telling, Diary ―私たちの心の中。

「夫に育休取って欲しいなら、稼がないとね」という言葉に感じるモヤモヤ

仕事を頑張りたくて、出産を前向きに考えられない女性もいるかもしれません。最近彼氏ができた神山園子さんも、その一人。彼氏と将来について話しているときに感じたモヤモヤとは?

先日、彼氏と将来の話になった時、「俺は絶対に子どもが欲しい」と言われ、なんかモヤ~っとしました。産むのはもちろん、育休を取って世話をするのもどうせ私なんでしょ……と。
私は子供を持つことにあまり積極的になれません。むしろ出産するのが「怖い」とすら思います。出産と引き換えに生きがいである仕事を手放すことになるのではないか、という思いがあるから。子供は嫌いじゃないし、欲しいと思ったこともありますが、いまは仕事をしてる方が楽しい。でも29歳、いつまでも先延ばしにしていいわけではないのもわかっています。

出産か出世かを迫られる女性社員

前職の芸能関係の裏方の時は、始発で会社に行って仕事が終わったら終電…寝るためだけに家に帰るような生活をしていました。それでも憧れの業界で働ける充実感と、何かを成しえたときの達成感は他の何にも代えがたく、同僚もみんなギラギラと働いていたように思います。
私がいたのは、番組収録の立ち合いやテレビ局員の接待を毎晩のようにこなす“花形部署”。そこにいる女性のほとんどが未婚か、子無し。長期出張や急な呼び出しにも対応でき、突っ走れる人だけが職場で認められていました。
社内には事務系の部署もあり、花形部署からそこへ異動するのは“都落ち”。出世コースから外れることを意味しました。そして、異動理由の一つが、「出産」だというのは紛れもない事実でした。
「あいつも昔はバリバリやってたんだけど……まあ女の幸せを掴んだけどね」と、育休明けの事務系の女性を紹介されたこともあります。

子育てしながら憧れの仕事をするのは、たしかに難しい。女性社員は「出世」か「出産」かという2択なんだと、入社1年目にして私は絶望していました。結局激務で体調を崩し、どちらかを選ぶタイミングも迎えず辞めてしまったのですが……。

これは激務な会社に限った話ではありません。
いま私が務めているのは、9時から17時までが定時で残業もほとんどない超ホワイト企業。そこでも育休明けの女性は「前はバリバリ出張行って楽しかったな~」と言いながら簡単な事務仕事をしています。同じ営業部ではありますが、売上をつくっていたトップ営業部員から、資料の作成が主な営業事務へ。好きだった出張にまた行けるようになるのは、お子さんがいくつになったときなのか……。営業一筋でやってきた彼女が事務の仕事を一から覚えている姿を見ると、これまでのキャリアがもったいないような気がしてしまうのです。

私もきっと、出産をしたら大好きな仕事を奪われてしまうんだ……と思うと、今の頑張りってなんなの?とむなしくなります。まさに今「出産」と「出世」を選ばされている気分です。

稼いでいる女性しか、男性に育休を「替わって」と言えない?

そしてふと「男性は仕事になんのブランクもないまま働き続けてずるくない?」と思いました。
国の統計によると、女性の8割が育休を取っているにもかかわらず、男性の取得率は6%程度。女性は育児のためにキャリアを一時中断させているのに、男性の働き方はほとんど変わっていない。

男性はどう考えているのか気になり、彼氏に「もし妻から育休を1年取ってと言われたらどうする?」と質問してみました。
すると、
「取ってもいいけど…その妻は家族を支えられるくらい稼げるの?男が1年も育休取ったらクビになっちゃうよ」
との答えが。

さすがに今の日本で、正社員が育休をとって首を切られることはありませんが、理由はこれか!と納得しました。
「男性の育休取得を推進」「イクメン応援」なんてきれいごと。育休なんて取ったものならば、出世コースから外されて家計を支えられなくなる――との不安から抵抗を感じるのでしょう。
そうすると安心して育休が取れる男性は、十分な収入がある女性の夫に限った話になります。国の統計では、同じ正社員でも女性の収入は男性の75%程度。多くの女性は男性より収入が低いので、おのずと女性が育休を取る流れになるのだと、私は思いました。女性は出世からさらに遠ざかり、男性に頼らざるを得ない状況になってしまうのではないでしょうか。

「人並みの稼ぎしかないけど、仕事に誇りを持っている」という女性はどうしたらいいのでしょうか。
彼の収入は知りませんが、残業のほとんどない私と、残業が多い2歳年上の彼では、おそらく彼の方が毎月数万円ほど高い給料をもらっていると思います。もし結婚して子どもがほしい場合、私の方がキャリアを諦めるしかないのでしょうか。子どもも欲しいけど、仕事も休みたくないという女性の考えは、贅沢ですか?ほとんどの男性はそれが許されているのに……?

こういったモヤモヤした気持ちを周りの人に伝えると「キャリアウーマンは違うね~」とか「仕事好きだね~」と言われることにも納得がいきません。「私は専業主婦になりたいから」「子どもと過ごしたいから」と、同じ女性でも私の怒りにピンとこない様子も。仕事への向き合い方は人それぞれだとは思います。でも、男性ばかりがライフステージに左右されず働き続けている現実に、もっと怒ってもいいのではないでしょうか?

1991年生まれ。芸能・出版などマスコミ業界で働く会社員。リアルなミレニアル世代として、女性特有のモヤモヤや働き方などを主なテーマに記事を執筆中。
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