コロナ禍で高まるペット需要。「飼いたい!」と思った時に、すべきこととは?

コロナ禍で、自宅で過ごす時間が増えました。その影響で、国内外でペット需要が高まっているようです。犬や猫などの存在は、癒しを与えてくれますが、ペットを飼うと、年間でどれくらいの費用がかかるのでしょうか?「メリット、デメリットを知った上での賢明な判断を」と話すファイナンシャルプランナーの中村芳子さんに、留意すべき点を聞きました。

ペット需要の高まりの背景

今年4月、新型コロナウイルスの感染拡大により緊急事態宣言が発令されました。テレワークの普及もあいまって、自宅で過ごす時間が増えた人は、とても多いと思います。その中で、ペットショップの売り上げや、動物愛護の施設への譲渡の相談件数が増えていると聞きました。

私は猫を飼っています。月並みですが、癒されますね。普段は寄ってこないのですが、仕事で嫌なことがあったとき、落ち込んでいるときなど、いつの間にか膝に載っているのです。飼い主を慰めるのが自分の仕事と心得ているのでしょうか。外国に暮らしていた家族が現在、一時帰国をしています。戻りたくても戻れずストレスいっぱいですが、猫に救われています。毎日夕暮れに一緒に散歩するのが日課です。生理痛の時はお腹に乗ってあっためてくれるそう。猫のいる暮らし、皆さんにもお勧めしたいのですが、ペットを飼うには少なくない費用がかかります。実際にどのくらいの金額がかかるか、見ていきましょう。

猫を飼う時、まず知っておいてほしいこと

代表的なペットは、犬と猫でしょう。犬の方が費用も手間もかかるので、今回は飼いやすい猫を見てみましょう。まず、住んでいるところがペット可か否かを確認しましょう。ペット可の賃貸住宅は増えていますが、家賃や敷金は総じて高めになります。これが第1ハードル。ペット不可なら、飼うにはまず引越しをする必要があります。「引越しは面倒くさいからこっそり飼い始めよう……」などど、間違っても考えないでくださいね。後々、大トラブルになる可能性が高いので、大家さんや管理会社に内緒で飼い始めるのはご法度です。

さて、環境は整ったとして、いざ猫を飼うことになったとしましょう。その際、ペットショップで買うか、動物保護の施設や里親制度を利用するかで費用は大きく違います。ペットショップで子猫を買うと10万円〜20万円くらいかかります。

保護団体などから譲り受ける場合、かかるお金は病院の費用などの実費、数万円ですむのが普通ですが、「一人暮らしの飼い主はNG」など、厳しい条件があることも。また、「慣らし期間」があって、飼い主として適切ではないと判断されたら、譲ってもらえないこともあります。「仔猫を飼いたい」という情報を発信していたら、仔猫を拾った人から譲ってもらったり、打診していた動物病院からもらえたりすることもあります。その際はただですが、すぐに動物病院に連れて行って、健康診断や必要な治療を受けさせてください。やっぱり数万円かかります。

いざ猫を飼い始めたら、費用はいくら?

さあ、猫が家にやってきたとしましょう。ここから、やることや準備することは山ほどあります(笑)。まずは、ミルクやエサ、トイレ、砂、爪切りなど日常で必要な最低限のものを準備します。この初期費用は1万円くらいから。

そして、1歳になる前に避妊・去勢手術をします。この費用に1〜3万円程度。オスは安く、メスは高い。手術をしないと、1年経たないうちに4−6匹の仔猫を産む、産ませることになる可能性があるから絶対必要です。
それから、毎年のワクチン接種。犬の狂犬病ワクチンのように義務付けられていませんが、伝染病にならないためには必須。年に1万円ほどみておきましょう。

毎月のエサ代やトイレ用の砂などの日用品は、一匹あたり毎月約4〜6千円程度かかります。寒い時、暑い時には留守中もエアコンをつけておくなどペット用の冷暖房費がかさむケースも。その他、病気やケガをしたら、動物病院での治療費がかかります。最近はペットも長生きになり、高齢ペットに高額の医療費がかかる例が珍しくありません。月に数万円〜10万円以上のケースもよく聞きます。こんな場合に備えるペット保険があります。毎月保険料を払っていると、動物病院で治療を受けた時、治療費の一定割合をカバーしてくれる仕組みです。ペットが高齢になると加入できなくなるので、自宅に迎えたらすぐに契約することをお勧めします。人間の保険と同じで、年齢が上がると、毎月の保険料は高くなります。血統種類によっても多少の差がありますが、毎月2〜3千円からが相場です。

以上は、猫1匹を飼うのにかかる費用。これに加え、おもちゃやキャットタワーを買う人もいますし、出張や旅行で家を空けたりするときには、ペットシッターやペットホテル代がかかります。猫はホテルに預けられるより、自宅にペットシッターが来てくれる方がストレスは少ないよう。ペットシッター代は、猫一匹で1回あたり4000円前後が相場です。

これらすべてを合算すると、1匹あたり年10〜15万円かかると思っておいた方がいいでしょう。

それからもうひとつ、留守がちなシングルや共働き夫婦では2匹飼いがおすすめです。帰宅が遅くなったり、終日外出をしたりしても、猫同士で遊ぶことができるのでストレスが少なく、結果的に病気にかかりにくくなります。仔猫が2匹じゃれあったり、寄り添って眠っていたりするのを見るのも、至福です。飼い主の罪悪感も軽くなります。費用は2倍かかるのですが、もし可能なら、「複数飼い」を提案します。

ペットを飼うことのメリットとデメリットとは?

予想以上にかかる費用に、ちょっとめげちゃいました? でも、金額以上のメリットはあると思っています。まずは、癒し。先ほども申し上げましたが、猫が家にいるだけで、イライラが不思議とやわらぎ幸せな気持ちになれます。これは最大の利点。

飼い始めると、かわいい猫に早く会いたくて、仕事後はすぐに帰宅するようになったという声も聞きます。その結果、飲み会の回数を減らすようになったり、コンビニに立ち寄る時間が減ったりと、無駄使いがなくなった人もいます。

最近では、飼い猫のかわいい写真や動画をツイッターやインスタグラムなどのSNSにあげる人も多いですよね。猫は散歩が必要ないので、犬の飼い主同士が公園でおしゃべりをするといったようなリアルな交流は少ないかもしれません。でも、やっぱり猫好きの会話は弾みます。「猫友」ができるかもしれないし、ネット上のコミュニティに参加して仲間が増えたり、交流の輪が広がったりするでしょう。

一方、ペットを飼うことのデメリットもあります。第一に、お金がかかることは話しました。第二に、猫といっしょに過ごす時間を大切にし過ぎると、外出の機会が減るリスクがあります。特に、シングルの女性で、パートナーを探している人は要注意!今はアプリで恋人を探せますが、勝負はその後のデート。外に出て出会いの機会を増やすことも大切です。第三に、猫アレルギー。飼い主本人がアレルギーになる可能性がありますし、猫アレルギーの友人知人を家に招待するのは難しくなります。私も、家に招いた友人のクシャミが止まらなくなって退散してしまったり、海外からの友人を家に泊められなかったりという残念な経験があります。

以前、2組の30代の新婚夫婦から「ペットを飼いたい」と相談を受けたことがあります。私は、「もし子どもを考えているなら、出産してから飼った方がいい」とアドバイスしました。生まれてくる赤ちゃんが、もしかしたら猫アレルギーかもしれませんし、育児が想像以上に大変で、猫のお世話をできなくなるかもしれません。猫ではありませんが、義理の妹は、結婚してすぐビーグル犬を飼い始めました。家族同様に可愛がっていたのですが、出産後は育児で手一杯になり、泣く泣く彼を手放しました。幸い、もらい手はすぐに見つかったのですが、妹には苦い悲しい経験になりました。猫も同じことになることがあります。

ペットを”飼ったつもり”貯金もオススメ

猫も犬も若いときは元気ですが、年を取れば病気がちになり要介護になることもあります。20歳を越え長生きする猫も珍しくありません。あなたが今30歳で0歳の猫を迎えたら50歳まで一緒に暮らすことに。その間に、ライフステージや仕事が変わることもあるでしょう。

猫が欲しいと思った時、すぐに実行に移すのではなく、ちょっとした準備期間をもつことをお勧めします。向こう1年間もしくは半年間、「猫のいる暮らし」を仮定し、初期費用から毎月かかる費用など、猫専用の口座を作って「猫買ったつもり貯金」をしてみるのです。出張、帰省、国内旅行、海外旅行などのときのペットシッター費用もお忘れなく。年に1度は病気になる想定で。これをやると、飼い始めた時に「こんなにお金がかかるなんて想像してなかった!」と悲鳴をあげずにすむはずです。

猫に限らず、生き物の世話することは手間も「かかる」、お金も「かかる」ことです。でもちょっと言い方を変えて、手間を「かける」、お金を「かける」と考えてみると、なんだかポジティブになりませんか? 心と経済にゆとりがないと、手間もお金をかけられません。「かける」ことを楽しむのって実は贅沢。
猫と暮らせる家に住む。猫と暮らせるように収入を上げる。猫の好きなパートナーを見つけて結婚する。彼と、猫2匹子どもふたりの家庭をつくる。猫と海外旅行をする。こんな夢を実現するライフプラン、マネープランもありです。夢を膨らませましょう。

いま、働く女子がやっておくべきお金のこと

著者:中村芳子

出版社:青春出版社

ファイナンシャルプランナー。東京・下北沢のオフィスで多くの人のお金の相談にのり、人生の悩み解決のお手伝いをしている。早稲田大学商学部卒。メーカー勤務を経て1985年に独立系ファイナンシャルプランニング会社に転職、女性FP第1号に。91年に友人と「アルファアンドアソシエイツ」を設立。『20代のいま、やっておくべきお金のこと』(ダイヤモンド社)『いま、働く女子がやっておくべきお金のこと』(青春出版社)など著書多数。
同志社大学文学部英文学科卒業。自動車メーカで生産管理、アパレルメーカーで店舗マネジメントを経験後、2015年にライターに転身。現在、週刊誌やウェブメディアなどで取材・執筆中。
働く女子のお金のトリセツ