東啓介さん「コロナがあったからこそ、音楽の力を再認識した」 ブロードウェイミュージカル『IN THE HEIGHTS イン・ザ・ハイツ』27日上演

2008年のトニー賞で最優秀ミュージカル作品賞を含む4部門を獲得したブロードウェイミュージカル『IN THE HEIGHTS イン・ザ・ハイツ』が27日から、鎌倉・大阪・名古屋・東京で上演されます。米マンハッタン北西部の移民が多く住む町「ワシントンハイツ」を舞台に、若者たちが懸命に生きる姿を描いています。主人公ウスナビの幼なじみ・ベニーを演じるのは、日テレ系ドラマ『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』に渉周一役で出演し、話題の東啓介さん。舞台の見どころやコロナ禍での上演に感じていることなどを聞きました。

誰が見ても共感できるストーリー

――どのような物語だと捉えていますか?

東啓介さん :夢や希望を持つ若者たちが、差別や貧困といった厳しい現実を前に苦悩する。一人の男が何かを成し遂げるような話ではなく、登場する一人ひとりが主人公。それぞれの恋や、人を思いやる愛が描かれています。目の前にいる人を大切にすることの大事さというメッセージがあり、“日常”を描いているので、誰が見ても共感できるストーリーだと思いますね。

――演じるベニーは、自らが働いているタクシー会社を経営する夫妻の娘・ニーナに恋をする。主な登場人物はヒスパニック系ですが、ベニーはアフリカ系移民です。

東 :ベニーはとても影がある男性です。みんなの前では元気で快活なキャラクターだけれど、あらゆる場面で差別を受けている。人種の違いを気にしていると悟られないように、強がって明るく振る舞っています。
自分でタクシー会社をつくるという夢や、好きなニーナへのアプローチ……まっすぐに突き進んでいるけれど、なかなかうまくいかないんです。彼には人種という“壁”があって、それを振り払いたいけれど、立ちはだかってしまう。
差別というのは、この舞台の大きなテーマ。ベニーはニーナの父に、アフリカ系であることを理由に関係を認めてもらえない。一方、ハイツ出身で有名大学に行ったニーナも、学内の友人と話す言葉が違うことによって、世界は想像していた姿ではなかったことに気づく。人種や出身で人を選んだり排除したりするのって、すごく悲しいことだって改めて感じましたね。

――演じる中で難しいと感じた部分は?

東 :ブロードウェイでは、黒人の俳優さんがベニーを演じているので視覚的にわかりやすい。でも日本公演では、見た目で判断できません。舞台はもちろん日本語ですが、所々出てくるスペイン語のシーンでは、みんなが流暢に話す中、僕は片言っぽくしたりして工夫しています。
舞台でラップも、難しいですね。僕、ラップは初めての挑戦なんです。楽譜が独特なので、途中でどこを歌っているのかわからなくなってしまうんですよね(笑)。テンポも合わず、前に出過ぎちゃったり、遅れたりって感じで。音をつかむ練習をしています。

――コロナ禍での上演です。

東 :PCR検査をこまめに受け、マスクの着用や手洗いなどの対策しながらの稽古。この作品は音楽もパワフルだしハッピーな物語なので、明日への活力にしてほしいですね。
PCR検査は昨年春の緊急事態宣言明けから、舞台のお稽古・本番のために2桁以上の回数、受けてきました。

コロナ禍、悲観的になった時もあった

――昨年はコロナの影響で出演を予定していた舞台がなくなったそうですね。

東 :昨年3月に出演中だった『ホイッスル・ダウン・ザ・ウィンド』が中止となり、『ジャージー・ボーイズ』も上演自体ができなくなりました。僕が出ている作品に限らず、公演がどんどんなくなっていくのを目の当たりにして。「舞台という娯楽がなくなっていくのかもしれない、これから自分はこの仕事を続けられるんだろうか」と考えていた昨年4月に緊急事態宣言が出ました。家にこもっている期間は「これからどうしよう」「別の仕事を探した方がいいのかな」といったことばかり考えましたね。何もできずに、ただジッとしていなければならない辛さもありました。
そんな中、僕を元気づけてくれたのは音楽や、仲間。コロナがあったからこそ、音楽の力を再確認したし、一致団結できたこともあったように思います。何が起こるかわからなくて悲観的になった時もありましたが、僕にとってはすべてが悪いことではなかったです。

――昨年6月にご自身で作詞作曲した「こえ」をYouTubeで公開していましたね。

東 :同じ事務所の志尊淳くんが、曲を作っていたんです。「素敵だな、自分も音楽で何かできないかな」と刺激を受けました。
「自分の思いを音楽にしてみたい」「共感してくれる人もきっといるだろう」と考え、初めて曲を作りました。スタジオは使わずに、自宅で録音。動画編集も自分でやって、楽しかったです。

――人を元気づけるために、ご自身ができることは何だと考えていますか?

東 :うーん、なんだろうなぁ(笑)。僕は基本的にマイペースで穏やかな性格なので、時々やっているインスタライブを見に来てくれたら、ほんわかした空気を届けられる気がします。コロナ禍の今、世の中が殺伐としていますよね。気持ちを静めて、元気になってもらえると思います。

魅力的な音楽、楽しんで

――舞台の見どころを改めて教えてください。

東 :ラップ・サルサ・ヒップホップなど舞台での音楽がとにかく魅力的なので、楽しんでほしいです。リズムに合わせて自然と体が揺れちゃうくらい勢いがあるので、音楽の力を感じてもらえるんじゃないかな。
物語も、社会に対するメッセージみたいなものを感じられると思います。コロナで人との距離を取らなくてはならなくなり、日常が変化した今だからこそ、見てほしいですね。

●東啓介さんさんのプロフィール
1995年、東京都生まれ。2013年にデビュー。ミュージカルなど舞台を中心に活躍。Rock Musical『5DAYS 辺境のロミオとジュリエット』(18年)や舞台『命売ります』などで主演を務めた。現在『ウチの娘は、彼氏ができない!!』(日テレ系、21年)で初の連続ドラマレギュラー出演中。

Broadway Musical『IN THE HEIGHTS イン・ザ・ハイツ』

『Hamilton』で知られるリン=マニュエル・ミランダの出世作で、原案・作詞・作曲を手掛けた。2008年のトニー賞をはじめ数々の演劇賞を受賞。2021年夏には映画も公開される。日本では14年が初演で、今回約7年ぶりに新たによみがえる。3月27日から、鎌倉(プレビュー)、大阪、名古屋、東京で上演される予定。

原案・作詞・作曲:リン=マニュエル・ミランダ
脚本:キアラ・アレグリア・ウデス
演出・振付:TETSUHARU
翻訳・訳詞:吉川 徹
歌詞:KREVA
⾳楽監督:岩崎 廉

出演:Micro[Def Tech]/平間壮⼀(Wキャスト)、林翔太/東啓介(Wキャスト)、⽥村芽実、⽯⽥ニコル、阪本奨悟 ほか

スタイリスト:岡本健太郎
ヘアメイク:宮内宏明(M’s factory)

1989年、東京生まれ。香川・滋賀で新聞記者、紙面編集者を経て、2020年3月からtelling,編集部。好きなものは花、猫、美容、散歩、ランニング、料理、銭湯。
写真家。1982年東京生まれ。東京造形大学卒業後、新聞社などでのアシスタントを経て2009年よりフリーランス。 コマーシャルフォトグラファーとしての仕事のかたわら、都市を主題とした写真作品の制作を続けている。
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