telling,の取材に応じた映画「RED」に出演する夏帆さん

夏帆さん「知らないうちに自分の気持ちに鈍感にならないように、素直でいたい」

2月21日から全国公開となる映画『Red』。愛する夫と娘と不自由なく暮らす主人公の村主塔子は、ある日、過去に好きだった鞍田秋彦と再会することで、徐々に自分の中に抑圧していた本心に気づいていく――。塔子役を演じるのは、映画やドラマで活躍中の夏帆さん。未婚で子育て経験がない中、塔子の葛藤を理解できるのか不安だったと振り返ります。来年30歳を迎える夏帆さんに、仕事の向き合い方、20代ラストの心境について聞きました。

共演者と積極的にコミュニケーションを取る

――夏帆さんが演じる塔子という女性は、結婚して、子どもがいる設定でした。自分とは環境が違う中で、工夫されたことはありますか

夏帆さん(以下、夏帆): 塔子という女性は、本来は自分を持っているのに、いい妻、いい母親でいないといけないという思いに抑圧されて生きています。そんな彼女の葛藤を、家庭を持ったことも子育ての経験もない私が理解し、お芝居として表現できるのだろうか、という不安が最初はありました。

「家庭がある」という感覚を少しでもつかむため、夫役の間宮祥太朗くん、娘役の小吹奈合緒ちゃんの2人と、なるべくコミュニケーションを密に取るようにしていました。撮影の合間に他愛もない話をして触れ合う時間を常に作るようにしましたし、撮影に入る2週間ほど前には3人で遊園地に行って、本物の家族のように過ごしました。

それらがお芝居にどう反映されたのかは分からないですが、コミュニケーションを積極的に取るのと取らないのとでは、演技全般に違いが出てくると思ったんです。

telling,のインタビュー取材に応じる夏帆さん

もし、以前好きだった人と再会したら?

――鞍田役の妻夫木聡さんとのラブシーンもありますが、どのような気持ちで挑まれましたか?

夏帆: とても難しいシーンでした。台本のト書きだけだと短いのですが、塔子の内面では様々な感情が渦巻いています。それをどう繊細に表現していくのかを、監督の三島有紀子さんと密に相談しながら作っていきました。

妻夫木さんとは今回が初共演だったので、撮影前にお会いできたらということになって、キッチンスタジオを借りて2人で料理をして食事をする時間を作りました。これは妻夫木さんから提案していただきました。

――映画『Red』では、過去に好きだった人と再会することでストーリーが展開していきます。もし、夏帆さんの前に以前好きだった人が現れたとき、どうなると想像しますか?

夏帆: どうなるんでしょうね。その人のことを好きだった時と今では自分の気持ちや周囲の環境が変わっているので、その時にならないとわからないですね(笑)。相手がどう変わっているかにもよりますし。

もしかしたら、以前とは違った印象を受けて心がまったく動かないかもしれませんし、前と同じく「やっぱりこの人しかいない」と思うかもしれません。それはその時になってみないとわからないでしょうね。

今回、塔子にとって、鞍田という人は本当に忘れられない人で、おそらく自分の人生を変えた人だったのだと思います。

カメラに強い視線を送る夏帆さん

「自分の気持ちに鈍感にならないように気をつけたい」

――映画では、物語が進むにつれて主人公の塔子が抑制していた自分の気持ちに気づき、開放されていく様子が描かれていますね。夏帆さん自身、自分に正直に生きることについて、大切にされていることがあったら教えてください。

夏帆: 大切にしていること……うーん、何でしょうね。たとえば何かを選択する際、自分の思いだけで物事を決められないこともありますよね。自分の選択が周りにどのような結果をもたらすかということを考えはしますが、そんな中でも、なるべく自分の気持ちに素直でいたいという思いはあります。

本心を抑えこむことが当たり前だと思ってしまうと、鞍田と出会う前までの塔子のように自分の気持ちに鈍くなってしまうと思います。知らないうちに自分の気持ちに鈍感にならないように、気をつけたいと思っています。

――30歳を前に、結婚や仕事のことなどで迷いや焦りを抱える女性は多く、telling,では以前「29歳問題」という特集を組んだことがあります。夏帆さんは現在28歳ですが、30歳に向けてしておきたいことなどはありますか

夏帆: 私の場合、20代ラストだからとか、30代になるからあれをしなくちゃとか、特に考えていないです。年齢について意識することがなくなってきているのかもしれません。

30代になるということで、周りからの見られ方は確実に変わっていきますし、今まで「若いから」と許されていたことが、そうでなくなるかもしれない。それでも、私自身は「29歳だから」というよりは、今自分がやりたいことや、どういうことに興味あるのか、自分に足りないものは何か、という基準で物事を選択していきたいと思っています。

そんなことを言っても、来年になってみたら急に焦り出すかもしれないですが(笑)。

カメラを見つめる夏帆さん

結婚したいと思ったら、できるように動く

――将来、結婚や出産をするかどうかについて考えていることはありますか

夏帆: 自分も家庭を持ってみたい、という願望はありますが、「20代のうちに結婚しなきゃ」みたいな考えはないですね。こればっかりは自分ひとりで実現できることではないですから。

ただ、出来ることならば自分自身のタイミングも大切にしたいと思います。物事には流れに身を任せたほうがうまくいく場合もありますが、自分から動かないとどうにもならないこともたくさんあると思います。きっかけを作るのは、やっぱり自分だと思いますし、結婚したいと思った時には、そうできるように自分から動いていきたいと思います。

笑顔を見せる夏帆さん

ヘアメイク:石川奈緒記、スタイリスト:清水奈緒美

●夏帆さんのプロフィール
1991年生まれ。東京都出身。2007年に『天然コケッコー』で映画初出演し、多数の新人賞を受賞。近年の主な出演作に『海街diary』、『ピンクとグレー』、『きばいやんせ!私』、『ブルーアワーにぶっ飛ばす』など多数。公開待機作に『架空OL日記』、『喜劇 愛妻物語』などがある。

ライター。東京都出身の30代。好きなものは、花とブロッコリー
フォトグラファー。北海道中標津出身。自身の作品を制作しながら映画スチール、雑誌、書籍、ブランドルックブック、オウンドメディア、広告など幅広く活動中。