「何も成し遂げられていない」気がする39歳・ティナを友情が救う! 「きらめく帝国NY編」
勉強も仕事も頑張ってきたし、周りにも「すごいね」と言われる。でも、私はいつまで経っても私のことを認められない――。
そんな気持ちになったとき、観てほしい番組がある。それは「きらめく帝国~超リッチなアジア系セレブたち~ニューヨーク編」。その名の通り、アジア系アメリカ人セレブたちのリッチな日常や人間関係のゴタゴタを追ったリアリティー・ショーだ。「そんなキラキラした人たちの話なんか聞きたくない」と思わないで! 満たされて見える彼らにも孤独やトラウマ、コンプレックスがあるのです。
インフルエンサーの光と影
今回スポットを当てるのは、香港出身のティナ・レオン、もうすぐ40歳。スレイジアン(Slay=成功する+Asian)と称され、シャネルやプラダなど数々のハイブランドのショーに招待されるファッション・インフルエンサー。
いつもハイセンスな装いで華やかな輪の中心にいて、まさに「成功者」といった感じ。それでいて、LAからニューヨークへ引っ越してきたドロシー(超セレブ)を周りに溶け込ませようとお世話したり、ドロシーとデボラ(これまた超セレブ)のケンカの仲裁をしたりと心優しい。
外身も中身も素敵なのに、ティナは自分に自信が持てない。レッドカーペットで観衆から「ティナ!」と呼ばれても、別のティナじゃないかと一瞬疑ってしまう。もう10年以上も不眠症を抱えている。
頼れる家族がいない寄る辺なさ
その原因は、家族との関係。番組の前半では、父親がプライベートジェットを持つほどリッチだったにも関わらず、ある日事業に失敗し、ティナは20代前半で自立を迫られたことが語られる。
なんの後ろ盾もなくアメリカでインフルエンサーに昇りつめるまでに、どれほどの努力があったのか……。それでも彼女はインフルエンサー業に空虚さを感じ、自分の商品を作るクリエイティブディレクターを目指し、必死で顔を売ろうとする。
そんなとき、数年がかりでやっと最前列の席に座れるようになったシャネルのショーに遅刻して――。
クィアでファッション誌の編集者のブレイクに打ち明ける。自分は恵まれていると思うから「文句を言うべきじゃないけど、すごく疲れている」「(香港の)姉妹たちにも何年も会っていない」「夜中に悪夢を見て目が覚める。ホームレスになるかもって」
失敗した時に避難できる家が彼女にはない。そんなギリギリの彼女にブレイクは「裸足でセントラルパークへ行こうよ」と言い、彼女も「それは効くって聞いたわ」と笑う。
ティナのように海外で働いていなくても、家族に頼れなかったり、シングルだったり、急に心細くなる夜は誰しもある。そんなとき、みんなに「いいね」がもらえるインフルエンサーを妬むことも。それがまさか、彼女たちにも同じ孤独があったとは……。
大切なのは「いいね」の数じゃない
誰かが落ち込んだときは、さりげなくドッグカフェや旅行、ダンスに連れ出すのが「きらめく帝国」メンバーのやり方。なかでもティナを一番心配し、ティナに一番心配されたのがドロシーだ。
台湾系のドロシー・ワンは不動産王の父を持つお嬢様でトラブルメーカー。ティナがニューヨークの友達作りにと呼んだデボラのギャラリー・パーティで大遅刻をし、その上、食べ物がないことに怒り、Instagramで「どういうこと?」と挑発して大喧嘩に発展。そのあとも、同じ台湾系のリチャードとけんかし、リチャードの彼女・ヴィカに彼の悪口を言い……とやりたい放題。
わー、この人苦手だわ……と思っていたら、後半でぐっと印象が変わった。それは、ティナを元気づけようと女子+ブレイクで訪れたバハマでのこと。
この旅行のために〇〇のショーと△△のショーを見送った、と話すティナに、ドロシーは「仕事が休みになると別の仕事や用事を入れる。忙しくすることで悩みに対処しようとしているみたい」と心配。そして、「もうすぐ40歳を迎える心境はどう?」と彼女に尋ねる。するとティナは、「年を取るのはべつにいい。気持ちは若いからね。でも私は何を成し遂げたのかな。目に見える功績がない」と涙するのだ。
ドロシーはもらい泣きをして、「私たちがこの世を去ったあと、〈ティナは567のキャンペーンと757のショーに参加した〉と覚えてる人はいない。あなたがくれた温かさや愛が心に残るはず。大切なのはそっちよ」と優しく諭す。そして、「アジア人は自分に厳しくするように育てられる。自分を褒めちゃいけないのよ。自分も厳しいうえに両親もすごく厳しい。でも花が咲くには愛情と水やりが必要よ。でしょ?」と続けるのだ。
ティナは「そうね」と深くうなずき、これからは自分にネガティヴな感情を持つのをやめると誓う。
ドロシーは単なるわがままお嬢様ではなかった。お金目当てで近づいてくる人が多くて警戒心が強いけれど、一度心を開いたら、自分がこれまで受けた愛をそのまま友達に注げる人だったのだ。そして、ドロシーの優しさを引き出せたのは、いつも掛け値なしの友情で親切にしてくれたティナだったからこそ。
友だちって素敵だな、とあらためて思った。
前世占いで明かされた母からの虐待
ドロシーの友情に勇気をもらったティナは、過去のトラウマと向き合う覚悟を持って、占い師に前世を見てもらう。彼女は母親との確執を指摘され、過去に母から受けた虐待を明かす。占い師から「愛情を受けずに育ったら自分の愛し方がわからない。辛い過去のせいで自分がこうなったのだと認め、それを癒やすことが必要」と言われる。
そして、妹のカトリーナがティナに会いに来る。「毎年ホリデーカードに書いてるけど、お姉ちゃんは(母に虐待されていた)私を助けようとドアを蹴って穴を開けてたよね。すごく助けられた」と話す。そこでティナは初めて自分を誇りに思うのだ。「大事なのは仕事じゃない」「私は姉妹たちを守ってきた」
そしてドロシーはそんなティナのために二人だけの誕生日会を開くのだった。
過去に家族から愛を受けられなかったとしても、今いる友達に愛してもらい、それを自信に変えることができる。そのことをティナとドロシーが証明してくれた。
もし、「でも、私にはドロシーみたいな友達はいない」と思ったら、まずはティナのように周りに真心を持って接するところから始めるのはどうだろう。あなたが成し遂げることよりも、あなたの優しさや温かさを褒めたたえ、同じものを返してくれる人は、きっと思うよりたくさんいる。
■『きらめく帝国~超リッチなアジア系セレブたち~ニューヨーク編』
アジア系アメリカ人セレブたちの日常と人間関係に迫るリアリティー・ショー。今回取り上げたエピソード以外にも、仕事で成功した妻に自分の価値も認めさせたい夫の話や、彼がけんかの果てに彼女に「バカ」と言ってしまい、女子たち全員からブーイングを浴びる話など共感できるシーンがいっぱい! ニューヨーク編はじつはスピンオフで、オリジナル版は「きらめく帝国~超リッチなアジア系セレブたち」。こちらもケンカあり、嫁の苦悩あり、産みの母探しありのドラマティックな展開でおすすめ。