ノートで学ぶマネーの「常識」

FP fumicoの“Live colorfully”#28 “扶養”の知識で広がる「選択」

「マネー」に関するインスタグラムへの投稿で、20~30代の女性から支持を集めるFP(ファイナンシャルプランナー)のfumicoさん。お金に対する苦手意識を克服する方法や、ちょっとした工夫などをfumicoさんのインスタでお馴染みの手書きのノートでお届けする、28回目です。今回は扶養について。ご自身のライフプランを立てるためにも必要な知識を解説します。
FP fumicoの“Live colorfully”#27 令和に生きる相場格言~日常生活のヒントにも

「社会保険」と「税」に切り分ける!

扶養の話になると、○○万円以上、●●万円超など、様々な基準額が出てきて混乱、混同する方がいらっしゃいます。ですので今回は、「社会保険」と「税」に切り分けて、解きほぐして説明していこうと思っています。
また、今回の話は家庭の状況や価値観の違いによって、考え方は様々だと思いますので、その点に留意して読み進めてくださいね。

納税は国民の義務ですので、扶養の対象外となっても、わかりやすいメリットはありません。もちろん納税する人が増え、国や自治体の税収が上がれば、行政サービスはよくなりますので、めぐりめぐって利点はあると言えます。
一方で社会保険については、扶養の対象外になると、「社会保険料を払わないといけないので、損になる」と感じる方が多いのですが、厚生年金を受け取れるようになったり、国保より手厚い給付を受けられたりするといったメリットがあります。

誰がいつ、扶養に入るかわからない!

これからの時代は、性別による固定的な役割分担意識は解消されるでしょうから、誰がいつ、家事や育児をするために扶養に入るかはわかりません。もちろん、ご自身が病気になったり、親を介護する必要が出たりして働けなくなる可能性だってあります。

そんな場合も扶養について知ることで、様々な選択の幅を広げられます。例えば「今からは育児や介護に専念するから、積極的に扶養に入ろう」という前向きな選択もできますし、「扶養の対象外になって、社会保険の給付を増やそう」という道も選べます。家族間で話し合い、家庭としてのライフプランを立てることも当然、できるようになります。
扶養の知識があるということは重要なのです。

最近、増加しているという熟年離婚でも、社会保険の扶養と、それに関連した知識の問題は出てきます。

例えば、会社員の夫の扶養に入っていた妻が離婚すると、夫は基礎年金と厚生年金という“2階建て”の年金を受け取れるにもかかわらず、妻は基礎年金しか受け取れず、途方に暮れる場合もあると聞きます。実は、そうした場合に備えた「年金分割」という制度もあるのですが、あまり知られていません。

情報は“異なる場合がある”ことを念頭に

注意したいのが、社会保険の扶養は100かゼロなのに対して、税金の配偶者特別控除は、徐々に小さくなっていくということです。
つまり、扶養の対象から外れれば、社会保険の負担はゼロから全額(100)になる一方、税金の控除額については所得の額に応じて階段状になっており、段階的に控除額が減っていきます。

扶養という言葉で一括りにされますが、扶養者/被扶養者で、メリットやデメリットもまったく違いますので、こちらも押さえておくようにしてください。

今回は基本的に、給与所得を得ている配偶者を扶養者/被扶養者の“例”としてご説明しています。ですので、リタイアした年金受給中の親を扶養に入れる場合などは、判断基準が変わってくるので注意してください。
これは税金全般に言えるのですが、納税額については「仮定」を置いて、様々な説明がなされています。そのため実際の納税額とは異なることがあります。
この連載も、インフルエンサーのSNSを含むネット上の情報も、“異なる場合がある”ことを念頭に、金額については鵜呑みにして自己判断しない。正確な計算をするためには、然るべき所に相談するようにしてください。

本当に壁? それとも……

日本では現在のところ、同性パートナーや事実婚・内縁関係の場合は、税金面では配偶者控除などの恩恵は受けられない仕組みになっています。
一方で、法律上の夫婦でなくとも遺族年金など、受け取れるモノも一部にはありますが、現在の日本では基本的には扶養の仕組みは「法律婚」が前提。事実婚や同性パートナーには厳しい現状があります。

私も今回、負担が重くなる扶養の基準額について“壁”と表現しました。言葉の響きから、自分の前に立ちふさがったり、超えてはいけなかったりすると感じる方も多いと思います。しかし、実際には状況が変わって、次のステージに進めば「ガチャッ」と自然に開く扉のようなモノ。
環境や価値観の相違によって、考え方は変わりますが、個人的には壁を超えることを過度に恐れなくてもいいと思っています。

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FP fumicoの“Live colorfully”は、第2・第4金曜に公開の予定です。

FP fumicoの“Live colorfully”#27 令和に生きる相場格言~日常生活のヒントにも
CFPⓇ保有のファイナンシャルプランナー。 大学卒業後、生命保険会社や市役所での勤務を経て、2017年12月より「お金」に関するInstagramへの投稿を始める。社会保険や税金・資産運用といった学ぶ機会がなく、話題にも上りづらいコトを身近に感じてもらえるよう、解説の投稿は手書き。趣味は起床後すぐの15分ヨガと、株式投資。
ハイボールと阪神タイガースを愛するアラフォーおひとりさま。神戸で生まれ育ち、学生時代は高知、千葉、名古屋と国内を転々……。雑誌で週刊朝日とAERA、新聞では文化部と社会部などを経験し、現在telling,編集部。20年以上の1人暮らしを経て、そろそろ限界を感じています。