【FP fumico】児童手当拡充へ 少子化対策は本当に現役世代を救うか?
時代とともに変わりゆく制度
前回ご説明したのは、健康保険が適用されず高額な出産費用の負担を軽減したり、妊娠・出産により働けない間の生活を保障したりするための、期間を限定した仕組み。
今回ご説明する児童手当は、子育て家庭を経済的に支援するため、15年以上に渡り“薄く長く”支給されます。
制度ができて50年以上と、意外と歴史の長い児童手当。当初は「第3子以降で5歳未満」の場合に支給されるなど要件が厳しかったようですが、徐々に支給対象年齢が引き上げられるなど制度が拡大しました。2010年の民主党政権では「子ども手当」という名前になって所得制限が撤廃されましたが、代わりに、15歳までの子を育てる人の税負担が減る、所得税・住民税における年少扶養控除が廃止に。
その後、12年に自民党政権に戻った際に再び所得制限が設けられ、昨年10月にはさらに支給要件が厳しくなりました。
児童手当に限りませんが、制度は時代に合わせて内容が変更されることも多い。「現状はどのような仕組みになっているか」「この先どのように改正されそうか」、注意しておく必要があります。
申請が遅れた分は受け取れないので注意
児童手当は、お住まいの自治体から支給されるモノ。このため申請先も自治体となり、引っ越した場合は引越先の自治体に改めて申請が必要となります。「どこから支給されているお金か」は普段あまり意識していませんが、知っておくことで申請先や問合せ先がわかります。
申請が遅れた場合、後から支給されるのではなく、遅れた分は受け取れなくなってしまいます。生まれた日や引っ越した日が月末に近い場合、その翌日から15日以内に申請すれば、申請した月の分から受け取れる特例がありますが、特に気を付けておきたいところです。
児童手当の振込は毎月ではなく、6、10、2月の年3回のタイミングであることにも注意しましょう。それぞれの月に、前月までの分が振り込まれますので、使い道について家族で話し合っておくことも大切です。
制度拡充の財源、医療保険料に上乗せも?
昨年、児童手当の支給要件が厳しくなった背景には、待機児童問題があります。厚生労働省が20年に取りまとめた「新子育て安心プラン」において、21年4月~25年3月末の4年間で、約14万人の保育の受け皿を整備し待機児童問題に終止符を打つとされました。このために、所得の高い人の児童手当(特例給付)を廃止して、保育所整備にお金を回そうとしたというわけです。
では、一転して制度を拡充することになると、財源はどこから出てくるのでしょうか?
岸田首相は、国民の実質的な負担を生じさせないよう歳出改革(つまり、国の支出を減らすこと)で財源を準備することを目指し、消費税などの増税はしないと明言しています。
一方で、医療保険料などへの上乗せも検討されています。若い世代の負担が増えれば「今」の暮らしが厳しくなり、「将来」の結婚や出産を考える余裕がなくなってしまうおそれもあります。どの世代にも余裕がない中、どのように負担を分かち合うか、私たち一人ひとりが考える必要があります。
少子化対策、負担が偏れば逆効果?
今回の少子化対策に必要とされる財源は年3兆円台半ば。財源については元々6月までに結論を出すとされていましたが、年末までに先送りされました。家計でいうと「支出が大幅に増えることは決まっているのに、節約して費用を捻出するのか、収入を増やして対応するのか決まっていない」状況。
どんなにいい制度でも財源を準備できなければ続けられませんから、なるべく早く結論を出してもらいたいと感じます。
また、「お金を掛けたのに少子化は止まらなかった」となれば笑い事では済みません。きちんと効果を検証することも重要となります。
厚生労働省によると、22年の日本人の出生数は770,747人で、15年からのわずか7年で2割以上減っています。日本の年金制度が“仕送り方式”(今の現役世代が納めた年金保険料が、今の高齢者の年金として支給される仕組み)であることや、高齢者の医療保険制度を現役世代からの拠出金に頼っている状況からすれば、子どもを持つ・持たないにかかわらず、少子化は日本で暮らす全ての人に影響を及ぼす問題といえます。
これまで負担は現役世代に偏りがちでしたが、その結果として経済的な余裕がなくなり少子化が進んでしまった側面もあります。
今回の少子化対策においても、現役世代に負担が偏る仕組みになってしまわないか、注視しておきましょう。
ボーナスの一部はぜひ自己投資に!
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FP fumicoの“Live colorfully”の次回は、7月28日に公開の予定です。