれ育ち、学生時代は高知、千葉、名古屋と国内を転々……。雑誌で週刊朝日とAERA、新聞では文化部と社会部などを経験し、現在telling,編集部。20年以上の1人暮らしを経て、そろそろ限界を感じています。

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