FP fumicoの“Live colorfully”#28 “扶養”の知識で広がる「選択」
「社会保険」と「税」に切り分ける!
扶養の話になると、○○万円以上、●●万円超など、様々な基準額が出てきて混乱、混同する方がいらっしゃいます。ですので今回は、「社会保険」と「税」に切り分けて、解きほぐして説明していこうと思っています。
また、今回の話は家庭の状況や価値観の違いによって、考え方は様々だと思いますので、その点に留意して読み進めてくださいね。
納税は国民の義務ですので、扶養の対象外となっても、わかりやすいメリットはありません。もちろん納税する人が増え、国や自治体の税収が上がれば、行政サービスはよくなりますので、めぐりめぐって利点はあると言えます。
一方で社会保険については、扶養の対象外になると、「社会保険料を払わないといけないので、損になる」と感じる方が多いのですが、厚生年金を受け取れるようになったり、国保より手厚い給付を受けられたりするといったメリットがあります。
誰がいつ、扶養に入るかわからない!
これからの時代は、性別による固定的な役割分担意識は解消されるでしょうから、誰がいつ、家事や育児をするために扶養に入るかはわかりません。もちろん、ご自身が病気になったり、親を介護する必要が出たりして働けなくなる可能性だってあります。
そんな場合も扶養について知ることで、様々な選択の幅を広げられます。例えば「今からは育児や介護に専念するから、積極的に扶養に入ろう」という前向きな選択もできますし、「扶養の対象外になって、社会保険の給付を増やそう」という道も選べます。家族間で話し合い、家庭としてのライフプランを立てることも当然、できるようになります。
扶養の知識があるということは重要なのです。
最近、増加しているという熟年離婚でも、社会保険の扶養と、それに関連した知識の問題は出てきます。
例えば、会社員の夫の扶養に入っていた妻が離婚すると、夫は基礎年金と厚生年金という“2階建て”の年金を受け取れるにもかかわらず、妻は基礎年金しか受け取れず、途方に暮れる場合もあると聞きます。実は、そうした場合に備えた「年金分割」という制度もあるのですが、あまり知られていません。
情報は“異なる場合がある”ことを念頭に
注意したいのが、社会保険の扶養は100かゼロなのに対して、税金の配偶者特別控除は、徐々に小さくなっていくということです。
つまり、扶養の対象から外れれば、社会保険の負担はゼロから全額(100)になる一方、税金の控除額については所得の額に応じて階段状になっており、段階的に控除額が減っていきます。
扶養という言葉で一括りにされますが、扶養者/被扶養者で、メリットやデメリットもまったく違いますので、こちらも押さえておくようにしてください。
今回は基本的に、給与所得を得ている配偶者を扶養者/被扶養者の“例”としてご説明しています。ですので、リタイアした年金受給中の親を扶養に入れる場合などは、判断基準が変わってくるので注意してください。
これは税金全般に言えるのですが、納税額については「仮定」を置いて、様々な説明がなされています。そのため実際の納税額とは異なることがあります。
この連載も、インフルエンサーのSNSを含むネット上の情報も、“異なる場合がある”ことを念頭に、金額については鵜呑みにして自己判断しない。正確な計算をするためには、然るべき所に相談するようにしてください。
本当に壁? それとも……
日本では現在のところ、同性パートナーや事実婚・内縁関係の場合は、税金面では配偶者控除などの恩恵は受けられない仕組みになっています。
一方で、法律上の夫婦でなくとも遺族年金など、受け取れるモノも一部にはありますが、現在の日本では基本的には扶養の仕組みは「法律婚」が前提。事実婚や同性パートナーには厳しい現状があります。
私も今回、負担が重くなる扶養の基準額について“壁”と表現しました。言葉の響きから、自分の前に立ちふさがったり、超えてはいけなかったりすると感じる方も多いと思います。しかし、実際には状況が変わって、次のステージに進めば「ガチャッ」と自然に開く扉のようなモノ。
環境や価値観の相違によって、考え方は変わりますが、個人的には壁を超えることを過度に恐れなくてもいいと思っています。
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FP fumicoの“Live colorfully”は、第2・第4金曜に公開の予定です。