【高尾美穂医師に聞く#13】婚活中です。ピンとくる出会いがなくて悩んでいます……
Q. 婚活中ですが、なかなかピンとくる出会いがなく悩んでいます。どんな人を選べばよいのかもわからなくなってきました。先生が考える「良きパートナー」を教えてください。(30代、女性)
高尾美穂医師(以下、高尾): コロナ禍を通じて、飲み会や友人・知人の紹介、同窓会などで出会う機会が以前より減ったという方も多いかもしれませんね。そうすると積極的にきっかけをつくらないと、職場で出会うか、もともと知っている人しかいなくなってしまう。今は、出会いたいと思ったら、アプリでも相談所でもなんでも行動を起こさないと、出会いが降って湧いてくることはなかなかないのかもしれません。
最近は、私の周りでもアプリで出会って結婚するという話も聞きます。相談者さんもきっと行動を起こしていると思うけど、そのなかでピンとくる人がいないというお悩みですよね。それなら、もしかしたら知らない間に相手に期待することが多くなっていたり、ハードルを上げすぎていたりしていないかを一度考えてみてもいいかもしれません。
年齢、収入、職業、出身地、顔、体型、身長……いろいろ条件があると思いますが、ご自身が本当に譲れないと思うものは何か、最優先にしたいことはどれか、優先順位を考えることが大切ではないでしょうか。婚活と言っているので、単なるパートナー探しではないわけですよね。将来的にどこで暮らしたいとか、子どもについてはどうしたいのかといったことも含めて、自分の本当の希望は知っておいた方がいいと思います。その上で、できれば表面的なものだけですぐ相手を判断せず、もうちょっとゆったりした気持ちで接していくといいのではないでしょうか。
──結婚における優先順位となると、なかなか絞るのが難しそうです……。
高尾: 私はパートナーシップにおいては、「自分らしくいられるかどうか」が大切ではないかと思っています。相手と一緒にいるときはもちろん、それぞれの働き方やプライベートの時間の使い方まで、自分らしくいられるかどうか。
結婚となると相手の家族や親戚など関係性は広がります。パートナーの前では自分らしくいられたとしても、その周辺では自分らしくいられない可能性もある。そうなったときに、せめて一番近くにいる人の前では、自分らしく過ごせる、と思えていることが大事ではないでしょうか。
──先生は、夫婦になることにはどのような意味があると思いますか。
高尾: 必ずしも夫婦でなくてもいいと思いますが、自分が何かやっていきたいことがあるとして、それをアシストしてくれるような誰かがいると物事が進みやすい、というのはありますよね。なんとなく決断しないままにしていることに対して、背中を押してくれる存在というか。
背中を押す役割って、その道の専門家である必要はなくて、むしろ仕事もプライベートもある程度わかってくれている人からの「いいんじゃない?」というひと言だったりする。自分の背景をある程度知っている人からの後押しは、力強いわけです。それがパートナーシップの一番大きいところなのではないかと私は思っています。
私も夫に理解があって、夫といるときはすごく自分らしくいられました。もうかなり前の話なので忘れたところもあるけれど、それが結婚の決め手になったと思います。時代的に、社会的信用のためにという気持ちもあったのかもしれません。
月日や年齢を重ねればお互いの状況に変化が生じることもある。やっぱり「一生隣にいてくれたらうれしい人」と結婚を、と考える人が多いのではないかと思うけど、状況が変わることも想定して、ということになりますよね。
──出産のリミットを考えたり、老後がなんとなく不安だったりして結婚願望が高まるという声もあります。
高尾: 老後が不安だから保険のために結婚するというのは、なんか違うのかなという気がしますよね。結婚したら老後が安心なわけでもないし、老後までは意外に長い時間がありますから。
一方で、出産について女性が焦るというのはよくわかります。出産のリミットはどうしても逆らえないところなので。同じように子どもが欲しいという意向の男性と出会って、妊娠・出産までたどり着くには、それなりに早くから取り組んでいないと、間に合わないということになるかもしれない。だから、子どもを産むことを絶対に叶えたいと思ったら、ある程度そこにフォーカスするような段取りは必要かもしれません。例えば「これから1年半の間に子どもが欲しい」という希望があるならば、他のことをすべて差し置く勢いで相手を探す、というのもひとつの手ですよね。
これまでの生活で出会っていないなら、「今までの行動範囲内で出会えていない」ということに気がついたほうがいい。つまり、行動パターンを変えることも必要ではないかと思います。ジムや習い事をしていたらその場所を変えてみたり、いつも入るカフェや通勤ルートを変えたりして、これまでの行動範囲の外に出ていくことでしょうか。できることにはなんでも挑戦して、週に3回くらいは誰かと会ってみる。忙しく働いていると、あっという間に1年経ってしまいますからね。意識的に何かを変えていくことは大切だと思います。
そうしながらも、婚活ばかりに必死にならない心理的な余白も必要かもしれません。やっぱり人は、「人生が楽しそうな人」と一緒にいたいと思うもの。「やりたいことのひとつが婚活」くらいの立ち位置にして、積極的に行動しながらも俯瞰的に見つめられる目があるといいのではないでしょうか。
著者:高尾美穂
発行:朝日新聞出版
価格:1760円(税込)
高尾美穂さん初の「性教育本」。母と娘が性のことや心身の悩みについて話ができるように、知識から話し方までフルサポート。女性が人生の中で経験する心身の揺らぎについて俯瞰して知ることができるので、母に限らず、パートナーや娘、職場の同僚への理解のために、男性にも手に取ってほしい一冊です。