「鏡の中の自分がイケていて、いい写真が1枚撮れたら満足」プラスサイズモデル藤井美穂さんが考える“自分の価値”(前編)

日焼けした肌にワンレングスの黒いロングヘアー。米国在住の女優、藤井美穂さんは、身長163センチ、体重80キロの体型を生かした「プラスサイズモデル」としても活動中です。インスタグラムのフォロワー数は7.1万人のインフルエンサーでもある藤井さん。ファッションとメイクのこだわりから見えてきたのは、自分自身の価値を知っている一人の女性の「強さ」でした。
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メイクをするのは着る服を決めた後

――藤井さんのインスタグラムを見ると、いつもメイクが決まっていると感じます。こだわりのポイントはありますか?

藤井美穂さん(以下、藤井): 一番気をつけていることは、「メイクと服装の系統があっているか」ということです。インフルエンサーの仕事を始めてから、服を提供してもらう機会が増えました。その服を着て撮った写真をインスタグラムにアップするのですが、ある日、顔と服のテイストがあってないことに気付いたんです。

これまでは、自分の好みにあった服ばかりを着ていたので、毎日同じようなメイクでも違和感はありませんでした。それが、服装のバリエーションが増えたことで、従来のメイク一点張りだと、顔まわりだけ浮いてしまうことがわかりました。

それからは、朝起きたらまずは着る服を決める。その後、服に合ったメイクをする、という順番に変えました。

――なるほど。日本では、持ち前の肌や目の色などから似合うメイクを見つける「パーソナルカラー診断」をする人も増えてきています。藤井さんはされたことはありますか?

藤井: まだないですね。これまで使ったことのない色のアイシャドウやリップなどを買ってみても、「似合わない……」と思うこともあります。でも、トライアンドエラーを繰り返していくと、徐々に自分に合う色と合わない色がわかっていきます。

もし合わないと思っても、そこで諦めずに、重ね付けをしたら意外と使えることもあります。失敗を恐れず、新しいメイクを試してみるのはアリだと思います。

毎日テーマを決めて、服装とメイクを楽しむ

――メイクグッズはご自宅にどれくらい持っているのですか?

藤井: 私は靴を買った時についてくる「箱」をメイク入れにしているのですが、今は3箱分ですね。靴箱は丈夫なので、メイク入れに最適です(笑)。

毎朝、洋服とメイクを選ぶ前に「なりたい人のイメージ像」を頭の中で描いています。例えば、今日はクラシカルな感じにしようと思ったら、「マリリン・モンロー」をイメージして、眉の形など、メイクを“寄せて”いきます。

正直、誰も「今日はマリリン・モンロー風だね」とは言ってくれないのですが、自分としては、モンローになりきっています。

――そうなのですね!今日のメイクもテーマがあるのですか?

藤井: はい、今日は2000年代のメイクをしてきました。当時人気だった歌手のブリトニー・スピアーズやデスティニーチャイルドのビヨンセをイメージしています。特徴的だった細めの眉を意識して描いてみました。

毎日女優のようにテーマを決めたり、コスプレをしたりする理由は、「なりきること」が好きだからなんですね。

服装とメイクのテーマは、その日行く場所によって決めています。例えば、クラブに行く日はカジュアルで可愛いテイストに、少しお洒落なレストランでディナーをする日はクラッシー(上品)で大人っぽい雰囲気に、という具合です。

鏡の中の自分がイケていたら満足

――メイクと同じように、洋服もたくさん持っているのですか?

藤井: 洋服も好きで、たくさん持っています。持っている服全部が好きなので、なかなか捨てることができず、クローゼットがすごいことになっているのですが(笑)。クリスマスのサンタ服など、年に1度しか着ない服も大事に取ってあります。

あと、私はディズニーが大好きなので、ディズニーランドに行く際は服装とメイクにも命をかけて臨みます!誰も私の服装に期待などしていないのですが、ただ園内でミッキーや自分の服のテーマにしたキャラクターに「かわいい」って言って欲しい!それだけなんです。要は自己満足なのですが、趣味ってそういうものですよね。

自分と、周りの友人や家族が「いいね!」って言ってくれるだけでうれしいです。鏡の中の自分がイケていて、いい写真が1枚撮れたら、それで満足です。

――インスタグラムに、ゲーム『ストリートファイター』の春麗(チュンリー)や、映画『キル・ビル』の主人公など、“強い女性”の衣装を着た写真を投稿していますね。

藤井: 強い女性のコスプレが似合うと思うし、私も憧れるので、強い女性キャラになりたいんです。かわいらしい服装も似合うと思うのですが、やっぱり私が1番イカしてると思うのはカッコいいオンナですね!何よりも、この「似合う×好き」は自分が1番輝ける黄金比みたいなものだと思います。

――日々テーマを決めたり、コスプレをされたり、「なりきること」は俳優の仕事にもつながりそうですね。

藤井: そうですね。俳優の仕事において、演じる役に憑依する瞬間があります。練習でも本番でも、完全にその役になり切る経験が一度でもあったらで、それは宝物になります。

最近、「いじめっ子」を演じる機会がありました。これまで、いじめられた経験はあっても、先頭に立って誰かをいじめたことはありません。想像しても、「いじめる動機」というものがわからなかったんです。

「いじめ役だから悪役として演じよう」と思ったのですが、芝居の先生たちに散々言われてきた、「自分の役をジャッジするな」という言葉を思い出しました。

他人には他人の正義があることを学ぶ

――「自分の役をジャッジするな」、ですか。

藤井: 最初はその意味がわかりませんでした。このお仕事で考える機会をもらえるまで、その言葉は何度も聞きながらも、本来の意味で捉えることができていなかったことに気づきました。
人はみんな、自分の信じることを正義と思って生きています。
私は俳優として、いじめ役だから悪役だと決めつけず、「その人がいじめている理由」を知る必要があると思いました。

その背景を知ることで、自分の役をジャッジせず、彼女の正義を信じることができます。それがなによりも役として生きるということなのかもしれないと思いました。

私は学生の頃にいじめを経験して、その渦中にいる時は自分の苦しみしか知らなかった。大人になった今、いじめていた相手のことまで想像力を膨らませると、「もしかしたら彼女らにも正義はあったのかもしれない」とも思えます。
もちろん、いじめる人たちにいじめる理由は与えられないです。いじめられる方に原因なんて絶対にありません。
しかし当時彼女たちも間違った情熱や正義に突き動かされていたのかもしれない、と、過去にタイムスリップして考えてみたりもしました。

――そうだったのですね。日本では最近、SNSで誹謗中傷を受けた若い女性が自殺をするという悲しい事件がおきました。相手を攻撃する人は自分のことを「正義」と思っている場合があります。藤井さんはSNSで傷つくことを言われた場合、どう受け止めていますか?

藤井: 私は人生の割に早い時期に人生どん底と思う辛い経験をしました。「辛さ」は数字では表せないですし、比較するものでもないことが前提なのですが、
私にとってはSNSで受けた誹謗中傷は、その辛さに比べたらたいしたことないと思えるんです。

もちろん、ひどい言葉を浴びせられ、自分のことを労う必要があるときもあります。
私には素晴らしい家族と友人がいます。みんな、私の価値を知っていて、評価をしてくれます。彼らに話して助けてもらえることもあります。
たとえ傷つくことを言われても、それによって私の価値は下がらないので怖くないんです。

何より、自分自身が自分の価値を理解しています。自分に自信があるからこそ、強くいられるのだと思います。

>>後半では、自己肯定感が低かった藤井さんがどのようにして自信を高めたかについてうかがいます。

●藤井美穂さんのプロフィール
三重県出身。女優、コメディアン、プラスサイズモデル。現在は米国ロサンゼルスで、演技と英語の漫談をこなしている。インスタグラムのフォロワー数は7万人。自由な女性の生き方を広める活動をしている。2020年秋に初の書籍を出版予定。

同志社大学文学部英文学科卒業。自動車メーカで生産管理、アパレルメーカーで店舗マネジメントを経験後、2015年にライターに転身。現在、週刊誌やウェブメディアなどで取材・執筆中。