地方へ結婚移住した東京女子のリアル

生涯未婚率が年々上昇し、婚活に悩む女性たちが増えています。出会いの多そうな東京でも独身女性は増加しており、縁あって結婚を機に地方へ移住するケースも耳にします。今回はそんな“東京女子”が地方で直面したリアルについて聞いてみました。
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出会いも多く、独身者人口も多い東京。
にも関わらず、生涯未婚率の高さは都道府県別で日本一となっています。

概して都市部には独身女性が流入しやすい一方、地方では男余りの現状が。
「嫁に来てくれ」と言わんばかりに、町をあげて婚活イベントなどに力を入れ、地元の独身男性の結婚相手を求めている状況です。

確かに、地方では結婚するカップルが増えて出産すれば、その地域の人口増に直結します。現に、移住新婚世帯に補助金などの手厚い支援を行なっている地方自治体も多く存在しています。

ならば、「東京で婚活しているけれど、なかなか結婚できない」ともがいている婚活女性は、一度地方への移住結婚を視野に入れてみると、チャンスが広がるかもしれません。

そこで今回は、地方に住む男性との結婚を機に移住した、東京生まれ東京育ちの女性たちに取材をしました。地方に移住しての結婚生活はいかなるものなのか? そのリアルに迫ります。

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カフェも働き口も、不妊治療クリニックもない……

東京23区内で生まれ育ち、服飾系専門学校を卒業後はアパレル関係の会社に就職したアキコさん(37歳)。長く付き合った彼氏も2人いましたが結婚には至らず、職場の女性たちも次々と結婚していく中で、30歳を過ぎてからは日に日に結婚に焦りを感じていました。「現状の暮らしも充実していたけれど、やっぱり結婚したい気持ちも当然あった」というアキコさん。

職場は女性ばかりで男性との出会いは皆無だったため、合コンや婚活パーティーへ参加したり、マッチングアプリを活用したりと、とにかく打てる手は全て打つ日々。そんな中で出会ったのが、山梨県在住のセイジさん(40歳)。果樹園を営む家系に生まれ、地元の大学を出て近くの企業に勤めており、一度も地元を出たことがない生粋の“山梨生まれ山梨育ち”の男性でした。

恋愛経験は少なく奥手ですが、東京ではなかなか出会えないような純粋で真面目なセイジさんに惹かれ、遠距離恋愛を開始。特急に乗れば2時間ほどで会いに行けるし、お互いに行き来する小旅行気分でのデートも新鮮に感じていました。

そして、交際1年でセイジさんと結婚。アキコさんは35歳にして初めて東京を離れ、思い切って山梨での新婚生活をスタートさせました。

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新居の一戸建ては、東京の感覚からするととても広々としていて贅沢なものでした。将来的には子どもを2人か3人産んで、「ここで幸せな家庭を築くんだ」と目を輝かせていたアキコさん。

ところが、想像もしなかった現実が襲ってきたのです。

引っ越しがひと段落したら、まずはパートに出て働こうと思っていたアキコさん。当初はアパレル販売員やカフェ店員などを想定していましたが、実際にはそういった働き口が東京とは違ってかなり少なく、求人自体があまりありませんでした。

仕事がないならと、35歳という年齢的に妊活もしようと思い、クリニックを探し始めると、なんとそれも全然ないのです。東京では普通にあるものが、山梨にもあるわけではないのだと、住んでみて改めて痛感したのです。

その一方で、セイジさんはとても多忙でした。会社の仕事に加え、家業の果樹園も手伝っていたので、朝早くから出て行ってしまう。土日も果樹園に行くことが多い。決して飲み歩いたり、女性と遊んでいたりするわけではないのですが、セイジさんが家にいる時間はとても短く感じました。

友人もいない、働き口もない、夫もいなければ、不妊治療もできない。
そんなアキコさんは、大きな一軒家で一人ポツンと過ごすことが多くなりました。そして日に日に孤独を感じるようになったのです。

もともと精神的にネガティブ思考に陥りがちな傾向もあったアキコさん。セイジさんの勧めもあり、時々東京に帰ってかつての友人たちと遊ぶこともありましたが、これが実に楽しかったのだそう! 行きたいと思ったらすぐ近くにカフェがあって、買い物も楽しめて、夜の街にはネオンが光っていて……そんな環境がどうしたって“落ち着く”のです。そして山梨に帰る日になると、憂鬱な気持ちが押し寄せてくるのでした。

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そんな生活をしている中で、アキコさんは「セイジさんには悪いけど、やっぱり自分がしっくりくる場所は東京かもしれない……」と思うように。友人や両親も、東京にいるアキコさんの生き生きとした表情を見ていたので、離婚を反対しなかったそうです。

そしてアキコさんは、37歳にして東京に出戻りました。

結婚した当時のことを振り返ると、「セイジさんと結婚しなかったら一生独身かもしれない……という焦りがあった。そっちに気を取られ、“移住”すること自体はそこまで深く考えていなかった」と話します。

「もし今後、再婚のチャンスがなかったとしても“東京で暮らせること自体が幸せ”」。こう、アキコさんは言います。それに気づくことができたのが、山梨への移住結婚だったということでした。

都内大手企業勤めに疲れて……

東京で生まれ育ち、都内の大学へ進学、そして就職先も全て東京都内だったカオリさん(41歳)は、結婚するまでずっと実家暮らしでした。

大学の同級生だったサトシさんと在学中から交際。卒業後、サトシさんは地元の山口県に戻り、公務員になりました。一方、東京都内の誰もが知る大企業に就職したカオリさんは、日々のハードワークに疲れ果てながらも、サトシさんと遠距離恋愛を続けていました。

就職して3年が経ち、「今後もこの会社でもっと頑張るか、どうするか……」と、この先の人生を考えていたころ、サトシさんからプロポーズ。25歳で結婚を決意して“寿退社”を決意しました。当時は正直なところ、仕事が大変過ぎたので「やったー! これで真っ当な理由で会社が辞められる!」と、少し思ったそうです。

しかし、実際に山口県へ引越しをする日には、25年間住んだ実家や家族、地元の友人、そして東京から離れることがとても寂しくなり、泣きながら山口へ向かいました。それでも結婚を機に見知らぬ土地へ移住することが決意できたのは、紛れもなくサトシさんとの絆が深く、心から信頼できるパートナーだったからだと思います。

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そして到着した新天地は、緑豊かで広大な土地でした。
ここで、カオリさんの新婚生活はスタートします。

山口県に住み始めて、まず驚いたのは「車がないとどこにも行けない」ということ。近くにコンビニがない、スタバもない、エステもない、ブランド物も買えない、飲みにも行けない……と、東京にあるものが無い無い尽くしなのです。

しかし、カオリさんはよくよく自分を振り返ってみると、「自分は元々ブランド物に興味がなかったし、SNS映えするようなカフェに行かなくても大丈夫。そして一人の時間が好きで寂しいと感じない」。生粋の東京育ちだけれど、自分は田舎向きなタイプだったのだと自己分析しています。

そして何より、「田舎は時間の流れがゆっくりで、のんびり過ごせるのがいい」のだそう。「今思うと、東京での時間の流れはとても速かったし、人も多くてせわしなかった」。東京の大手企業でハードワークをこなしていたカオリさんだからこそ、心から実感できたことなのでしょう。

カオリさんが住む近隣の風景(山口県内)。大自然が広がっている=本人提供

子育てで思う、メリット・デメリット

現在カオリさんはこの山口県で、中学生と小学生の2人の子育てをしています。地方での子育てには、たくさんのメリットを感じています。山も川も海もある自然いっぱいの中で、虫を捕まえたり花を摘んだり、キャンプをしたりしてたくましく育ってくれている。こういった環境での子育ては東京では到底できなかったと思うそうです。

その一方で感じるデメリットとしては、自分の両親が近くにおらず、最初はママ友もいなかったので、育児面で夫以外になかなか頼れる人がいなかったこと。また子どもが進学する学校の選択肢が少ないことなどが挙げられます。

それでも総じて、山口県で子育てできていることは、とても良かったと感じているそうです。

カオリさんに「いまも東京で暮らしたいと思うことはありますか?」という質問を投げかけてみました。「今のこの4人家族で東京に暮らしたいとは思わない」。それだけ今の暮らしが幸せで、充実していることが伺えます。移住したことに後悔は全くないそうです。

ただ、時々ふと考えることがあるといいます。「25歳の時にサトシさんからのプロポーズを受けずに、そのまま東京に暮らしていたら、どんな人生だったのかな……」

カオリさんが住む近隣の風景(山口県内)。大自然が広がっている=本人提供

それくらい、「結婚を機に移住する」ということは大きな決断であり、その先の人生を大きく左右するターニングポイントと言えるでしょう。

二人の話を伺って考えたのは、移住して結婚するにあたって、一番大切なことは「パートナーへの信頼感」ではないかということです。深い愛がないと、環境の変化に伴う様々な事柄を、一人では乗り越えられないでしょう。

そして、移住先によってもまたその土地ごとに暮らしの雰囲気は違います。
どんなにイメージしても、「住めば都かどうか」は、実際に移住してみないと分からないことも多いと思います。

移住という大きな決断をした先に、その土地の新たな魅力に気付いたり、新しい家族ができたり、考え方が変わったりして、それまで想像もつかなかったような人生が拓けていくことでしょう。

結婚、そして移住という道を選んだ女性たちのエピソード、参考にしてみてください。

(文中の名前はすべて仮名)

子連れで再婚、ステップファミリーを築いた女性たち 幸せのカギはどこに? 38歳女性の「再婚活」実録 壮絶な離婚越え、ある「転換」が人生を変えた
一般社団法人日本合コン協会会長。東京ママパーティー主宰。唎酒師。 数々の合コン・婚活パーティーやママイベントの運営に携わり、恋愛心理やコミュニケーションに精通する恋愛アドバイザーとして活動中。 著書は6冊。一児の母。